13日(火)は、マイナビ女子オープン本戦準決勝・矢内理絵子女流五段と和田あき女流初段の一戦があった。
矢内女流五段がまだ奨励会員だったころ、私は自宅近くの将棋センターで、対局中の彼女を見たことがある。その表情は真剣そのものだったが神経質そうで、近寄りがたかった。
その後彼女は女流棋士一本にしぼり、数々のタイトルを獲得。私も注目していたが、2007年にLPSA問題が勃発。これが大きな障害となり、私は矢内女流五段を快く思わなくなった。
ところが何年か前、将棋ペンクラブ・木村晋介会長の計らいにより、矢内女流五段に将棋を教えていただく機会に恵まれた。
そのときの矢内女流五段があまりにも綺麗で、私はそれまでの考えを改めた。
LPSA問題は、矢内女流五段には矢内女流五段の考えがあり、後悔のないよう実行したまでのこと。それを周りがどうこういう問題ではないのだ。
これからは矢内女流五段を、ふつうに応援しようと思った。
その後矢内女流五段は電撃結婚し、こちらのテンションも下がったが、彼女を応援する気持ちに変わりはなかった。
一方の和田女流初段は、改めて記すまでもない。「大野・植山教室」のアイドル的存在で、私は彼女が小学生のときから知っている。
和田女流初段の将棋の勉強量は物凄く、一日24時間と言っても過言ではない。学校の授業や食事のときも将棋を考え、眠っていても夢に将棋が出てくる。
私は、女流棋士の成績は、勉強量に比例すると思っている。和田女流初段がここまで勝ち上がってきたのも、ある意味当然であった。
本局、下馬評では矢内女流五段が優勢。しかし上記のように和田女流初段もメキメキと力を付けており、彼女にも勝機は十分あると思った。
さて対局開始である。先手の矢内女流五段が3手目に飛車を振った。居飛車党の矢内女流五段には珍しい戦法で、現地にいた鈴木環那女流二段も首を傾げた。
噂によると、矢内女流五段は最近、対抗形を好んでいるらしい。しかし、対振り飛車には穴熊、が和田女流初段の指しなれた作戦。このとき私は、勝敗は別にして、和田女流初段が存分に力を出せる展開になると思ったのである。
しかし矢内女流五段も「元女王」である。振り飛車党のような軽い捌きを見せ、優位に進める。さすがにプロは違う、と私は感心したのである。
ところで本局の観戦はスマホの無料アプリ「Momonoki」を利用しているが、きょうは最新の棋譜が読み込めず、難儀した。現在の局面になると「強制終了」になって、画面が閉じてしまうのだ。
次善の策として日本将棋連盟のサイトからマイナビ女子オープンのサイトに入ってみたが、観戦の入口が分からない。結局スマホに戻るが、最新の指し手を見るたびに初手からタップしなければならず、ひどくストレスのたまる観戦方式となった。
盤上――。中盤まで矢内女流五段が優位を保っている。65手目▲4三成桂が強気な一手。ここ、私なら喜んで8五の飛車をいただくが、矢内女流五段の目は後手玉に向かっていたのだ。ただ、その判断が正しかったかどうかは分からない。
本譜は△同金▲同角成に△3一歩が当然ながら好手で、ここから微妙な攻防が続く。
本局の解説は高見泰地五段。私は男性棋士の解説を信用しているので、彼の予想手順に指し手が準じていれば、まず間違いない。その伝でいくと、和田女流初段のほうが、「当たり」が多かったようだ。
88手目、和田女流初段は△3九角。私クラスならこう打つが、じっと△3五桂と控えたくもある。和田女流初段ならむしろこちらを選びそうだったが…。
本譜は矢内玉がスルスルと上部に逃げ出した。何だかこの数手は人が違ってしまったようで、まるでW氏が憑依したかのようだ。以前、甲斐智美女流二冠が、必敗の将棋を上部に逃げて逆転勝ちしたことがあったが、この辺りはそれと同じニオイを感じた。
だが和田女流初段はここで踏ん張った。△3五馬の大技が凄い。大駒の押し売りで、矢内玉を下段に押し戻したのである。
とはいえ、あれだけ優勢だったのに、こんなに苦労するようでは、ふつうはダメとしたものだ。事実逆転して、矢内女流五段が優勢になったようだ。
126手目、和田女流初段は△2九金と桂を取る。こういう金はすぐに取ってしまいたいが、高見五段の見解は「▲4三角成で矢内さんが勝ちになりましたね」。
果たして矢内女流五段もそう指したのだが、これが敗着というから将棋は恐ろしい。ここは何はともあれ、▲2九同玉と取っておくところだったらしい。
和田女流初段は小駒で的確に攻める。こうなっては穴熊ペースで、最終盤でこの流れは、もう止められない。
最後は絶対に王手がかからない穴熊の利を活かし、和田女流初段が金銀の物量攻めで勝ち切ったのだった。
私は反穴熊派だけに、振り飛車のこういう負け方を見るとつらい。もちろん和田女流初段の勝利はうれしかったが、私はちょっと、矢内女流五段に同情してしまったのである。
ともあれ、これで和田女流初段は堂々の挑戦者決定戦進出である。相手は甲斐女流二冠か上田初美女流三段で、どちらも強敵ではあるが、前述のとおり、和田女流初段の実力は今や本物である。和田女流初段が勝ってもちっともおかしくない。
和田女流初段には頑張ってもらいたいが、彼女があまりビッグにならないうちに、早いところ食事会を開いてしまおう。
