2007年3月、千葉県で英国人女性を殺害した容疑者が、10日、逮捕された。容疑者宅での職務質問をすりぬけて、2年7ヶ月以上も逃亡したすえの結末だった。
逃亡中この容疑者は名古屋で整形手術を受けており、その資金がどこから出たのか、不可解な点があった。あるワイドショーではコメンテーターが、男性相手に体を売っているのでは、とスットコドッコイな推理を展開していた。実際は、この容疑者は大阪の建設会社に住み込み、地道に働いて収入を得ていたのだ。
それにしても人を殺めるとは、愚かなことをしたと思う。殺人の時効は25年である。毎日毎日人の目にビクビクして、目立つことなく四半世紀も逃げ切ることなど、到底できるものではない。
人が殺人を犯すとき、その人間は冷静ではないのだろう。行為のあとで、愚かなことをしたと、ハッと我に返る。鬼から人間に戻る。この容疑者は犯行後、資金ほしさにコツコツと働いていた。容疑者は根が真面目だったのだろう、とまでは言わないが、そんなに規則正しい生活が送れたのなら、この愚行の前に、一瞬だけ人間に戻ってほしかった。しかしもう遅い。容疑者は、たいへんな手順前後をしてしまった。
彼が被害者に手をかける前、その後の自分をシミュレーションする冷静さがあれば、こんな惨劇は起こらなかったと思うと、やりきれない。
将棋でも似たようなことが起こる。悪手は悪手を呼ぶというが、誰でも分かるカンタンな寄せを逃がし、頭がアツくなって、また疑問手を指すことがある。
先日も記したが、着手する前に、本当にその手でいいのか、全局を隈なく見る余裕、冷静さがあれば、この類の悪手は出ないはずである。
もしこの手を指したら、次はどういう展開になるのだろう…。着手せずに、頭の中で先へ先へと考える。こうした将棋の考え方は、人の生き方全般に応用が利くと思う。私が、将棋がただのゲームではないと考えるゆえんである。
今回の事件で、被害に遭われた方のご冥福を、心よりお祈りいたします。