一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

大山の名局・3

2014-07-26 02:43:24 | 名局
日付変わってきょう7月26日は、大山康晴十五世名人の命日である。
いまから22年前のその日、私は北海道を旅行中で、旭川から自宅に電話をしたとき、オヤジから訃報を聞いた。
将棋界は偉大な父を失った。あの日から現在まで、日本将棋連盟は、大山十五世名人の抜けた穴を、埋め切れていない。

きょうは「大山の名局」の3回目をお届けする。
対局相手は大野源一九段。言わずと知れた大山十五世名人の兄弟子である。
大野九段といえば「振り飛車」で、その捌きは芸術的なまでに絶品だった。この域まで達した振り飛車の使い手は、久保利明九段の出現まで待たなければならなかった。

昭和43年4月11日
第16回王座戦 本戦1回戦
先手:八段 大野源一
後手:名人 大山康晴

▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩▲5七銀△4二玉▲6八飛△3二玉▲4八玉△5二金▲3八銀△4二銀▲3九玉△8五歩▲7七角△7四歩
▲2八玉△1四歩▲1六歩△5三銀▲7八金△4二金▲6七金△6四歩▲5八飛△9四歩▲4六銀△4四銀▲3六歩△5三銀▲2六歩△6二飛▲8八飛△7三桂▲7八飛△6五歩
▲同歩△同飛▲6六角△6一飛▲7五歩△4五銀▲2二角成△同玉▲6六角△同飛▲同金△4六銀▲同歩△5七角▲6一飛△3二金▲6七金△4六角成▲3七銀打△2四馬
▲7四歩△3五歩▲7三歩成△3六歩▲同銀△6九角▲2五銀△7八角成▲2四銀△同歩▲3四桂△3三玉▲2一飛成△6七馬▲3六桂△3五銀▲2二桂成△同金▲3四歩△同玉
▲2二竜△3六銀▲2三角△4四玉▲4五歩△同銀▲同角成△同玉▲4七銀打△3六桂▲同銀△5六玉▲5二竜△6四角▲3七歩△7九飛▲5八金打△8九馬▲5七金打△6五玉

▲6七金上△7三竜▲6六金直△7四玉▲6五桂△6二竜▲5三桂成△同角▲6二竜△同角▲6一飛△7一金▲1一飛成△8三桂▲4一竜△5一桂▲5二竜△6三銀▲6二竜△同金
▲4二角△5二飛▲7六香△8四玉▲7五金△9三玉▲8四銀△9二玉▲6四金△4二飛▲7三香成△7二銀▲6二成香△同飛▲9三金△8一玉▲7三金△同銀▲同銀成△9三香
▲6二成銀△7九飛▲6一飛△7一歩▲5一飛成△8四角▲7二銀△9二玉▲7一竜△8二金▲7五歩△同竜▲9六桂△6二角▲同竜△7三銀▲6一竜△9一金▲5三角△7四竜
▲7一角成△8一香▲6三銀成△9五歩▲7三成銀△同竜▲6二馬△9六歩▲7三馬△同金▲6二銀△7二銀▲5一竜△9九馬▲3二飛△8二角▲7三銀成△同銀▲7二金△6二歩
▲7三金△同角▲7四銀△8二銀▲7三銀成△同銀▲9六歩△5五馬▲7二歩△4四香▲7一歩成△4九香成▲同銀△4四桂▲7二角△8二金打▲5四角成△同馬▲同竜△7六角

▲4五竜△7四歩▲7九香△3六桂▲同歩△4四歩▲7六香△4五歩▲7四香△7八飛▲3八角△3九銀▲同玉△2七銀▲5八歩△2八金▲4八玉△3八銀成▲同銀△3九角
▲4七玉△5七角成▲同玉△7四飛成
まで、224手で大山名人の勝ち。

大野八段は▲5七銀型四間飛車。Hon氏みたいである。対する大山名人は、珍しいことに△5三銀左戦法。
振り飛車はあっちこっちに飛車を動かすのが信条だから、大野八段も5八~8八~7八と、めまぐるしく飛車を回す。
大山名人、大野八段の猛攻に玉を中段まで引っ張り出されるが、△3六桂の捨て駒から△5六玉とスルリと逃げたのが妙味。
それでも110手目の局面は、大山陣の守りは角一枚。ふつうは居飛車ダメとしたものだが、大山名人は巧妙に囲いを再構築し、なおも大野の攻め、大山の受けが延々と続く。
これは居飛車受けなし、と思われる局面も、大山名人は絶妙の受けでしのぐ。このあたりは両者の持ち味が存分に出て、まさにゼニの取れる将棋だ。
受けてばかりでは勝てない。大山名人は寸隙を縫って、大野美濃を崩す。さすがに美濃崩しの急所を熟知している感じだ。
最後は大山名人が飛車で香車を取り、「根負けした…」と大野八段がつぶやいたかどうかは知らぬが、無念の投了。224手の長手数だった。気が付けば大山陣は、金銀3枚に竜まで付いていた。
これぞ大山将棋、という粘り勝ちだったといえよう。
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7月22日の当ブログ検索キーワード、上位20