でも連絡先を知らないんだな。
矢内女流五段がまだ奨励会員だったころ、私は自宅近くの将棋センターで、対局中の彼女を見たことがある。その表情は真剣そのものだったが神経質そうで、近寄りがたかった。
その後彼女は女流棋士一本にしぼり、数々のタイトルを獲得。私も注目していたが、2007年にLPSA問題が勃発。これが大きな障害となり、私は矢内女流五段を快く思わなくなった。
ところが何年か前、将棋ペンクラブ・木村晋介会長の計らいにより、矢内女流五段に将棋を教えていただく機会に恵まれた。
そのときの矢内女流五段があまりにも綺麗で、私はそれまでの考えを改めた。
LPSA問題は、矢内女流五段には矢内女流五段の考えがあり、後悔のないよう実行したまでのこと。それを周りがどうこういう問題ではないのだ。
これからは矢内女流五段を、ふつうに応援しようと思った。
その後矢内女流五段は電撃結婚し、こちらのテンションも下がったが、彼女を応援する気持ちに変わりはなかった。
一方の和田女流初段は、改めて記すまでもない。「大野・植山教室」のアイドル的存在で、私は彼女が小学生のときから知っている。
和田女流初段の将棋の勉強量は物凄く、一日24時間と言っても過言ではない。学校の授業や食事のときも将棋を考え、眠っていても夢に将棋が出てくる。
私は、女流棋士の成績は、勉強量に比例すると思っている。和田女流初段がここまで勝ち上がってきたのも、ある意味当然であった。
本局、下馬評では矢内女流五段が優勢。しかし上記のように和田女流初段もメキメキと力を付けており、彼女にも勝機は十分あると思った。
さて対局開始である。先手の矢内女流五段が3手目に飛車を振った。居飛車党の矢内女流五段には珍しい戦法で、現地にいた鈴木環那女流二段も首を傾げた。
噂によると、矢内女流五段は最近、対抗形を好んでいるらしい。しかし、対振り飛車には穴熊、が和田女流初段の指しなれた作戦。このとき私は、勝敗は別にして、和田女流初段が存分に力を出せる展開になると思ったのである。
しかし矢内女流五段も「元女王」である。振り飛車党のような軽い捌きを見せ、優位に進める。さすがにプロは違う、と私は感心したのである。
ところで本局の観戦はスマホの無料アプリ「Momonoki」を利用しているが、きょうは最新の棋譜が読み込めず、難儀した。現在の局面になると「強制終了」になって、画面が閉じてしまうのだ。
次善の策として日本将棋連盟のサイトからマイナビ女子オープンのサイトに入ってみたが、観戦の入口が分からない。結局スマホに戻るが、最新の指し手を見るたびに初手からタップしなければならず、ひどくストレスのたまる観戦方式となった。
盤上――。中盤まで矢内女流五段が優位を保っている。65手目▲4三成桂が強気な一手。ここ、私なら喜んで8五の飛車をいただくが、矢内女流五段の目は後手玉に向かっていたのだ。ただ、その判断が正しかったかどうかは分からない。
本譜は△同金▲同角成に△3一歩が当然ながら好手で、ここから微妙な攻防が続く。
本局の解説は高見泰地五段。私は男性棋士の解説を信用しているので、彼の予想手順に指し手が準じていれば、まず間違いない。その伝でいくと、和田女流初段のほうが、「当たり」が多かったようだ。
88手目、和田女流初段は△3九角。私クラスならこう打つが、じっと△3五桂と控えたくもある。和田女流初段ならむしろこちらを選びそうだったが…。
本譜は矢内玉がスルスルと上部に逃げ出した。何だかこの数手は人が違ってしまったようで、まるでW氏が憑依したかのようだ。以前、甲斐智美女流二冠が、必敗の将棋を上部に逃げて逆転勝ちしたことがあったが、この辺りはそれと同じニオイを感じた。
だが和田女流初段はここで踏ん張った。△3五馬の大技が凄い。大駒の押し売りで、矢内玉を下段に押し戻したのである。
とはいえ、あれだけ優勢だったのに、こんなに苦労するようでは、ふつうはダメとしたものだ。事実逆転して、矢内女流五段が優勢になったようだ。
126手目、和田女流初段は△2九金と桂を取る。こういう金はすぐに取ってしまいたいが、高見五段の見解は「▲4三角成で矢内さんが勝ちになりましたね」。
果たして矢内女流五段もそう指したのだが、これが敗着というから将棋は恐ろしい。ここは何はともあれ、▲2九同玉と取っておくところだったらしい。
和田女流初段は小駒で的確に攻める。こうなっては穴熊ペースで、最終盤でこの流れは、もう止められない。
最後は絶対に王手がかからない穴熊の利を活かし、和田女流初段が金銀の物量攻めで勝ち切ったのだった。
私は反穴熊派だけに、振り飛車のこういう負け方を見るとつらい。もちろん和田女流初段の勝利はうれしかったが、私はちょっと、矢内女流五段に同情してしまったのである。
ともあれ、これで和田女流初段は堂々の挑戦者決定戦進出である。相手は甲斐女流二冠か上田初美女流三段で、どちらも強敵ではあるが、前述のとおり、和田女流初段の実力は今や本物である。和田女流初段が勝ってもちっともおかしくない。
和田女流初段には頑張ってもらいたいが、彼女があまりビッグにならないうちに、早いところ食事会を開いてしまおう。
でも連絡先を知らないんだな。