飲み物やつまみを持ってくるお嬢さんは気さくで、
「ワタシ将棋できないんですよねー」
「負けちゃいましたか?」
と軽口を挟んでくれる。お陰様で、こちらも気兼ねなく将棋が指せる。
ここで対局者が入れ替わる。今度はKun―Tod戦(二枚落ち)、Hos―Ok戦(平手)である。宴会将棋の主催者であるHon氏はまだ指さず、「ヒトの将棋を見てるほうが楽しい」とニコニコしている。その気持ちは、分かる。
Kun氏は「二枚落ちの定跡知らないんだよね」とつぶやき、△5二金~△6四歩~△6五歩と、斬新な指し手を見せる。
考えたら、何も△5四歩~△5三銀と指す理由はないわけで、上手にも指し手の自由はあるのだ。
Hos―Ok戦は本日2戦目。1局目と同じ、石田流対居飛車となった。
Ok氏、前局は序盤に▲7八銀と上がったため、その後銀の活用に苦労した。本局は▲6八銀~▲5七銀と修正してきたが、また▲6六銀と上がり、やっぱり指しにくくしてしまった。
前局、ここでHos氏は△6五歩と指し、Ok氏の応手如何では指しづらくするところだった。本局は△4五歩と位を取り、しっかり修正してきた。その後も着々と囲いを盛り上げ、戦わずして大作戦勝ちとなった。
Kun―Tod戦は、Tod氏が振り飛車に構えたが、左の金銀が4段目に上がり、それがのびのびとした好形になっている。
「でもTodさんはここからなんですよねえ」
と、植山七段はまだ悲観的だ。
Tod氏は▲3六歩から▲3七飛と構え、▲3五歩。奔放な指し回しで、プロみたいだ。もっともTod氏、よく考えたら、血筋はピカ一なのだ。ところが…。
上手・7六金、8五歩。下手・8七歩、9七角…の局面で、Kun氏は△8六歩。これをTod氏が▲同角と取ったため、△同金▲同歩に△7八角と金桂両取りに打たれ、一遍に下手が劣勢に陥ってしまった。せっかくの▲3五歩も、ボケてしまった。植山七段と私は、ガッカリするばかりだ。
Hos―Ok戦は、Hos氏優勢。しかしOk氏も、簡単に土俵を割らない。▲2六角と覗いた。
第1図以下の指し手。△4六桂▲4四角△同金▲5三銀△4三金引▲4二銀成△同金▲4四桂△3三玉▲3二金△2四玉▲3七桂△6四角▲2五銀△1三玉▲4二竜△3八桂成▲同金△3七角成▲同金△3九銀(第2図)
私は何かつまみを頼みたいが、将棋がどちらも熱戦なので、ついそちらを見てしまう。
Ok氏の狙いは▲4四角△同金▲5三銀で、これが実現すれば、逆転である。しかしHos氏は△4六桂。ちょっと危機感がなかった。
Ok氏は狙いの順を敢行し、事の重大さに気づいたHos氏だったが、やや遅かった。△4六桂では、△5五角として△4四金にヒモをつけ、その後△4六桂とすれば必勝だった(植山七段)。
ところが本譜、Ok氏が▲3七桂と跳ねたのが先の読みすぎで、ここはふつうに▲4二竜と金を取るべきだった。この竜は後の△6四角で取られてしまうが、その瞬間に後手玉を寄せてよい。
ところがところが、ここでHos氏が△6四角と打ったため、先の理想手順に合流。また先手の勝ちになった。
窮したHos氏は△3七角成と突撃し、△3九銀。
第2図以下の指し手。▲1八玉△2六桂▲同歩△2九角▲2七玉(第3図)
△3九銀には▲同玉△4八銀▲2九玉で先手の勝ちだったが、Ok氏は▲1八玉と逃げてしまう。先の一公―Tod戦とはレベルが違うが、どうも級位者は、終盤の急所で間違える。
Hos氏は△2六桂。植山七段が「複雑な詰まし方に行きましたねー」と言った。
終局後の解説では、ここで△1七金があった。以下▲同玉△2八銀▲2六玉△3七銀不成▲同玉△5九角…。先に書いた「△1七X▲同玉△2八銀」の筋は、ここでも活きているわけだ。
ともあれ△2六桂~△2九角。▲2七玉(第3図)に、先手玉は詰むのだろうか?
