タイトル戦に出場するのは難しい。芹沢博文九段、石田和雄九段、真部一男九段などは人気、実力を備えた棋士だったが、その機会はついぞなかった。
その芹沢九段が買っていたのが先崎学九段で、河口俊彦七段著「一回の将棋、一回の人生」(1990年・新潮社)によると、芹沢九段は先崎九段が奨励会初段のころに棋才を見出し、「先崎は名人の器だ」と、ことあるごとに喧伝していたという。
事実先崎九段は17歳で棋士になり、順位戦C級2組で長いこと足踏みしたものの、2000年にA級に昇級した。しかし名人挑戦者になることはなく、現在はB級2組在籍である。この間、竜王戦と王位戦で挑戦者決定戦まで進出したことはあるが、いずれもそこで敗れた。
その先崎九段も、もう44歳である。そういえば昨年、行方尚史八段が39歳にしてタイトル戦(王位戦)に初登場して話題になった。もっともかつては、灘蓮照九段が43歳で名人挑戦者になったことがあるのだが、それは1970年の話である。現実的には、40歳までにタイトル戦に登場しなければ、以降の登場も難しいと考える。
そこで私は、「40歳を過ぎたA級経験者で、タイトル戦に登場したことがない棋士」を調べてみた。
といっても昔の棋士から調べたらキリがないので、現役棋士159人を対象とする。
結果は、田丸昇九段(64)、小林健二九段(57)、井上慶太九段(50)、そして先崎九段の4人だった。
田丸九段は1990年、第15期棋王戦で挑戦者決定戦まで進出したが、相手はあの大山康晴十五世名人。結果は大山十五世名人が快勝し、当時66歳のタイトル戦挑戦と話題になった。
また小林九段は四段時代の1977年、第18期王位戦で挑戦者決定戦に進出したが、米長邦雄八段(当時)に、優勢の将棋を敗れ、長蛇を逸した。
井上九段は、挑戦者決定戦の進出はなし。
そこで、冒頭の「タイトル戦に出場するのは難しい」となるのだが、「A級経験者」に限れば、そうともいえない。
現役159人のうち、A級経験者は35人。そのうち実に29人が、タイトル戦に登場しているのだ。
ちなみに、タイトル戦に出ていない残り2人は、阿久津主税八段(32)と、橋本崇載八段(31)である。
つまり「A級に昇る実力者は、その8割以上がタイトル戦に出られる」という結論になる。
先崎九段は、運がなかった。あまりにも才能がありすぎた。原稿執筆その他をやめて、将棋一本に絞っていれば、タイトルのひとつやふたつは獲っていただろうが、文才のない先崎九段は先崎九段ではない。
文才のある先崎九段のほうが、タイトル戦経験のある先崎九段より、はるかに魅力的である。
その芹沢九段が買っていたのが先崎学九段で、河口俊彦七段著「一回の将棋、一回の人生」(1990年・新潮社)によると、芹沢九段は先崎九段が奨励会初段のころに棋才を見出し、「先崎は名人の器だ」と、ことあるごとに喧伝していたという。
事実先崎九段は17歳で棋士になり、順位戦C級2組で長いこと足踏みしたものの、2000年にA級に昇級した。しかし名人挑戦者になることはなく、現在はB級2組在籍である。この間、竜王戦と王位戦で挑戦者決定戦まで進出したことはあるが、いずれもそこで敗れた。
その先崎九段も、もう44歳である。そういえば昨年、行方尚史八段が39歳にしてタイトル戦(王位戦)に初登場して話題になった。もっともかつては、灘蓮照九段が43歳で名人挑戦者になったことがあるのだが、それは1970年の話である。現実的には、40歳までにタイトル戦に登場しなければ、以降の登場も難しいと考える。
そこで私は、「40歳を過ぎたA級経験者で、タイトル戦に登場したことがない棋士」を調べてみた。
といっても昔の棋士から調べたらキリがないので、現役棋士159人を対象とする。
結果は、田丸昇九段(64)、小林健二九段(57)、井上慶太九段(50)、そして先崎九段の4人だった。
田丸九段は1990年、第15期棋王戦で挑戦者決定戦まで進出したが、相手はあの大山康晴十五世名人。結果は大山十五世名人が快勝し、当時66歳のタイトル戦挑戦と話題になった。
また小林九段は四段時代の1977年、第18期王位戦で挑戦者決定戦に進出したが、米長邦雄八段(当時)に、優勢の将棋を敗れ、長蛇を逸した。
井上九段は、挑戦者決定戦の進出はなし。
そこで、冒頭の「タイトル戦に出場するのは難しい」となるのだが、「A級経験者」に限れば、そうともいえない。
現役159人のうち、A級経験者は35人。そのうち実に29人が、タイトル戦に登場しているのだ。
ちなみに、タイトル戦に出ていない残り2人は、阿久津主税八段(32)と、橋本崇載八段(31)である。
つまり「A級に昇る実力者は、その8割以上がタイトル戦に出られる」という結論になる。
先崎九段は、運がなかった。あまりにも才能がありすぎた。原稿執筆その他をやめて、将棋一本に絞っていれば、タイトルのひとつやふたつは獲っていただろうが、文才のない先崎九段は先崎九段ではない。
文才のある先崎九段のほうが、タイトル戦経験のある先崎九段より、はるかに魅力的である。