二次会は新宿通り沿いビルの地下にある居酒屋である。以前も入ったことがあり、ここが定番のようだ。
奥の部屋が予約席のようだ。左右にテーブルが設えられてあり、それぞれ10人が座れる。右テーブルの奥には木村晋介会長と西上心太氏が先着していた。Tag氏の姿もある。こちらがメインになりそうだが、Ohh氏は気兼ねなくタバコを吸いたいようで、左の席に着いた。私も同じく、左のテーブルの席に着いた。
飲み放題メニューで、会費は3,000円。私は勝手に生ビールを頼んだ。一人乾杯となる。
しばらくして、Kob氏、Kan氏、Shim氏(違うかもしれない)が左の席に着いた、みな飲み物を頼み、左のテーブルが改めて乾杯となった。
私は長年の将棋ペンクラブ会員だが、人見知りなので、ほかの会員とは意外に話したことがない。今回も黙っていたら、ハス向かいのKob氏が話しかけてきた。しかしその声がボソボソと小さく、よく聞き取れない。先日の聴力検査では、低音の聞き取りがやや劣っていたが、これは氏の声が小さすぎるのだと考えることにした。私は適当に相槌を打つのみだ。
しばらくして、加賀さやかさんが私の向かいに座った。マルチライター・加賀さやかさんは年齢不詳で、捉えどころがない。そのさやかさんが先年結婚したのは、こういう俗事とは対極にあるひとだと思っていたので、意外だった。
つまみはちょこちょこ運ばれてくるが、みな贈呈式で飲み食いしてしまったので、箸の進みが遅い。私もつまんでいるが、けっこう残っている。
木村会長が退席し、さやかさんが右のテーブルに移って、星野氏とMik氏がこちらの席に来た。
どちらもペンクラブの幹事で、両氏なくして現在のペンクラブはない、というくらいものである。
星野氏はOhh氏と将棋を始めた。駒はShim氏所蔵のものだ。
振り返れば、右のテーブルは満席だ。だが、今年の入賞者の姿はなかった。
私はMik氏と話す。
「私が二次選考委員をやらせてもらって、一次選考を抜けた観戦記を読ませてもらうわけじゃないですか」
私は語る。「あれはいわば、年間ベスト観戦記のアンソロジーですよね。しかもそれを読めるのは、二次選考委員と数名しかいない。プロ棋士も読めない。これはすごく贅沢なことだと思います。ありがたいです」
「ふむふむ」
「だからどれも面白くて、とても優劣なんか付けられないですよ。涙を飲んで採点してます」
「ふむ。でもねえ、これが不思議なことにねえ、二次選考委員の意見を総合すると、こういう感じになるんですよ」
と、Mik氏は山の形を作った。「やっぱりいい作品が上位に来る。だから今回も最終選考に上げる作品は迷わなかった。選考委員の眼力はすごいねえ」
これは書いてもいいと思うのだが、Mik氏が技術部門優秀賞の村山慈明七段に連絡を取った時、電話口で村山七段が
「大賞は誰ですか?」
と問うたという。さすが勝負師、と思わせるエピソードだと思う。
星野―Ohh戦は、金3枚の防波堤が堅固で、Ohh氏が優勢。面白いのは、盤上の「馬」が赤字に塗られていること。さらに、「左馬」だった。
それを指摘すると、Shim氏がえらく感激してくれた。
「…? 一目で分かると思いますが」
「いやいや何局指しても分からない人がいるのよ」
「…左馬なの? 私気付かなかった」
と、これはOhh氏。ちょっと問題発言で、Ohh氏は駒師なのだ。

盤上では、Ohh氏が決めに出た。すなわち、▲7四馬△同歩▲6三桂である。
ここで星野氏がお手洗いへ立つ。が、そこで黙っている私たちではない。ついその先を検討してしまう。私は△7二金▲6一飛成△7一香▲6二銀を読む。Ohh氏は▲6一飛成で▲6一銀の読み筋を披露した、なるほどこの攻めも鋭い。
しかし戻ってきた星野氏は、△7五歩。▲7一桂成を待って投了した。
感想戦が終わると、閉店の11時にならんとしていた。これで散会である。
かくして、今年も将棋ペンクラブ贈呈式が終わった。が、すでに来年度への選考は始まっている。来年の大賞に輝く作品はどうなるだろう。今から楽しみである。
