3時休みを感想戦に費やしたので、ほとんど休みなしに次の対局である。
3局目はKo君と。私の飛車落ちだが、前局はこの手合いでうまく負かされた。そのときはKo君の振り飛車だったが、本局もKo君が飛車を振った。
私は△5五歩と突っ張るが、▲5六歩から一歩を交換され、面白くなかった。
Ko君は▲6六角~▲7七桂。さらに満を持して▲9五歩ときた。私は△同歩だが、数手進んでみると8筋からの飛車の侵入が受からない。すなわち上手敗勢である。
私は諦めて攻め合いに出るが、ここをKo君が手抜いてくれたので、やや勝負になった。まあこれでも上手が悪いのだが、ここを丁寧に面倒見られたら、上手のなす術がなかった。
以下は時間に追われたKo君が疑問手を指し、私も妖しい手を連発して、形勢逆転。最後は△2八桂成▲1七玉△2七成桂▲同玉△2六金(▲1八玉は△1七香)まで、Ko君の投了となった。
「こっちが全然ダメだったね」
「……」
「小学生からお年玉をもらったよ」
こういう将棋は、勝った方も味が悪い。
ところでよく考えたら、私は以前Ko君と平手戦も2局指していて、そのときも彼は端攻めを敢行していた。
確かに端攻めも有力ではあるが、毎回これでは寂しい。
将棋にはいろいろな攻め筋がある。たまには中央から攻略する順も考えないと、やがて行き詰まる。Ko君、いろいろな戦法を覚えるなら、いまだよ。…と、敗勢になった上手が助言しても、説得力はないのだが。
休む間もなく、Fuj氏に話しかけられる。
「谷川先生、あそこで投了しますものねえ」
「…。あそこは投げるでしょう」
「でも○○○○ならあと50手は指しますよ」
「……」
「森下さんは、あそこで投了するのは谷川さんだけだ、って言ってましたが」
「……」
この話、何回するのだろうか。
4局目はOk氏と。さっきの和服の男性は、やはりOk氏だった。
手合いは私の二枚落ち。Ok氏、さっきは植山悦行七段に飛車落ちで教わっていたからよく分からないが、ここが指導対局と真剣勝負の違いなのであろう。
本局は、△6二銀▲7六歩△5四歩▲4六歩△5三銀▲4五歩△3二金▲5六歩△6四銀▲4八銀△6五銀▲4七銀△7六銀▲3六歩△6五銀と進んだ。
毎回同じ将棋では面白くないので、私は△6四銀~△6五銀と変化してみた。▲4七銀に一歩をかすめ取り、△6五銀と戻る。
このあとは△2二銀を省略して△6四金と繰り出し、▲4四歩には△5五歩と止めた。
Ok氏は▲4三歩成だが、私は手順に△同金と盛り上がって、十分。
私はさらに桂得を果たし、その桂を△4四桂と打つ。この時点では勝ったと思った。
しかしOk氏は捨て身の▲3六銀。これを喜んで△同桂と取ったのが軽率だった。Ok氏に素知らぬ顔で▲1一角成と香を取られ、一遍にヨリが戻ってしまった。
以下△3四銀▲3六飛に、▲1六飛を防いで△1四歩とするようでは踏んだり蹴ったりだ。さっきまで勝勢だったのに、あまりの急転に、私は言葉もない。
私の△3六同桂では、黙って△3四銀と歩を払っておくのだった。以下下手も攻めてくるが、いかようにもいなせる。本譜はごまかしの利かない形だ。
ただ将棋はその後、Ok氏に怯んだ手が出て、私が僥倖の勝利となった。
感想戦では、私が△3六同桂を悔やむ。△3四銀以下をFuj氏と検討していると、「私の勝ち筋も教えてくださいよ」とOk氏に促され、ハッと我に返った。
確かに駒落ちの対局で、勝った上手が自分の疑問手を追求するなど、ふつうはない話だ。
感想戦はそのまま終わったのだが、ここでOk氏の正着を書いておこう。
