私は深川駅前にある喫茶店に入った。以前2度ほど入ったことがあり、居心地がよかった。
その後は時間の関係もありご無沙汰していたのだが、今回ひょんなことから30分の余裕ができ、お邪魔することができたのだった。
うまいコーヒーは400円だった。
さて、JRバス深名線に乗る。鉄道の深名線は平成7年に廃止されたが、同じルートを代行バスが走る。私は鉄道時代に1度しか乗ったことはないが、代替バスを代償機制にして、毎年巡礼をしているのだ。
深川からのバスは、大量15人の乗客がいた。いまはバスだって廃止される時代である。ただでさえバス本数が少ない深名線、客が多いのはいいことである。
沿線風景は鉄道のそれには及ばぬが、バスも秘境の地を走る。空の青と大地の白の対比がいい。冬の北海道に来て、こんなルートを辿る旅行者は少ないだろうが、それだけに贅沢な旅といえる。
幌加内ターミナル着。ここで15分の待ち合わせとなる。昨年同様、ターミナル内の「せい一」で幌加内そばを手繰りたい。
一応運転手さんに断ると、「大丈夫ですか!?(出発時間に間に合いますか?)」と目を剥かれた。
人によって対応は違うものである。昨年の運転手さんは、「どうぞどうぞ、バスを運転するのは私ですから」と、鷹揚としたものだった。
私は構わず、せい一に入る。昼食客が何人かいたが、すでに食事は出ているようだ。私はもりそばを頼み、出されたそばをズルズルッと手繰った。
うまい!! このコクと香り、さすがに幌加内そばである。
バスは定刻に発車。「(待ち時間15分で、そばを)食べられるもんですねえ」と運転手さんが感心していた。
深川ではあれだけいた乗客も、いまは私を含め2名である。やっぱり、こうなってしまうのか…。
13時36分、ルオント前着。ここで降りる。せいわ温泉ルオントで立ち寄り湯で、これも毎年の定跡である。ただ今回は、ちょっと順番が違う。
私はまず、施設内の食堂に入った。ここは数年前から、午後2時~5時と中休みを取るようになったからだ。さっきそばを食したばかりだが、しょうがない。
食堂ではおろしそば(700円)を頼んだ。せい一とは微妙にそばの味が違う。もちろんこちらも美味しくいただいた。
まだ温泉には入らない。いま来た道を数百メートル戻り、旧深名線第三雨竜川橋梁を鑑賞する。土木遺産にも選ばれた名橋は、雪景色に緑のカラーがよく映える。年間の維持費もバカにならないだろうが、旧深名線の象徴として、末永く遺してほしいものである。
せいわ温泉ルオントに入る。人があくせく働いている平日に入る温泉は、最高だ。自分が殿様になった気分である。ただし、毛生え薬を家に忘れてきたのは、痛恨の悪手だった。
ルオント前16時17分発。深名線沿線で最も景色がいいと信じるエンジン橋を渡り、バスは下り坂に入った。冬の陽は短く、早くも黄昏時である。
やがて空が暗くなり、17時53分、名寄駅からひとつ手前の南3条西6丁目で下車。これも毎年のことで、「なよろ雪質日本一フェスティバル」を観るためである。
会場の南広場に入ると、今年も各国代表の力作が展示されていた。大雪像はアンパンマン。
ここからが夜の本番だと思うのだが、屋台はどこも閉めかけている。私は昨年と同じ店で、たい焼を買った。屋台なのに120円と刻んでいるところが好感が持てる。
それにしても寒い。北海道の冬は覚悟しているし、今年は東京も厳寒だったからあまり差異は感じないと思ったのだが、指にいきなりピリッとくる感じは、いままで経験したことがないものだ。
雪像は相変わらず素晴らしい。ひとつひとつが芸術作品になっていて、深い味わいがある。反対側から見ると別の造形になっていたりして、一体で2度も3度も楽しめるのだ。名寄は場所が場所だけに知名度はあまりないが、是非とも観光してほしいまつりだと思う。
ステージでは、先着100人に、円型の紙筒が渡された。それに火を灯すと、ふわふわと空に飛んでいく仕組みのようだ。私も飛ばしたかったが、男ひとりで愉しんでも虚しいだけだ。
100基の紙筒が空に舞う光景は幻想的だ。誰かに見せたいのだが、叶わない。
それでも大いに満足して、私は会場を後にした。
さて、夕食である。昨年入った寿司屋でうまい握りを食わせてくれたので、今年もそこののれんをくぐる。しかし様子がヘンだ。
「すいやせん、シャリを切らしておりまして…」
去年の金沢じゃあるまいし、寿司屋がシャリを切らすなんてことがあるか。どうも、一見さんで断られた臭い。私はこの寿司屋が気に入ったから再訪したのに…。この寿司屋に入ることは、もうない。
近くのSAIJO西條に入ると、食堂があるとのことだったので、そちらで済ませることにする。閉店間際だったが、構わず入った。
「ざる寿司」なるものを頼む。ざるそばにマグロ、イクラ、甘えび、サーモン、とびっこが付いていた。寿司はいかにも…という感じだったが、十分うまい。これで780円はお値打ちだったと思う。
さて今夜は旭川のネットカフェに泊まる予定である。格安のバスはもう終バスが出てしまったので、JRを利用する。
冷凍庫のような極寒の中、駅前に戻ると、驚くべき数字が掲げられていた。
18.1…?
