日付変わってきょう7月26日は、大山康晴十五世名人の命日である。
いまから22年前のその日、私は北海道を旅行中で、旭川から自宅に電話をしたとき、オヤジから訃報を聞いた。
将棋界は偉大な父を失った。あの日から現在まで、日本将棋連盟は、大山十五世名人の抜けた穴を、埋め切れていない。
きょうは「大山の名局」の3回目をお届けする。
対局相手は大野源一九段。言わずと知れた大山十五世名人の兄弟子である。
大野九段といえば「振り飛車」で、その捌きは芸術的なまでに絶品だった。この域まで達した振り飛車の使い手は、久保利明九段の出現まで待たなければならなかった。
昭和43年4月11日
第16回王座戦 本戦1回戦
先手:八段 大野源一
後手:名人 大山康晴
▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩▲5七銀△4二玉▲6八飛△3二玉▲4八玉△5二金▲3八銀△4二銀▲3九玉△8五歩▲7七角△7四歩
▲2八玉△1四歩▲1六歩△5三銀▲7八金△4二金▲6七金△6四歩▲5八飛△9四歩▲4六銀△4四銀▲3六歩△5三銀▲2六歩△6二飛▲8八飛△7三桂▲7八飛△6五歩
▲同歩△同飛▲6六角△6一飛▲7五歩△4五銀▲2二角成△同玉▲6六角△同飛▲同金△4六銀▲同歩△5七角▲6一飛△3二金▲6七金△4六角成▲3七銀打△2四馬
▲7四歩△3五歩▲7三歩成△3六歩▲同銀△6九角▲2五銀△7八角成▲2四銀△同歩▲3四桂△3三玉▲2一飛成△6七馬▲3六桂△3五銀▲2二桂成△同金▲3四歩△同玉
▲2二竜△3六銀▲2三角△4四玉▲4五歩△同銀▲同角成△同玉▲4七銀打△3六桂▲同銀△5六玉▲5二竜△6四角▲3七歩△7九飛▲5八金打△8九馬▲5七金打△6五玉
▲6七金上△7三竜▲6六金直△7四玉▲6五桂△6二竜▲5三桂成△同角▲6二竜△同角▲6一飛△7一金▲1一飛成△8三桂▲4一竜△5一桂▲5二竜△6三銀▲6二竜△同金
▲4二角△5二飛▲7六香△8四玉▲7五金△9三玉▲8四銀△9二玉▲6四金△4二飛▲7三香成△7二銀▲6二成香△同飛▲9三金△8一玉▲7三金△同銀▲同銀成△9三香
▲6二成銀△7九飛▲6一飛△7一歩▲5一飛成△8四角▲7二銀△9二玉▲7一竜△8二金▲7五歩△同竜▲9六桂△6二角▲同竜△7三銀▲6一竜△9一金▲5三角△7四竜
▲7一角成△8一香▲6三銀成△9五歩▲7三成銀△同竜▲6二馬△9六歩▲7三馬△同金▲6二銀△7二銀▲5一竜△9九馬▲3二飛△8二角▲7三銀成△同銀▲7二金△6二歩
▲7三金△同角▲7四銀△8二銀▲7三銀成△同銀▲9六歩△5五馬▲7二歩△4四香▲7一歩成△4九香成▲同銀△4四桂▲7二角△8二金打▲5四角成△同馬▲同竜△7六角
▲4五竜△7四歩▲7九香△3六桂▲同歩△4四歩▲7六香△4五歩▲7四香△7八飛▲3八角△3九銀▲同玉△2七銀▲5八歩△2八金▲4八玉△3八銀成▲同銀△3九角
▲4七玉△5七角成▲同玉△7四飛成
まで、224手で大山名人の勝ち。
大野八段は▲5七銀型四間飛車。Hon氏みたいである。対する大山名人は、珍しいことに△5三銀左戦法。
振り飛車はあっちこっちに飛車を動かすのが信条だから、大野八段も5八~8八~7八と、めまぐるしく飛車を回す。
大山名人、大野八段の猛攻に玉を中段まで引っ張り出されるが、△3六桂の捨て駒から△5六玉とスルリと逃げたのが妙味。
それでも110手目の局面は、大山陣の守りは角一枚。ふつうは居飛車ダメとしたものだが、大山名人は巧妙に囲いを再構築し、なおも大野の攻め、大山の受けが延々と続く。
これは居飛車受けなし、と思われる局面も、大山名人は絶妙の受けでしのぐ。このあたりは両者の持ち味が存分に出て、まさにゼニの取れる将棋だ。
受けてばかりでは勝てない。大山名人は寸隙を縫って、大野美濃を崩す。さすがに美濃崩しの急所を熟知している感じだ。
最後は大山名人が飛車で香車を取り、「根負けした…」と大野八段がつぶやいたかどうかは知らぬが、無念の投了。224手の長手数だった。気が付けば大山陣は、金銀3枚に竜まで付いていた。
