16日(土)。私のテンションが高かったら今頃は沖縄にいて、宮古島の吉野海岸か新城海岸で泳いでいるはずなのだが、自ら予定を破棄したのだから仕方がない。
たまたま時間が空いたから、というわけではないが、私は「大野教室」へ向かった。
教室へは午後1時27分に入った。下駄箱と三和土は靴でいっぱい。お盆の時期だから生徒は少ないと思いきや、その逆だった。みんなどこにも行かないのか。
大野八一雄七段は5面指しの真っ最中。しかし知った顔がほとんどない。また、壁には大盤が設置されていた。これから生徒全員を対象に、実戦解説ができる。大野教室、生徒も増え設備も充実し、ますます好調である。
私は端の盤の前に座り、まずは大野七段に角落ちでお願いする。
私は居飛車。展開次第では急戦の用意もあったが、ガッチリ金矢倉に組んだ。
奥の部屋には、植山悦行七段の姿が見える。4面指しをしているようだ。その左側にも自由対局をしている人がいる気配だが、和田あき女流2級とHanaちゃんはいないようだ。
私の右側では、詰将棋を解いている新人さんが2人いる。注目すべきは奥の生徒で、何と妙齢の和服美人だ。顔はさっぱり系で、名前が思い出せないが、似ている女優がいる。
チャイムが鳴って、新規の客が来た…と思ったら、大野七段の一番弟子だった。Watanabe君で、大野七段は私と彼が初対面とフンでいたようだが、彼はかつて私に角を落として勝った猛者ではあるまいか? 私はヒトの顔を憶えないタチだが、よく似ているように思う。
「きょうはワタナベが3人だね。マナちゃん…」
とか大野七段が言っている。ワタナベ…マナ? 渡部愛女流初段が来ているのか? 部屋の奥には彼女がいるのか? まさか。
しばらく経って渡部女流初段が顔を出し、挨拶してくれた。ああ、いたんだ…。か、かわいい…!!
渡部女流初段は、新規女流棋士ファンランキングの2位である。私の感激がいかばかりだったか、お分かりいただけよう。
今回は沖縄に行かなくてよかったかもしれない――。
今回初めて、そう思えた。
局面――。△5五同金に私は▲5八飛と回り、△5四金には▲5五歩から▲5六金。6七の地点が空いたので▲6七金と上がり、形を整えて▲7八玉と上がる。位を張って好調のようだが、駒が上擦ってしまった。
満を持して▲4五歩と仕掛けたが、△4五同桂から桂交換の数手後、△5五桂から金を取られ、よく分からないうちに下手が敗勢になった。
さらに△4七金と飛車取りに打たれ、この将棋は負けたと思った。
では、その局面から終局までの手順を記そう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/12/8d4d3c2625d5882db5cd068b23d19f09.png)
以下の指し手。▲3三銀△同銀▲同歩成△同玉▲3四歩△4二玉▲2八飛△5七金打▲2三飛成△6九銀▲8八玉△6七金▲2二竜△3二歩▲1一竜△8二飛▲5四桂△同金直▲2四角△5三玉
▲5一竜△6四玉▲5六歩△5二歩▲6一竜△6三歩▲5一角成△7八銀成▲9八玉△7七金▲6五香△同金▲同歩△同玉
まで、大野七段の勝ち。
私は▲3三銀と打ち込む。これに大野七段が△同銀と付き合ってくれたので、数手後に▲2八飛と回って、棋勢の好転を感じた。
△8二飛にはじっと▲6一竜が読みだったのだが、眠っていた角を働かせようと、私は▲5四桂捨てから▲2四角と出る。しかしこれが疑問の構想で、△5三玉で紛れてしまった。
以下は大野七段に着々と包囲網を狭められ、無念の投了となった。
感想戦では、▲2二竜で▲3五桂を指摘された。次は▲4三桂成~▲5四桂の狙いで、上手はこの手順が分かっていても受けにくい。▲3五桂は私の第一候補だったのだが、考えすぎて次善手を指してしまった。
さらに上記の通り▲5四桂~▲2四角もやっぱりマズく、角は6八にいたほうが、いろいろ働きがあった。
また▲4五歩と仕掛ける前に私は、形とばかり▲7八玉と上がったが、これは△7三桂と替わって損だったらしい。すぐに▲4五歩と仕掛ければ下手がよかったらしい。
なおこの場合、玉が一段目のほうが、アタリが少なくてベターとのこと。いやはや本当に将棋は難しい。
負けて言い訳するわけではないが、私の私生活がもう少し充実していたら、この将棋は私が勝ち切っていたと思う。繰り返すが、残念無念だった。
3時休みまではあと20分ほどだが、さっき来たW氏が、植山七段との手合いを付けてくれた。私は休憩モードに入っていたのだが、甘かったようだ。
植山七段は駒を落としたがらないが、強引に角を落としていただく。大野七段と違って、こちらの上手はすぐにラクをしようとするからいけない。
「さっきはShinさんに、大沢流をやられましたよ」
と植山七段。どうも、受けの強手を指されたらしい。
本局は急戦調になった。こういうチャンバラのほうが、将棋を指している感じがする。
すると、先ほどの女性が、今度は植山七段の前に座った。植山七段に教えを請おうというわけだ。
