
第2図から上手玉には、▲3三歩成△同玉▲3四歩△同玉▲3五歩△2三玉▲3四銀以下の詰みがある。13手詰だが、ふつうに王手をするだけで、自然に詰む。まあ即詰みにしないまでも、下手はとりあえず▲3三歩成と金を取りそうなものだ。
ところが…。
第2図以下の指し手。▲2二銀△3四金▲4七銀△5五香▲5六銀△同香▲同飛△5三歩▲5五香△4一桂▲同金△同銀▲5三香成△3二玉▲1三銀成△同香▲6一馬△5二歩▲同成香△4五金▲3三歩(第3図)
中終盤の忙しい時、盤の隅に銀を打ち、桂香を取って満足することを「Tod」という。
ここでTod氏は▲2二銀と打った。さすが本家という驚愕の一手で、私は1秒も考えなかった。いったいTod氏はどういう思考回路になっているのか、皆目見当がつかない。私はもちろん△3四金と逃げる。しかし私の持駒は桂香でまだ劣勢。これで上手玉を攻略できるとは思えない。
△5五香には、「弱気がいけないんだな」と▲5六銀と、頭突きにでた。Tod氏は弱気になったり強気になったりで、私は頭が混乱するばかりだ。
それでも△4五金と飛車取りに出て上手が面白くなったんじゃないか、と思ったら、▲3三歩の手裏剣が飛んできた。

第3図以下の指し手。△2三玉▲7六飛△7五歩▲8六飛△8五歩▲6六飛△5五銀▲4七桂△6六銀▲3五桂打△1二玉▲6六歩△5八飛▲4八歩△5七銀▲4九銀△7八飛成▲4一成香△4八銀成▲同銀△2八金▲同玉△4八竜▲3八金打△3九銀(第4図)
Kun―Ok戦は、Ok氏が意外に頑張っている。やや指し切り気味ではあるが、Kun玉を△4四に引っ張り出しているのが望みだ。Ok氏は竜が健在で、まだ勝負の行方は分からない。
「静かですね」
とKun氏。
確かにそうで、「宴会」なのに、みんなちっとも騒いでない。このピリピリ感は、将棋道場のそれである。
「宴会将棋なのにね」
と私が返し、室内が爆笑となった。ちょっと、ジョナ研の雰囲気を思い出した。
局面。▲3三歩がなかなか厳しい手で、▲2二銀を指した同じ人物の手とは思えない。△3三同玉は▲5一馬がイヤらしいので、私は△2三玉。しかしイヤな形になった。
Tod氏は飛車を横に逃げ、私は△7五歩~△8五歩。細かいところだが、ここで2歩を使わされたのは痛かった。このあたり、Tod氏は自覚してないが、いい手を連発している。
私は△5五銀の勝負手。▲6三飛成なら△4六銀打で、一手勝っていると思った。
Tod氏は▲4七桂から▲3五桂打。その間に私は飛車を取り、だいぶ楽しみが出ているが、ここは△3四玉と上に逃げるべきだったか。しかし▲4一成香が次の▲4三馬を見て幸便で、指し切れなかった。
私は△5八飛と打ったが、▲4八歩から▲4九銀と受けられて、意外に寄せがない。私は△7八飛成と金を取ったが、これでは不本意である。1歩あれば△3六歩で終わっているのだが、歩切れが痛い。
▲4一成香にうまい詰めろがかからず、私は不詰めを承知で、△4八銀成と突撃した(註:読者からの指摘で、下手玉には即詰みがあった)。
△3九銀に、Tod氏の応手は。

第4図以下の指し手。▲1七玉△2八銀打
まで、一公の勝ち。
「ここで▲1八玉は…。あ、そっかあ!!」
と一人納得して、Tod氏は▲1七玉。
あーあ、やっちまったよ。私は何とも言えない気持ちで、△2八銀と打った。
ここでTod氏が投了したが、私は全然勝った気がしない。△2八銀と打たれてすぐ投了するなら、なんで▲1七玉と上がったんだよ。▲1八玉と寄って、上手がどう指すか見届ければよかったじゃないか。いやそもそも△3九銀と打たれた時は、ほぼ▲1八玉と寄るのが正しい。そこで後手は△1七Xと捨て駒をし、1七玉の形にするのだ。
言うまでもないが、▲1七玉では▲1八玉で、Tod氏の勝ちだった。私はTodワールドにかき回されっ放しで、もう訳が分からなかった。
右のKun―Ok戦は、何とOk氏の勝ち! Ok氏の将棋は荒削りだが、強くなる素養がある。勉強熱心だし、これからが楽しみだ。
(つづく)