2014-07-25 00:11:36 | プライベート
24日は将棋の無料中継が6局もあり、充実した1日を過ごすことができた。
中でいちばん感心したのは伊藤能六段×上田初美女流三段戦(朝日オープン)における、伊藤六段の指し手である。フリークラス棋士は、女流棋士をいなすのが本当にうまい。さすが男性プロだと思った。

Gooでは先日から、「アクセス解析」が無料お試し中である。
当ブログにどういう検索キーワードで到達したか、上位20件が発表されているので、きょうは7月22日の分を発表してみよう。

1 大沢一公(9PV)
2 一公(5PV)
3 室谷由紀(4PV)
4 吉野海岸 かっちゃん(3PV)
5 第26回将棋ペンクラブ(2PV)
6 将棋文化検定 問題(2PV)
7 将棋ペンクラブ大賞(2PV)
8 将棋ペンクラブ 三上(2PV)
9 将棋 普及活動(2PV)
10 鎌村ちひろ(2PV)
11 一公の将棋雑記(2PV)
12 一公 将棋(2PV)
13 なんでも鑑定団 アシスタント さとこ(2PV)
14 和田あき 将棋(1PV)
15 和田あき 指導対局(1PV)
16 陽谷駅 タクシー(1PV)
17 峰えりか 引退(1PV)
18 鳩間島 逮捕(1PV)
19 南野陽子知らぬ間に入籍(1PV)
20 渡部愛(1PV)

PV(ページビュー)とは、閲覧したWebページの総数のことなので、訪問者は当然それより少ないと考えられる。当ブログではそもそも訪問者が少ないので、上記20の検索者は、それぞれ1人ないし2人と考えていいと思う。
1位が私のフルネームというのは、当然といえば当然か。しかし私の名前を検索する物好きがいるのだろうか。いるんだなあ。
4位の「吉野海岸 かっちゃん」は、宮古島吉野海岸で駐車場を経営している、かっちゃんのことである。
16位の「陽谷駅 タクシー」は、今年のG.Wの旅行記に登場した「暘谷駅」に絡んでのものだろう。まったく、どこで何が引っ掛かるか分からない。
17位の「峰えりか 引退」は、かつて当ブログで、「松尾香織女流初段は、モデルの峰えりかに似ている」とアップしたことからヒットしたものだ。
19位の南野陽子も、以前関連した記事をアップしたことがある。

私もいろいろ書いているわけだが、どの記事も検索者の欲求を満足させていないことだけは、確かだ。
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第26回将棋ペンクラブ大賞発表

2014-07-24 00:10:29 | 将棋ペンクラブ
きのう、第26回将棋ペンクラブ大賞が発表された。

【観戦記部門】
大賞:
北野新太 第63回NHK杯将棋トーナメント準々決勝 丸山忠久九段×三浦弘行九段(NHK将棋講座)
優秀賞:
湯川恵子 第40期女流名人位戦五番勝負第2局 里見香奈女流名人×中村真梨花女流二段(スポーツ報知)

【文芸部門】
大賞:
天野貴元「オール・イン 実録・奨励会三段リーグ」(宝島社)
優秀賞:
森内俊之「覆す力」(小学館)

【技術部門】
大賞:
森信雄「逃れ将棋」(実業之日本社)
優秀賞:
杉本昌隆「杉本流相振りのセンス」(マイナビ)

観戦記部門大賞は、最終選考に残った5作品から選ばれた。
大賞・北野新太氏のNHK杯観戦記は、冒頭の「ベスト8」の考察や中盤の映画の譬えなど、随所に工夫が凝らしてあり、読ませる。ただ、対局後の描写はややくどく、さらっとまとめてほしかった。
湯川恵子さんの観戦記は、女流将棋のレベルの高さを、青野照市九段や佐藤康光九段の証言を用いることで、自然な形でアピールしている。ネットの大平武洋五段の解説も紹介し、多角的に読める観戦記となっている。
観戦記部門は、第一次選考で21本に絞られた。私は第二次選考委員として、優を8、良を10、可を3とした。心情はどれも優にしたいのだが、それをやったら採点にならない。
第二次選考を通過した5本は、私の採点ではいずれも「優」だったが、私が一推しだった観戦記は最終選考に洩れ、ちょっと複雑な気持ちだった。
上の観戦記2本は、秋発行の「将棋ペン倶楽部」に全文が掲載される。

