きのうのNHK杯将棋トーナメント、久保利明九段と金井恒太五段は、ともにサウスポー。こういうときは、盤の左側に駒台を置けばいいのにといつも思う。
(きのうのつづき)
局面――。植山悦行七段の△8六歩に、私は▲9七角と上がる。
「よく分からないけど、よさそうな手ですねえ」
と植山七段。
以下△8七歩成▲7五角(金を取る)△7八と(金を取る)のあと、▲7五の角が5三金取りに当たっているのが自慢だったが、△6四金と強く出られてみると、角を渡せば△8七角以下の詰みがあり、それほどでかしていなかった。
以下▲8七歩△7五金▲同飛△7三歩▲7四歩△6四角の局面で、ちょっと遅い3時休憩となった。
「すぐ終わりますよ」
と植山七段がつぶやいたが、下手がうまくやっているのだろうか。
室内は20人近くの人がいる。人いきれから逃げるべく、表へ出ようとすると、Is氏が来た。Is氏に会うのは久しぶりで、1年ぶりぐらいではないか。
続いてHon氏も来た。私は貧乏性なので、この時間まで遅れたらその日は教室に行かないが、2人は気にしていないようだ。
表で休んでいると、そのHon氏が来た。私が沖縄へ行かなかったテンションの低さを嘆くと、Hon氏も最近は肉体の衰えを感じているとのことで、ふたりで「歳取ったね」を連発した。
そこへ植山七段とW氏も来る。と、その途端に大粒の雨が降りだし、私たちは軒下へ避難した。植山七段、さすがの雨男ぶりである。
その植山七段、私をじっと見るのだが、私は関係ないだろう。
室内に戻ると、Og氏が、
「あれっ? 大沢さん、(そういえば)久しぶりですねえ」
と大声で言う。
シッ!! 確かに私が教室に訪れたのは5月以来で不義理だったが、その事実を誰にも知られず乗り切ろうと思ったのに、Og氏が盛大にバラしやがった。私は小さくなった。
ま、しかし大野教室はこのところ大盛況だから、私の出席率はもはや関係ない。
3時休みも終わり、対局再開。では、指し掛けの局面から終局までの手順を記そう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a7/0994dfdcc53b3094804df00780f5de3b.png)
以下の指し手。▲7三歩成△同桂▲7四飛△8八歩▲7五銀△1九角成▲5四飛△5二歩▲8八玉△8三香▲8四銀打△同香▲同銀△2九馬▲7七歩△8六歩▲同歩△4七馬
まで、植山七段の勝ち。
▲7四飛に、△8八歩が厳しかった。▲同玉は△8六歩▲同歩△同角で下手一手一手。
私は▲7五銀と攻め合いに出たが、植山七段は黙って△1九角成。そこで得た香を△8三に据えられ、私は泣く泣く銀を手放した。
さらに△8六歩から△2九馬と桂馬を取られ、次に△8七歩▲同玉△6九馬や、△6五馬の狙いがあり、下手は収拾がつかない。ここで私は投了した。
感想戦では、▲7五銀で▲5五歩を指摘された。以下△8九歩成▲5四歩は、この局面も難しいが、△6四角がいなくなれば▲5三歩成があり、下手もまだまだ楽しみがあったようだ。
大野八一雄七段に続き本局も敗れ、残念だった。
先の女性は、植山七段に八枚落ちの指導対局を受けていた。しかし植山七段の教えが今一つ理解できていないようで、彼女に実戦はまだ難しいように思った。
果たして植山七段はW氏に講師をバトンタッチした。これは適切な選択と思う。
私は少年とリーグ戦。私の飛車落ちである。
少年は向かい飛車に振った。私は△3五歩から△4五歩。これを少年が▲同銀と取ったので、私は△5五歩。次に△4四歩の銀殺しを見せられ忙しくなった少年はなおも攻めてきたが、私は丁寧に対応する。もっともそこは飛車落ちだから簡単ではなかったが、何とか勝ちを収めることができた。
感想戦で少年は、▲4五同銀で▲6五歩を指摘した。なるほどこうやって角交換に持ち込めば下手に手が多く、どの変化も下手が有望だった。
負けはしたが少年、なかなか強いと思った。
さてこれだけ人がいるのに、意外に指す相手がいない。私は他の対局を観戦したりするが、何しろ人が多いので、そこにいるだけで邪魔になる感じだ。