(つづく)
その後は時間の関係もありご無沙汰していたのだが、今回ひょんなことから30分の余裕ができ、お邪魔することができたのだった。
うまいコーヒーは400円だった。
さて、JRバス深名線に乗る。鉄道の深名線は平成7年に廃止されたが、同じルートを代行バスが走る。私は鉄道時代に1度しか乗ったことはないが、代替バスを代償機制にして、毎年巡礼をしているのだ。
深川からのバスは、大量15人の乗客がいた。いまはバスだって廃止される時代である。ただでさえバス本数が少ない深名線、客が多いのはいいことである。
沿線風景は鉄道のそれには及ばぬが、バスも秘境の地を走る。空の青と大地の白の対比がいい。冬の北海道に来て、こんなルートを辿る旅行者は少ないだろうが、それだけに贅沢な旅といえる。
幌加内ターミナル着。ここで15分の待ち合わせとなる。昨年同様、ターミナル内の「せい一」で幌加内そばを手繰りたい。
一応運転手さんに断ると、「大丈夫ですか!?(出発時間に間に合いますか?)」と目を剥かれた。
人によって対応は違うものである。昨年の運転手さんは、「どうぞどうぞ、バスを運転するのは私ですから」と、鷹揚としたものだった。
私は構わず、せい一に入る。昼食客が何人かいたが、すでに食事は出ているようだ。私はもりそばを頼み、出されたそばをズルズルッと手繰った。
うまい!! このコクと香り、さすがに幌加内そばである。
バスは定刻に発車。「(待ち時間15分で、そばを)食べられるもんですねえ」と運転手さんが感心していた。
深川ではあれだけいた乗客も、いまは私を含め2名である。やっぱり、こうなってしまうのか…。
13時36分、ルオント前着。ここで降りる。せいわ温泉ルオントで立ち寄り湯で、これも毎年の定跡である。ただ今回は、ちょっと順番が違う。
私はまず、施設内の食堂に入った。ここは数年前から、午後2時~5時と中休みを取るようになったからだ。さっきそばを食したばかりだが、しょうがない。
食堂ではおろしそば(700円)を頼んだ。せい一とは微妙にそばの味が違う。もちろんこちらも美味しくいただいた。
まだ温泉には入らない。いま来た道を数百メートル戻り、旧深名線第三雨竜川橋梁を鑑賞する。土木遺産にも選ばれた名橋は、雪景色に緑のカラーがよく映える。年間の維持費もバカにならないだろうが、旧深名線の象徴として、末永く遺してほしいものである。
せいわ温泉ルオントに入る。人があくせく働いている平日に入る温泉は、最高だ。自分が殿様になった気分である。ただし、毛生え薬を家に忘れてきたのは、痛恨の悪手だった。
ルオント前16時17分発。深名線沿線で最も景色がいいと信じるエンジン橋を渡り、バスは下り坂に入った。冬の陽は短く、早くも黄昏時である。
やがて空が暗くなり、17時53分、名寄駅からひとつ手前の南3条西6丁目で下車。これも毎年のことで、「なよろ雪質日本一フェスティバル」を観るためである。
会場の南広場に入ると、今年も各国代表の力作が展示されていた。大雪像はアンパンマン。
ここからが夜の本番だと思うのだが、屋台はどこも閉めかけている。私は昨年と同じ店で、たい焼を買った。屋台なのに120円と刻んでいるところが好感が持てる。
それにしても寒い。北海道の冬は覚悟しているし、今年は東京も厳寒だったからあまり差異は感じないと思ったのだが、指にいきなりピリッとくる感じは、いままで経験したことがないものだ。
雪像は相変わらず素晴らしい。ひとつひとつが芸術作品になっていて、深い味わいがある。反対側から見ると別の造形になっていたりして、一体で2度も3度も楽しめるのだ。名寄は場所が場所だけに知名度はあまりないが、是非とも観光してほしいまつりだと思う。
ステージでは、先着100人に、円型の紙筒が渡された。それに火を灯すと、ふわふわと空に飛んでいく仕組みのようだ。私も飛ばしたかったが、男ひとりで愉しんでも虚しいだけだ。
100基の紙筒が空に舞う光景は幻想的だ。誰かに見せたいのだが、叶わない。
それでも大いに満足して、私は会場を後にした。
さて、夕食である。昨年入った寿司屋でうまい握りを食わせてくれたので、今年もそこののれんをくぐる。しかし様子がヘンだ。
「すいやせん、シャリを切らしておりまして…」
去年の金沢じゃあるまいし、寿司屋がシャリを切らすなんてことがあるか。どうも、一見さんで断られた臭い。私はこの寿司屋が気に入ったから再訪したのに…。この寿司屋に入ることは、もうない。
近くのSAIJO西條に入ると、食堂があるとのことだったので、そちらで済ませることにする。閉店間際だったが、構わず入った。
「ざる寿司」なるものを頼む。ざるそばにマグロ、イクラ、甘えび、サーモン、とびっこが付いていた。寿司はいかにも…という感じだったが、十分うまい。これで780円はお値打ちだったと思う。
さて今夜は旭川のネットカフェに泊まる予定である。格安のバスはもう終バスが出てしまったので、JRを利用する。
冷凍庫のような極寒の中、駅前に戻ると、驚くべき数字が掲げられていた。
18.1…?
(つづく)