これぞ大山将棋、という粘り勝ちだったといえよう。
いまから22年前のその日、私は北海道を旅行中で、旭川から自宅に電話をしたとき、オヤジから訃報を聞いた。
将棋界は偉大な父を失った。あの日から現在まで、日本将棋連盟は、大山十五世名人の抜けた穴を、埋め切れていない。
きょうは「大山の名局」の3回目をお届けする。
対局相手は大野源一九段。言わずと知れた大山十五世名人の兄弟子である。
大野九段といえば「振り飛車」で、その捌きは芸術的なまでに絶品だった。この域まで達した振り飛車の使い手は、久保利明九段の出現まで待たなければならなかった。
昭和43年4月11日
第16回王座戦 本戦1回戦
先手:八段 大野源一
後手:名人 大山康晴
▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩▲5七銀△4二玉▲6八飛△3二玉▲4八玉△5二金▲3八銀△4二銀▲3九玉△8五歩▲7七角△7四歩
▲2八玉△1四歩▲1六歩△5三銀▲7八金△4二金▲6七金△6四歩▲5八飛△9四歩▲4六銀△4四銀▲3六歩△5三銀▲2六歩△6二飛▲8八飛△7三桂▲7八飛△6五歩
▲同歩△同飛▲6六角△6一飛▲7五歩△4五銀▲2二角成△同玉▲6六角△同飛▲同金△4六銀▲同歩△5七角▲6一飛△3二金▲6七金△4六角成▲3七銀打△2四馬
▲7四歩△3五歩▲7三歩成△3六歩▲同銀△6九角▲2五銀△7八角成▲2四銀△同歩▲3四桂△3三玉▲2一飛成△6七馬▲3六桂△3五銀▲2二桂成△同金▲3四歩△同玉
▲2二竜△3六銀▲2三角△4四玉▲4五歩△同銀▲同角成△同玉▲4七銀打△3六桂▲同銀△5六玉▲5二竜△6四角▲3七歩△7九飛▲5八金打△8九馬▲5七金打△6五玉
▲6七金上△7三竜▲6六金直△7四玉▲6五桂△6二竜▲5三桂成△同角▲6二竜△同角▲6一飛△7一金▲1一飛成△8三桂▲4一竜△5一桂▲5二竜△6三銀▲6二竜△同金
▲4二角△5二飛▲7六香△8四玉▲7五金△9三玉▲8四銀△9二玉▲6四金△4二飛▲7三香成△7二銀▲6二成香△同飛▲9三金△8一玉▲7三金△同銀▲同銀成△9三香
▲6二成銀△7九飛▲6一飛△7一歩▲5一飛成△8四角▲7二銀△9二玉▲7一竜△8二金▲7五歩△同竜▲9六桂△6二角▲同竜△7三銀▲6一竜△9一金▲5三角△7四竜
▲7一角成△8一香▲6三銀成△9五歩▲7三成銀△同竜▲6二馬△9六歩▲7三馬△同金▲6二銀△7二銀▲5一竜△9九馬▲3二飛△8二角▲7三銀成△同銀▲7二金△6二歩
▲7三金△同角▲7四銀△8二銀▲7三銀成△同銀▲9六歩△5五馬▲7二歩△4四香▲7一歩成△4九香成▲同銀△4四桂▲7二角△8二金打▲5四角成△同馬▲同竜△7六角
▲4五竜△7四歩▲7九香△3六桂▲同歩△4四歩▲7六香△4五歩▲7四香△7八飛▲3八角△3九銀▲同玉△2七銀▲5八歩△2八金▲4八玉△3八銀成▲同銀△3九角
▲4七玉△5七角成▲同玉△7四飛成
まで、224手で大山名人の勝ち。
大野八段は▲5七銀型四間飛車。Hon氏みたいである。対する大山名人は、珍しいことに△5三銀左戦法。
振り飛車はあっちこっちに飛車を動かすのが信条だから、大野八段も5八~8八~7八と、めまぐるしく飛車を回す。
大山名人、大野八段の猛攻に玉を中段まで引っ張り出されるが、△3六桂の捨て駒から△5六玉とスルリと逃げたのが妙味。
それでも110手目の局面は、大山陣の守りは角一枚。ふつうは居飛車ダメとしたものだが、大山名人は巧妙に囲いを再構築し、なおも大野の攻め、大山の受けが延々と続く。
これは居飛車受けなし、と思われる局面も、大山名人は絶妙の受けでしのぐ。このあたりは両者の持ち味が存分に出て、まさにゼニの取れる将棋だ。
受けてばかりでは勝てない。大山名人は寸隙を縫って、大野美濃を崩す。さすがに美濃崩しの急所を熟知している感じだ。
最後は大山名人が飛車で香車を取り、「根負けした…」と大野八段がつぶやいたかどうかは知らぬが、無念の投了。224手の長手数だった。気が付けば大山陣は、金銀3枚に竜まで付いていた。
これぞ大山将棋、という粘り勝ちだったといえよう。