傍らにはWatanabe君もいるが、先のアマ大会で県代表になったという猛者に、私が対局を申し込めるわけがない。あまりにも強すぎるアマは、敬遠される定めにある。
そのうちOg氏に請われ、自由対局となった。振り飛車党のOg氏、本局は四間に振った。
私の居飛車急戦に、Og氏は袖飛車の趣向。大山名人みたいだ。
左の盤では、W氏が和服の女性に将棋を教えていた。女性側には歩がない「青空将棋」である。
▲1一竜△4一金、5一玉、6一金の局面で、女性は▲5三桂。
ところが△6二金に、女性は▲6一桂成とやった(4一、ではない)。
どうも女性は、駒を取る、あるいは駒得をする、という概念がまだないように思われた。
私見だが、彼女に実戦はやっぱり無理だと思う。以前中井広恵女流六段から聞いた気がするのだが、初心者に将棋を教えるときは、▲2三歩△2二角の局面で、次の手はどう指しますか? と問うくらいがいいと思う。
初心者はみなが思うより、ずぅっと将棋の指し方を知らないのだ。
さて、私の局面。△6二金で飛車の横利きが消えたので、私は▲4五歩と仕掛ける。これを△同歩なら、▲4四歩△同銀▲同銀△同角▲3二飛成(金を取る)が理想手順。将棋はまず、虫のいい手順を考えることが肝要だ。
Og氏は△6五歩▲7七銀を利かしてから△4五歩としたが、私はやはり▲4四歩とし、△5二銀▲3四銀△4六歩▲3三銀成△同桂と、角銀交換の成果を上げた。
しかし次の▲5七金が悪手。△4七銀の打ち込みを防いだものだが、Og氏にすかさず△3七歩と叩かれ、シビレた。これを▲同飛は△4八銀があるので、私は▲1八飛と逃げたが、これものちに△2七銀が残ってよくなかった。ここは▲2八飛とひとつ寄るべきだった。
本譜も△2七銀と飛車を殺され、私のジリ貧となった。さらに△6四桂と好所に据えられ、戦意喪失。ここで私は投了した。
感想戦では、▲5七金で▲4八飛を指摘された。さらに私指摘の▲7九角もよかったかもしれない。これに△4七銀なら、▲4六角の王手で、4七銀を抜ける。
「こういうところ(5七)に金が出ていくのは、だいたい良くない」というOg氏の指摘には、大いに唸った。
大野七段、植山七段はもちろんだが、Og氏の教えにも学ぶところは多い。
(つづく)
(きのうのつづき)
局面――。植山悦行七段の△8六歩に、私は▲9七角と上がる。
「よく分からないけど、よさそうな手ですねえ」
と植山七段。
以下△8七歩成▲7五角(金を取る)△7八と(金を取る)のあと、▲7五の角が5三金取りに当たっているのが自慢だったが、△6四金と強く出られてみると、角を渡せば△8七角以下の詰みがあり、それほどでかしていなかった。
以下▲8七歩△7五金▲同飛△7三歩▲7四歩△6四角の局面で、ちょっと遅い3時休憩となった。
「すぐ終わりますよ」
と植山七段がつぶやいたが、下手がうまくやっているのだろうか。
室内は20人近くの人がいる。人いきれから逃げるべく、表へ出ようとすると、Is氏が来た。Is氏に会うのは久しぶりで、1年ぶりぐらいではないか。
続いてHon氏も来た。私は貧乏性なので、この時間まで遅れたらその日は教室に行かないが、2人は気にしていないようだ。
表で休んでいると、そのHon氏が来た。私が沖縄へ行かなかったテンションの低さを嘆くと、Hon氏も最近は肉体の衰えを感じているとのことで、ふたりで「歳取ったね」を連発した。
そこへ植山七段とW氏も来る。と、その途端に大粒の雨が降りだし、私たちは軒下へ避難した。植山七段、さすがの雨男ぶりである。
その植山七段、私をじっと見るのだが、私は関係ないだろう。
室内に戻ると、Og氏が、
「あれっ? 大沢さん、(そういえば)久しぶりですねえ」
と大声で言う。
シッ!! 確かに私が教室に訪れたのは5月以来で不義理だったが、その事実を誰にも知られず乗り切ろうと思ったのに、Og氏が盛大にバラしやがった。私は小さくなった。
ま、しかし大野教室はこのところ大盛況だから、私の出席率はもはや関係ない。
3時休みも終わり、対局再開。では、指し掛けの局面から終局までの手順を記そう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a7/0994dfdcc53b3094804df00780f5de3b.png)
