駅前に立てられている温度塔が、「-18.1℃」を示していた。
何かの間違いじゃないか!?
こんな数字を見たのは初めてで、道理で寒いわけだ。
むかし層雲峡の氷瀑まつりに訪れたときも凄まじい寒さだったが、あのときは風も強かった。しかし今回は真正面から寒さがまとわりついてくる。まさに冷凍庫に入っている感じだった。
20時12分、私は宗谷本線の上り列車に乗った。北海道の鉄路は、とくに北方面が寂しいことになっていて、旭川から北は、この宗谷本線のみである。まったく国鉄も、よくこれだけ路線を潰したものである。しかし客が乗らないんだからしょうがない。
その旭川には、定刻を3分遅れの21時46分に着いた。旭川駅は改装工事がほぼ終了して、すっかり街の顔になっていた。
駅前の買物公園通りには、旭川冬まつりの氷像が立っているが、ライトアップは午後10時までなので、鑑賞は明日に回す。
今夜の宿泊は「Compa3.7」というネットカフェを予定していて、これも私の「定宿」である。ブログは休止しているが、宿が取れなかったので、やむを得ずここにしたが、ネットカフェもいろいろ楽しめる。ここはナイトパック12時間で2,000円で、リーズナブルだ。
Compa3.7は、眠るに最適なフラッ駅トスペースが2室残っていた。私はもちろんそれを所望する。しかし部屋に入り表へ出ると、もう残りの1室が埋まっていた。けっこうあぶないところだった。
これにて長かった1日は終了した。
翌9日(日)。きのうは移動につぐ移動だったが、きょうは旭川冬まつりの鑑賞だけに留める。本当はあっちこっち移動したいのだが、周遊きっぷを使っているならまだしも、移動するぶん交通費がかかるわけで、あまり無駄な動きはしたくない。
なお昨日の関東地方は猛烈な雪が降り、航空各社が運休を余儀なくされたようだ。週末に道内入りを予定していた旅行者も多かったはずで、その無念さは察するに余りある。一足先に北海道入りした私は、幸運だった。
私は駅前に戻り、氷彫刻世界大会の作品、一基一基を鑑賞していく。雪像は名寄が日本一なら、氷像は旭川が日本一だ。どれも立体的な造作で、作り手の熱意が伝わる。
街の温度計を見ると、-12℃を表示している。これも凄まじい寒さではあるが、昨晩より6度も高いと思えば、むしろ暖かいくらいだ。人間の適応能力はスゴイ。
私はカメラのシャッターを切るが、この寒さだから少しでも電池の消耗を遅らせようと、1枚撮るごとに電源のON、OFFを繰り返す。
それが何回か続いたとき、カメラの文字表示部分に、「err」の文字が出た。これは厳寒の地で撮っているとたまに出るもので、暖かくなれば直る。
…が、今回はちょっと様子がヘンだ。カメラを懐で温め、電池を出し入れしても、カメラがうまく作動しない。ON、OFFを繰り返したのがマズかったか。昨夜の極寒も堪えたかもしれない。
こういうときスマホがあると便利で、私は動揺しつつも、キヤノンの修理センターに電話をする。
しかし説明を聞くと、どうも「ダメ」っぽかった。応急措置を教えてくれ、それに従うとカメラが生き返ったが、シャッタースピードがイカレてしまったようなのだ。
つまり現在のカメラの状態は、写真を撮れることはとれるが、それは何を撮っているかが分かる程度で、万全の絵を撮れる状態ではない、と理解してよかった。
つまり私のカメラは、いわば脳死状態になってしまったのだ。
しかも窓口嬢は、もう交換部品がないという。私がいまのカメラを購入したのは、2000年かその辺だった。月日が経つと、そういう事態になってしまうのか。
私がこのカメラを購入してからは文字通り、北は北海道稚内から南は沖縄県波照間島まで、私の旅行には、いつも傍らにそれがあった。そしてこのカメラだけが、私の苦悩を知っていた。いったい総移動距離は、何千キロになったのだろう。
モノにはすべからく寿命があるが、まさか、きょうお別れがくるとは思わなかった。
いままで本当にありがとう。いろいろ助かったよ。
2014年2月9日。愛機、北海道旭川にて殉職。
(6日につづく)
何かの間違いじゃないか!?