奥の部屋が予約席のようだ。左右にテーブルが設えられてあり、それぞれ10人が座れる。右テーブルの奥には木村晋介会長と西上心太氏が先着していた。Tag氏の姿もある。こちらがメインになりそうだが、Ohh氏は気兼ねなくタバコを吸いたいようで、左の席に着いた。私も同じく、左のテーブルの席に着いた。
飲み放題メニューで、会費は3,000円。私は勝手に生ビールを頼んだ。一人乾杯となる。
しばらくして、Kob氏、Kan氏、Shim氏(違うかもしれない)が左の席に着いた、みな飲み物を頼み、左のテーブルが改めて乾杯となった。
私は長年の将棋ペンクラブ会員だが、人見知りなので、ほかの会員とは意外に話したことがない。今回も黙っていたら、ハス向かいのKob氏が話しかけてきた。しかしその声がボソボソと小さく、よく聞き取れない。先日の聴力検査では、低音の聞き取りがやや劣っていたが、これは氏の声が小さすぎるのだと考えることにした。私は適当に相槌を打つのみだ。
しばらくして、加賀さやかさんが私の向かいに座った。マルチライター・加賀さやかさんは年齢不詳で、捉えどころがない。そのさやかさんが先年結婚したのは、こういう俗事とは対極にあるひとだと思っていたので、意外だった。
つまみはちょこちょこ運ばれてくるが、みな贈呈式で飲み食いしてしまったので、箸の進みが遅い。私もつまんでいるが、けっこう残っている。
木村会長が退席し、さやかさんが右のテーブルに移って、星野氏とMik氏がこちらの席に来た。
どちらもペンクラブの幹事で、両氏なくして現在のペンクラブはない、というくらいものである。
星野氏はOhh氏と将棋を始めた。駒はShim氏所蔵のものだ。
振り返れば、右のテーブルは満席だ。だが、今年の入賞者の姿はなかった。
私はMik氏と話す。
「私が二次選考委員をやらせてもらって、一次選考を抜けた観戦記を読ませてもらうわけじゃないですか」
私は語る。「あれはいわば、年間ベスト観戦記のアンソロジーですよね。しかもそれを読めるのは、二次選考委員と数名しかいない。プロ棋士も読めない。これはすごく贅沢なことだと思います。ありがたいです」
「ふむふむ」
「だからどれも面白くて、とても優劣なんか付けられないですよ。涙を飲んで採点してます」
「ふむ。でもねえ、これが不思議なことにねえ、二次選考委員の意見を総合すると、こういう感じになるんですよ」
と、Mik氏は山の形を作った。「やっぱりいい作品が上位に来る。だから今回も最終選考に上げる作品は迷わなかった。選考委員の眼力はすごいねえ」
これは書いてもいいと思うのだが、Mik氏が技術部門優秀賞の村山慈明七段に連絡を取った時、電話口で村山七段が
「大賞は誰ですか?」
と問うたという。さすが勝負師、と思わせるエピソードだと思う。
星野―Ohh戦は、金3枚の防波堤が堅固で、Ohh氏が優勢。面白いのは、盤上の「馬」が赤字に塗られていること。さらに、「左馬」だった。
それを指摘すると、Shim氏がえらく感激してくれた。
「…? 一目で分かると思いますが」
「いやいや何局指しても分からない人がいるのよ」
「…左馬なの? 私気付かなかった」
と、これはOhh氏。ちょっと問題発言で、Ohh氏は駒師なのだ。

盤上では、Ohh氏が決めに出た。すなわち、▲7四馬△同歩▲6三桂である。
ここで星野氏がお手洗いへ立つ。が、そこで黙っている私たちではない。ついその先を検討してしまう。私は△7二金▲6一飛成△7一香▲6二銀を読む。Ohh氏は▲6一飛成で▲6一銀の読み筋を披露した、なるほどこの攻めも鋭い。
しかし戻ってきた星野氏は、△7五歩。▲7一桂成を待って投了した。
感想戦が終わると、閉店の11時にならんとしていた。これで散会である。
かくして、今年も将棋ペンクラブ贈呈式が終わった。が、すでに来年度への選考は始まっている。来年の大賞に輝く作品はどうなるだろう。今から楽しみである。