また盗まれる

６日の朝、オフクロが「赤くなってた桃を盗まれた」と言った。前夜、わずかになっていた庭の桃の実を、誰かにすべて盗まれたらしい。
やれやれ、である。ウチの桃が盗まれるのはもはや年中行事だが、今年もやられた。
そして犯人の人種は分かっている。誤解を恐れずに書けば、アジア系外国人だと思う。
７年前の深夜２時20分ごろ桃を盗まれたとき、私は炊事場から犯人を見たのだが、塀の上に乗っていた男は上半身裸で、坊主姿だった。日本人なら、深夜の街を上半身裸でうろうろしない。それに日本人は潔癖症だから、どんなバイ菌が混じっているかもしれないその辺の実をもいでいかない。
その時の話だが、その日は夜の９時ごろから、私は庭に人の気配を感じていたのだ。枝が折れる音が頻繁にしていた。だが私は怖くて、出て行けなかった。気のせいだと思い込もうとしていた。どうしてあの時、表へ出なかったのか。いまでも後悔している。今思えば、犯人は何個かもいで食し、桃が甘かったのだと思う。それで犯人は夜中に再度盗みに来た。
後日、たまたま警官が来たからこの時のことを言うと、「それは（警察も捜査するから）ちゃんと言ってください」と言われた。
だが警察が無能なのを私は知っている。警官は「見回りを強化します」と言ったが、その後も毎年のように実を盗まれている。

現在、ウチのナナメ向かいにあるマンションは、アジア系外国人用の賃貸マンションである。以前はJR東海の女子社員寮だったが、いつの間にか住人が変わってしまった。
そしてウチの近くには、韓国人の日本語学校が２つある。彼らの誰かが盗んだ、と考えるのはおかしいだろうか。
ただ今年の桃は、まだ熟していなかった。オフクロは、桃が色づいてきたものの、まだ固い桃をもいでも美味しくないのに、というのだ。とすると、単なる嫌がらせの可能性もある。それはそれで厄介である。
ヒトが思わぬところから妬み、恨みを買っているケースは少なくない。だけど、ウチの両親が近所から恨まれるかなあ。
７年前の事件があってから、オフクロは桃泥棒に恐れおののき、桃の枝をバカみたいに伐採した。それで、天高くそびえていた木が、虎刈りになってしまった。桃は傷に弱い。やたらめったら伐ればそこからバイ菌が入って、枯れる元になる。ウチの桃も例外ではなく、現在は３分の２以上が枯死してしまった。結果、わずかに実った桃も手の届く範囲になった。これでは泥棒に盗んでくれと言っているようなものだった。
しかしこれ、何とかならないものだろうか。だけど、庭の果樹１本のために防犯カメラを仕掛けていたら割に合わないし、仮に捕まえたところで、報復されるのがオチだ。
「もう、桃は花を見るだけだね」とオフクロは言った。さんざん枝を伐って半分枯らしといてその言葉もないと思うが、まあ私も賛同する。
とにかく打つ手がなく、悔しい。