序盤、私の△6五銀(引)に、Ok氏が▲3六歩と指したのが逸機。ここは▲5八飛と回るべきだった。
次に▲5五歩△同歩▲同飛の王手銀取りがあるから上手は△5二金だが、それでも▲5五歩として下手優勢。これなら私が順当に負けていた。
Ok氏はまことに残念だったが、この調子なら初段もすぐである。
「大沢さん、香一本強くなるって、どうやって強くなるつもりです?」
とFuj氏。
私がブログに書いた一言に言及したものだが、あれは深く考えて書いたわけではないので、改まって聞かれても、困ってしまう。
「大沢さん、3年前はヒドイ将棋を指してたなあ」
とFuj氏。いつの話をしてるのだろうか。「(この前は)○○さんに連敗した」
Fuj氏は手持ち無沙汰から私に話しかけてくるが、その話題では私も乗れない。
5局目は大野八一雄七段に教えていただく。もちろん角落ちである。
新年第1局目はガッチリ矢倉に囲おうと思ったのだが、大野七段に△6五歩▲同歩△同金、△5五歩▲同歩△同金と、次々に歩を交換され、ちょっと気が変わった。
私は▲5六歩を保留して▲5七銀だが、数手後の▲5六歩に△4五金と寄られ、3六歩を狙われた。
私は▲3八飛だが、△3五歩▲同歩△同銀と進出され、下手が勝てない流れになった。本譜も完敗。
感想戦。▲5七銀を見て大野七段は優勢を確信したそうで、ここはふつうに▲5六歩と収めるのがよかったという。これなら△4五歩とは寄れないから△5四金。そこで下手は▲4六歩~▲4七銀~▲3七桂とする。これなら下手十分だったようだ。
感想戦では出なかったが、△4五金には▲4八銀△3六金▲4六歩とする手もあったと思う。ただ1歩損のうえ銀も2手損し、これも下手がつまらないことに変わりはない。
ともあれ、正月早々棋士2人に勝とうなんて、虫のいい話だった。
(つづく)
3局目はKo君と。私の飛車落ちだが、前局はこの手合いでうまく負かされた。そのときはKo君の振り飛車だったが、本局もKo君が飛車を振った。
私は△5五歩と突っ張るが、▲5六歩から一歩を交換され、面白くなかった。
Ko君は▲6六角~▲7七桂。さらに満を持して▲9五歩ときた。私は△同歩だが、数手進んでみると8筋からの飛車の侵入が受からない。すなわち上手敗勢である。
私は諦めて攻め合いに出るが、ここをKo君が手抜いてくれたので、やや勝負になった。まあこれでも上手が悪いのだが、ここを丁寧に面倒見られたら、上手のなす術がなかった。
以下は時間に追われたKo君が疑問手を指し、私も妖しい手を連発して、形勢逆転。最後は△2八桂成▲1七玉△2七成桂▲同玉△2六金(▲1八玉は△1七香)まで、Ko君の投了となった。
「こっちが全然ダメだったね」
「……」
「小学生からお年玉をもらったよ」
こういう将棋は、勝った方も味が悪い。
ところでよく考えたら、私は以前Ko君と平手戦も2局指していて、そのときも彼は端攻めを敢行していた。
確かに端攻めも有力ではあるが、毎回これでは寂しい。
将棋にはいろいろな攻め筋がある。たまには中央から攻略する順も考えないと、やがて行き詰まる。Ko君、いろいろな戦法を覚えるなら、いまだよ。…と、敗勢になった上手が助言しても、説得力はないのだが。
休む間もなく、Fuj氏に話しかけられる。
「谷川先生、あそこで投了しますものねえ」
「…。あそこは投げるでしょう」
「でも○○○○ならあと50手は指しますよ」
「……」
「森下さんは、あそこで投了するのは谷川さんだけだ、って言ってましたが」
「……」
この話、何回するのだろうか。