以下の指し手。▲7三歩成△同桂▲7四飛△8八歩▲7五銀△1九角成▲5四飛△5二歩▲8八玉△8三香▲8四銀打△同香▲同銀△2九馬▲7七歩△8六歩▲同歩△4七馬
まで、植山七段の勝ち。
▲7四飛に、△8八歩が厳しかった。▲同玉は△8六歩▲同歩△同角で下手一手一手。
私は▲7五銀と攻め合いに出たが、植山七段は黙って△1九角成。そこで得た香を△8三に据えられ、私は泣く泣く銀を手放した。
さらに△8六歩から△2九馬と桂馬を取られ、次に△8七歩▲同玉△6九馬や、△6五馬の狙いがあり、下手は収拾がつかない。ここで私は投了した。
感想戦では、▲7五銀で▲5五歩を指摘された。以下△8九歩成▲5四歩は、この局面も難しいが、△6四角がいなくなれば▲5三歩成があり、下手もまだまだ楽しみがあったようだ。
大野八一雄七段に続き本局も敗れ、残念だった。
先の女性は、植山七段に八枚落ちの指導対局を受けていた。しかし植山七段の教えが今一つ理解できていないようで、彼女に実戦はまだ難しいように思った。
果たして植山七段はW氏に講師をバトンタッチした。これは適切な選択と思う。
私は少年とリーグ戦。私の飛車落ちである。
少年は向かい飛車に振った。私は△3五歩から△4五歩。これを少年が▲同銀と取ったので、私は△5五歩。次に△4四歩の銀殺しを見せられ忙しくなった少年はなおも攻めてきたが、私は丁寧に対応する。もっともそこは飛車落ちだから簡単ではなかったが、何とか勝ちを収めることができた。
感想戦で少年は、▲4五同銀で▲6五歩を指摘した。なるほどこうやって角交換に持ち込めば下手に手が多く、どの変化も下手が有望だった。
負けはしたが少年、なかなか強いと思った。
さてこれだけ人がいるのに、意外に指す相手がいない。私は他の対局を観戦したりするが、何しろ人が多いので、そこにいるだけで邪魔になる感じだ。
傍らにはWatanabe君もいるが、先のアマ大会で県代表になったという猛者に、私が対局を申し込めるわけがない。あまりにも強すぎるアマは、敬遠される定めにある。
そのうちOg氏に請われ、自由対局となった。振り飛車党のOg氏、本局は四間に振った。
私の居飛車急戦に、Og氏は袖飛車の趣向。大山名人みたいだ。
左の盤では、W氏が和服の女性に将棋を教えていた。女性側には歩がない「青空将棋」である。
▲1一竜△4一金、5一玉、6一金の局面で、女性は▲5三桂。
ところが△6二金に、女性は▲6一桂成とやった(4一、ではない)。
どうも女性は、駒を取る、あるいは駒得をする、という概念がまだないように思われた。
私見だが、彼女に実戦はやっぱり無理だと思う。以前中井広恵女流六段から聞いた気がするのだが、初心者に将棋を教えるときは、▲2三歩△2二角の局面で、次の手はどう指しますか? と問うくらいがいいと思う。
初心者はみなが思うより、ずぅっと将棋の指し方を知らないのだ。
さて、私の局面。△6二金で飛車の横利きが消えたので、私は▲4五歩と仕掛ける。これを△同歩なら、▲4四歩△同銀▲同銀△同角▲3二飛成(金を取る)が理想手順。将棋はまず、虫のいい手順を考えることが肝要だ。
Og氏は△6五歩▲7七銀を利かしてから△4五歩としたが、私はやはり▲4四歩とし、△5二銀▲3四銀△4六歩▲3三銀成△同桂と、角銀交換の成果を上げた。
しかし次の▲5七金が悪手。△4七銀の打ち込みを防いだものだが、Og氏にすかさず△3七歩と叩かれ、シビレた。これを▲同飛は△4八銀があるので、私は▲1八飛と逃げたが、これものちに△2七銀が残ってよくなかった。ここは▲2八飛とひとつ寄るべきだった。
本譜も△2七銀と飛車を殺され、私のジリ貧となった。さらに△6四桂と好所に据えられ、戦意喪失。ここで私は投了した。
感想戦では、▲5七金で▲4八飛を指摘された。さらに私指摘の▲7九角もよかったかもしれない。これに△4七銀なら、▲4六角の王手で、4七銀を抜ける。
「こういうところ(5七)に金が出ていくのは、だいたい良くない」というOg氏の指摘には、大いに唸った。
大野七段、植山七段はもちろんだが、Og氏の教えにも学ぶところは多い。
(つづく)