こんな数字を見たのは初めてで、道理で寒いわけだ。
むかし層雲峡の氷瀑まつりに訪れたときも凄まじい寒さだったが、あのときは風も強かった。しかし今回は真正面から寒さがまとわりついてくる。まさに冷凍庫に入っている感じだった。
20時12分、私は宗谷本線の上り列車に乗った。北海道の鉄路は、とくに北方面が寂しいことになっていて、旭川から北は、この宗谷本線のみである。まったく国鉄も、よくこれだけ路線を潰したものである。しかし客が乗らないんだからしょうがない。
その旭川には、定刻を3分遅れの21時46分に着いた。旭川駅は改装工事がほぼ終了して、すっかり街の顔になっていた。
駅前の買物公園通りには、旭川冬まつりの氷像が立っているが、ライトアップは午後10時までなので、鑑賞は明日に回す。
今夜の宿泊は「Compa3.7」というネットカフェを予定していて、これも私の「定宿」である。ブログは休止しているが、宿が取れなかったので、やむを得ずここにしたが、ネットカフェもいろいろ楽しめる。ここはナイトパック12時間で2,000円で、リーズナブルだ。
Compa3.7は、眠るに最適なフラッ駅トスペースが2室残っていた。私はもちろんそれを所望する。しかし部屋に入り表へ出ると、もう残りの1室が埋まっていた。けっこうあぶないところだった。
これにて長かった1日は終了した。
翌9日(日)。きのうは移動につぐ移動だったが、きょうは旭川冬まつりの鑑賞だけに留める。本当はあっちこっち移動したいのだが、周遊きっぷを使っているならまだしも、移動するぶん交通費がかかるわけで、あまり無駄な動きはしたくない。
なお昨日の関東地方は猛烈な雪が降り、航空各社が運休を余儀なくされたようだ。週末に道内入りを予定していた旅行者も多かったはずで、その無念さは察するに余りある。一足先に北海道入りした私は、幸運だった。
私は駅前に戻り、氷彫刻世界大会の作品、一基一基を鑑賞していく。雪像は名寄が日本一なら、氷像は旭川が日本一だ。どれも立体的な造作で、作り手の熱意が伝わる。
街の温度計を見ると、-12℃を表示している。これも凄まじい寒さではあるが、昨晩より6度も高いと思えば、むしろ暖かいくらいだ。人間の適応能力はスゴイ。
私はカメラのシャッターを切るが、この寒さだから少しでも電池の消耗を遅らせようと、1枚撮るごとに電源のON、OFFを繰り返す。
それが何回か続いたとき、カメラの文字表示部分に、「err」の文字が出た。これは厳寒の地で撮っているとたまに出るもので、暖かくなれば直る。
…が、今回はちょっと様子がヘンだ。カメラを懐で温め、電池を出し入れしても、カメラがうまく作動しない。ON、OFFを繰り返したのがマズかったか。昨夜の極寒も堪えたかもしれない。
こういうときスマホがあると便利で、私は動揺しつつも、キヤノンの修理センターに電話をする。
しかし説明を聞くと、どうも「ダメ」っぽかった。応急措置を教えてくれ、それに従うとカメラが生き返ったが、シャッタースピードがイカレてしまったようなのだ。
つまり現在のカメラの状態は、写真を撮れることはとれるが、それは何を撮っているかが分かる程度で、万全の絵を撮れる状態ではない、と理解してよかった。
つまり私のカメラは、いわば脳死状態になってしまったのだ。
しかも窓口嬢は、もう交換部品がないという。私がいまのカメラを購入したのは、2000年かその辺だった。月日が経つと、そういう事態になってしまうのか。
私がこのカメラを購入してからは文字通り、北は北海道稚内から南は沖縄県波照間島まで、私の旅行には、いつも傍らにそれがあった。そしてこのカメラだけが、私の苦悩を知っていた。いったい総移動距離は、何千キロになったのだろう。
モノにはすべからく寿命があるが、まさか、きょうお別れがくるとは思わなかった。
いままで本当にありがとう。いろいろ助かったよ。
2014年2月9日。愛機、北海道旭川にて殉職。
(6日につづく)