4局目はOk氏と。さっきの和服の男性は、やはりOk氏だった。
手合いは私の二枚落ち。Ok氏、さっきは植山悦行七段に飛車落ちで教わっていたからよく分からないが、ここが指導対局と真剣勝負の違いなのであろう。
本局は、△6二銀▲7六歩△5四歩▲4六歩△5三銀▲4五歩△3二金▲5六歩△6四銀▲4八銀△6五銀▲4七銀△7六銀▲3六歩△6五銀と進んだ。
毎回同じ将棋では面白くないので、私は△6四銀~△6五銀と変化してみた。▲4七銀に一歩をかすめ取り、△6五銀と戻る。
このあとは△2二銀を省略して△6四金と繰り出し、▲4四歩には△5五歩と止めた。
Ok氏は▲4三歩成だが、私は手順に△同金と盛り上がって、十分。
私はさらに桂得を果たし、その桂を△4四桂と打つ。この時点では勝ったと思った。
しかしOk氏は捨て身の▲3六銀。これを喜んで△同桂と取ったのが軽率だった。Ok氏に素知らぬ顔で▲1一角成と香を取られ、一遍にヨリが戻ってしまった。
以下△3四銀▲3六飛に、▲1六飛を防いで△1四歩とするようでは踏んだり蹴ったりだ。さっきまで勝勢だったのに、あまりの急転に、私は言葉もない。
私の△3六同桂では、黙って△3四銀と歩を払っておくのだった。以下下手も攻めてくるが、いかようにもいなせる。本譜はごまかしの利かない形だ。
ただ将棋はその後、Ok氏に怯んだ手が出て、私が僥倖の勝利となった。
感想戦では、私が△3六同桂を悔やむ。△3四銀以下をFuj氏と検討していると、「私の勝ち筋も教えてくださいよ」とOk氏に促され、ハッと我に返った。
確かに駒落ちの対局で、勝った上手が自分の疑問手を追求するなど、ふつうはない話だ。
感想戦はそのまま終わったのだが、ここでOk氏の正着を書いておこう。
序盤、私の△6五銀(引)に、Ok氏が▲3六歩と指したのが逸機。ここは▲5八飛と回るべきだった。
次に▲5五歩△同歩▲同飛の王手銀取りがあるから上手は△5二金だが、それでも▲5五歩として下手優勢。これなら私が順当に負けていた。
Ok氏はまことに残念だったが、この調子なら初段もすぐである。
「大沢さん、香一本強くなるって、どうやって強くなるつもりです?」
とFuj氏。
私がブログに書いた一言に言及したものだが、あれは深く考えて書いたわけではないので、改まって聞かれても、困ってしまう。
「大沢さん、3年前はヒドイ将棋を指してたなあ」
とFuj氏。いつの話をしてるのだろうか。「(この前は)○○さんに連敗した」
Fuj氏は手持ち無沙汰から私に話しかけてくるが、その話題では私も乗れない。
5局目は大野八一雄七段に教えていただく。もちろん角落ちである。
新年第1局目はガッチリ矢倉に囲おうと思ったのだが、大野七段に△6五歩▲同歩△同金、△5五歩▲同歩△同金と、次々に歩を交換され、ちょっと気が変わった。
私は▲5六歩を保留して▲5七銀だが、数手後の▲5六歩に△4五金と寄られ、3六歩を狙われた。
私は▲3八飛だが、△3五歩▲同歩△同銀と進出され、下手が勝てない流れになった。本譜も完敗。
感想戦。▲5七銀を見て大野七段は優勢を確信したそうで、ここはふつうに▲5六歩と収めるのがよかったという。これなら△4五歩とは寄れないから△5四金。そこで下手は▲4六歩~▲4七銀~▲3七桂とする。これなら下手十分だったようだ。
感想戦では出なかったが、△4五金には▲4八銀△3六金▲4六歩とする手もあったと思う。ただ1歩損のうえ銀も2手損し、これも下手がつまらないことに変わりはない。
ともあれ、正月早々棋士2人に勝とうなんて、虫のいい話だった。
(つづく)