ああ、彼女は女優の長谷川京子にそっくりだと思った。
(つづく)
たまたま時間が空いたから、というわけではないが、私は「大野教室」へ向かった。
教室へは午後1時27分に入った。下駄箱と三和土は靴でいっぱい。お盆の時期だから生徒は少ないと思いきや、その逆だった。みんなどこにも行かないのか。
大野八一雄七段は5面指しの真っ最中。しかし知った顔がほとんどない。また、壁には大盤が設置されていた。これから生徒全員を対象に、実戦解説ができる。大野教室、生徒も増え設備も充実し、ますます好調である。
私は端の盤の前に座り、まずは大野七段に角落ちでお願いする。
私は居飛車。展開次第では急戦の用意もあったが、ガッチリ金矢倉に組んだ。
奥の部屋には、植山悦行七段の姿が見える。4面指しをしているようだ。その左側にも自由対局をしている人がいる気配だが、和田あき女流2級とHanaちゃんはいないようだ。
私の右側では、詰将棋を解いている新人さんが2人いる。注目すべきは奥の生徒で、何と妙齢の和服美人だ。顔はさっぱり系で、名前が思い出せないが、似ている女優がいる。
チャイムが鳴って、新規の客が来た…と思ったら、大野七段の一番弟子だった。Watanabe君で、大野七段は私と彼が初対面とフンでいたようだが、彼はかつて私に角を落として勝った猛者ではあるまいか? 私はヒトの顔を憶えないタチだが、よく似ているように思う。
「きょうはワタナベが3人だね。マナちゃん…」
とか大野七段が言っている。ワタナベ…マナ? 渡部愛女流初段が来ているのか? 部屋の奥には彼女がいるのか? まさか。
しばらく経って渡部女流初段が顔を出し、挨拶してくれた。ああ、いたんだ…。か、かわいい…!!
渡部女流初段は、新規女流棋士ファンランキングの2位である。私の感激がいかばかりだったか、お分かりいただけよう。
今回は沖縄に行かなくてよかったかもしれない――。
今回初めて、そう思えた。
局面――。△5五同金に私は▲5八飛と回り、△5四金には▲5五歩から▲5六金。6七の地点が空いたので▲6七金と上がり、形を整えて▲7八玉と上がる。位を張って好調のようだが、駒が上擦ってしまった。
満を持して▲4五歩と仕掛けたが、△4五同桂から桂交換の数手後、△5五桂から金を取られ、よく分からないうちに下手が敗勢になった。
さらに△4七金と飛車取りに打たれ、この将棋は負けたと思った。
では、その局面から終局までの手順を記そう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/12/8d4d3c2625d5882db5cd068b23d19f09.png)
以下の指し手。▲3三銀△同銀▲同歩成△同玉▲3四歩△4二玉▲2八飛△5七金打▲2三飛成△6九銀▲8八玉△6七金▲2二竜△3二歩▲1一竜△8二飛▲5四桂△同金直▲2四角△5三玉
▲5一竜△6四玉▲5六歩△5二歩▲6一竜△6三歩▲5一角成△7八銀成▲9八玉△7七金▲6五香△同金▲同歩△同玉
まで、大野七段の勝ち。
私は▲3三銀と打ち込む。これに大野七段が△同銀と付き合ってくれたので、数手後に▲2八飛と回って、棋勢の好転を感じた。
△8二飛にはじっと▲6一竜が読みだったのだが、眠っていた角を働かせようと、私は▲5四桂捨てから▲2四角と出る。しかしこれが疑問の構想で、△5三玉で紛れてしまった。
以下は大野七段に着々と包囲網を狭められ、無念の投了となった。
感想戦では、▲2二竜で▲3五桂を指摘された。次は▲4三桂成~▲5四桂の狙いで、上手はこの手順が分かっていても受けにくい。▲3五桂は私の第一候補だったのだが、考えすぎて次善手を指してしまった。
さらに上記の通り▲5四桂~▲2四角もやっぱりマズく、角は6八にいたほうが、いろいろ働きがあった。
また▲4五歩と仕掛ける前に私は、形とばかり▲7八玉と上がったが、これは△7三桂と替わって損だったらしい。すぐに▲4五歩と仕掛ければ下手がよかったらしい。
なおこの場合、玉が一段目のほうが、アタリが少なくてベターとのこと。いやはや本当に将棋は難しい。
負けて言い訳するわけではないが、私の私生活がもう少し充実していたら、この将棋は私が勝ち切っていたと思う。繰り返すが、残念無念だった。
3時休みまではあと20分ほどだが、さっき来たW氏が、植山七段との手合いを付けてくれた。私は休憩モードに入っていたのだが、甘かったようだ。
植山七段は駒を落としたがらないが、強引に角を落としていただく。大野七段と違って、こちらの上手はすぐにラクをしようとするからいけない。
「さっきはShinさんに、大沢流をやられましたよ」
と植山七段。どうも、受けの強手を指されたらしい。
本局は急戦調になった。こういうチャンバラのほうが、将棋を指している感じがする。
すると、先ほどの女性が、今度は植山七段の前に座った。植山七段に教えを請おうというわけだ。
ああ、彼女は女優の長谷川京子にそっくりだと思った。
(つづく)