一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中原の名局・1

2015-09-02 12:32:36 | 名局
今日9月2日は、中原誠十六世名人の68歳の誕生日。おめでとうございます。
羽生善治名人が各記録を更新するたび、必ず引き合いに出されるのが大山康晴十五世名人だが、中原十六世名人だって名人15期、タイトル64期を獲得した大棋士である。
少なくとも私の少年時代は、名人の代名詞は中原誠だった。大山十五世名人の振り飛車に舟囲いから急戦で挑み、手厚い指し回しで快勝するさまは、まさに名人と呼ぶにふさわしい横綱将棋だった。
中原十六世名人は2009年に引退したが、その将棋はもっと紹介されていい。そこで今日は、中原十六世名人の名局を紹介したい。

1985年(昭和60年)6月3日、4日
第43期名人戦第6局
滋賀県大津市「琵琶湖ホテル」
持ち時間:9時間

▲王座・王将 中原 誠
△名人    谷川浩司
▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛△7二銀▲1六歩△3四歩▲1五歩△6四歩▲3八銀△6三銀▲7六歩△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲3六歩△5四銀▲3七桂△6五銀▲3五歩△同歩▲4五桂△8八角成▲同銀△4二角▲1四歩△同歩▲2四歩△同歩▲7七桂△7四銀▲5六飛(第1図)

△5二飛▲5五角△2二銀▲6四角△5四歩▲4二角成△同金▲7五歩△6三銀▲6五桂(第2図)

△6四銀▲6六飛△6三歩▲2三歩△3一銀▲5三桂左成△同銀▲6三飛成△6二銀▲6六竜△7二金▲1二歩△同香▲3四角(第3図)

△5五角▲2二歩成△6六角▲同歩△5五歩▲3一と△5六歩▲同歩△同飛▲4八玉△2六桂▲2九銀△3六歩▲3八歩△5七歩▲6七銀△5四飛▲1二角成△6五歩▲3二と△同金▲2一馬△6六歩▲5六香(投了図)

まで、89手で中原王座・王将の勝ち
(消費時間:▲7時間53分、△8時間44分)

中原十六世名人は矢倉を得意とする重厚な棋風だったが、30代後半から、急戦調の将棋に新境地を開いた。
そのうちのひとつが中原流相掛かりで、おもに飛車桂だけで相手を攻略する。
本局、▲3五歩と突き捨てて▲4五桂と跳ね、▲5六飛(第1図)と回ったのが、中原十六世名人にしか指せない構想。その10手後に▲6五桂(第2図)と跳ね、将棋を覚えたての子供が指すような痛快な局面が現れた。
左桂を成り捨て竜を作り、▲1二歩から▲3四角が決め手。次の▲2二歩成~▲1二角成が受からない。
谷川名人は△5五角から攻め合ったが、やはり▲2二歩成から▲1二角成が厳しく、▲5六香まで中原十六世名人の勝ち、名人奪取となった。
本局、桂使いの名手といわれる十六世名人の長所が随所に出た、紛れもない名局と思う。
コメント
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