(つづく)
「ワタシ将棋できないんですよねー」
「負けちゃいましたか?」
と軽口を挟んでくれる。お陰様で、こちらも気兼ねなく将棋が指せる。
ここで対局者が入れ替わる。今度はKun―Tod戦(二枚落ち)、Hos―Ok戦(平手)である。宴会将棋の主催者であるHon氏はまだ指さず、「ヒトの将棋を見てるほうが楽しい」とニコニコしている。その気持ちは、分かる。
Kun氏は「二枚落ちの定跡知らないんだよね」とつぶやき、△5二金~△6四歩~△6五歩と、斬新な指し手を見せる。
考えたら、何も△5四歩~△5三銀と指す理由はないわけで、上手にも指し手の自由はあるのだ。
Hos―Ok戦は本日2戦目。1局目と同じ、石田流対居飛車となった。
Ok氏、前局は序盤に▲7八銀と上がったため、その後銀の活用に苦労した。本局は▲6八銀~▲5七銀と修正してきたが、また▲6六銀と上がり、やっぱり指しにくくしてしまった。
前局、ここでHos氏は△6五歩と指し、Ok氏の応手如何では指しづらくするところだった。本局は△4五歩と位を取り、しっかり修正してきた。その後も着々と囲いを盛り上げ、戦わずして大作戦勝ちとなった。
Kun―Tod戦は、Tod氏が振り飛車に構えたが、左の金銀が4段目に上がり、それがのびのびとした好形になっている。
「でもTodさんはここからなんですよねえ」
と、植山七段はまだ悲観的だ。
Tod氏は▲3六歩から▲3七飛と構え、▲3五歩。奔放な指し回しで、プロみたいだ。もっともTod氏、よく考えたら、血筋はピカ一なのだ。ところが…。
上手・7六金、8五歩。下手・8七歩、9七角…の局面で、Kun氏は△8六歩。これをTod氏が▲同角と取ったため、△同金▲同歩に△7八角と金桂両取りに打たれ、一遍に下手が劣勢に陥ってしまった。せっかくの▲3五歩も、ボケてしまった。植山七段と私は、ガッカリするばかりだ。
Hos―Ok戦は、Hos氏優勢。しかしOk氏も、簡単に土俵を割らない。▲2六角と覗いた。
第1図以下の指し手。△4六桂▲4四角△同金▲5三銀△4三金引▲4二銀成△同金▲4四桂△3三玉▲3二金△2四玉▲3七桂△6四角▲2五銀△1三玉▲4二竜△3八桂成▲同金△3七角成▲同金△3九銀(第2図)
私は何かつまみを頼みたいが、将棋がどちらも熱戦なので、ついそちらを見てしまう。
Ok氏の狙いは▲4四角△同金▲5三銀で、これが実現すれば、逆転である。しかしHos氏は△4六桂。ちょっと危機感がなかった。
Ok氏は狙いの順を敢行し、事の重大さに気づいたHos氏だったが、やや遅かった。△4六桂では、△5五角として△4四金にヒモをつけ、その後△4六桂とすれば必勝だった(植山七段)。
ところが本譜、Ok氏が▲3七桂と跳ねたのが先の読みすぎで、ここはふつうに▲4二竜と金を取るべきだった。この竜は後の△6四角で取られてしまうが、その瞬間に後手玉を寄せてよい。
ところがところが、ここでHos氏が△6四角と打ったため、先の理想手順に合流。また先手の勝ちになった。
窮したHos氏は△3七角成と突撃し、△3九銀。
第2図以下の指し手。▲1八玉△2六桂▲同歩△2九角▲2七玉(第3図)
△3九銀には▲同玉△4八銀▲2九玉で先手の勝ちだったが、Ok氏は▲1八玉と逃げてしまう。先の一公―Tod戦とはレベルが違うが、どうも級位者は、終盤の急所で間違える。
Hos氏は△2六桂。植山七段が「複雑な詰まし方に行きましたねー」と言った。
終局後の解説では、ここで△1七金があった。以下▲同玉△2八銀▲2六玉△3七銀不成▲同玉△5九角…。先に書いた「△1七X▲同玉△2八銀」の筋は、ここでも活きているわけだ。
ともあれ△2六桂~△2九角。▲2七玉(第3図)に、先手玉は詰むのだろうか?
(つづく)