文芸部門大賞は、天野貴元氏。元奨励会員がその半生を描けば、面白くないわけがない。しかも本書には、癌の闘病記まで絡んでいるのだ。だからこそ逆に評価を割り引いて考えなければいけないが、そんな「邪念」も、はしがきを読んだだけで雲散霧消する。
16歳で奨励会三段に昇段した天野少年は、胸にこうつぶやくのだ。

「早くタイトルを取らなくては……」

もう、この一文からすでに面白い。これは本文を大いに期待してしまうではないか。実際本文も面白く、それは読了まで、独特の緊張感をもって続く。もし本書を2時間ドラマ化するとしたら、忍成修吾主演でお願いしたい。ふたりは容貌がそっくりである。
本書に「他人の不幸は蜜の味」的な面白さがあることは否めないが、筆者が現在も逆境にある状況を考え合わせると、襟を正して読みたくなる、10年に一度の名稿である。
「覆す力」の森内俊之竜王は、ここまでの将棋半生を、素直に回想している。なぜタイトル戦の2日目にカレーを食べるのか、など思わずクスリとするエピソードも満載である。
森内竜王は将棋に対しても、羽生善治名人ら棋士に対しても謙虚だ。ただ、永世名人獲得の一局は、森内竜王の熱い思いがひしひしと伝わってきて、大いに共感した。
以上の2冊は、購入しても損はないと思う。

なお将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、9月19日(金)18時30分から、東京・四ツ谷の「スクワール麹町」で行われる。会費は男性8,000円、女性6,000円。ちょっと会費が高いが、いろいろお楽しみはある。私も伺う予定である。
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女流王座戦本戦1回戦勝敗予想の答え合わせ&挑戦者予想

2014-07-23 00:07:05 | 勝敗予想
女流王座戦本戦トーナメント1回戦は18日までに全局が終わった。当ブログではその勝敗予想をしたので、答え合わせをしてみる。

●本田小百合女流三段―○西山朋佳奨励会初段→正解
西山奨励会初段が勝つとは思ったが、こんな大差になるとは思わなかった。

●甲斐智美女流王位・倉敷藤花―○清水市代女流六段→不正解
清水女流六段が端攻めを逆用して逆転勝ち。底力を見せた。

○中井広恵女流六段―●貞升南女流初段→不正解
貞升女流初段は、中井女流六段に中飛車に振られて、勝手が違ったか。してみると、序盤の△4二銀が軽率だったかもしれない。

●鈴木環那女流二段―○伊藤沙恵奨励会1級→正解
鈴木女流二段もよく指して、おもしろい局面もあったと思うのだが、最後に力尽きた。

○渡辺弥生女流初段―●室谷由紀女流初段→正解
室谷女流初段が優勢だったのに、102手目△2九香成がしくじった。この忙しいときに、なんで桂馬なんか拾っているのか。次の▲6五桂が待望の手で、これで渡辺女流初段がおもしろくなった。渡辺女流初段の落ち着いた指し回しが印象に残った。

●矢内理絵子女流五段―○中村真梨花女流二段→正解
矢内女流五段におもしろい局面があったと思うのだが…。

○香川愛生女流王将―●石本さくらアマ→正解
石本アマは、中盤、無理に動いたのがまずかった。優勢になってからの香川女流王将の指し回しはすごかった。

○加藤桃子女王―●北村桂香女流1級→正解
言っちゃあ悪いが、指導対局だった。

予想の結果は6勝2敗でまずまずだった。
では2回戦から挑戦者決定戦まで、一気に勝敗予想をしよう。

2回戦
○加藤桃子女王―●香川愛生女流王将
タイトル保持者同士の一戦ではあるのだが、やはり奨励会初段に1票を入れざるを得ない。

○中村真梨花女流二段―●渡辺弥生女流初段
中村女流二段が攻めを繋げると思う。

●中井広恵女流六段―○伊藤沙恵奨励会1級
現役奨励会員が、わずかに分がいいと思う。

●清水市代女流六段―○西山朋佳奨励会初段
奨励会初段は強い。

準決勝
○加藤桃子女王―●中村真梨花女流二段
やはり加藤女王が勝つだろう。

○西山朋佳奨励会初段―●伊藤沙恵奨励会1級
伊藤奨励会1級の、飛車先の歩を交換させて銀冠を構築する指し方には、賛同できない。ここは西山奨励会初段の勝ちと予想する。

挑戦者決定戦
●加藤桃子女王―○西山朋佳奨励会初段
分からない。西山奨励会初段の、1回戦での見事な勝ちっぷりに賭けてみよう。

2回戦は24日の中井―伊藤戦からスタートする。ここまでくればあと3勝。皆さま頑張ってください。
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王子ジョナ研7月11日(後編)

2014-07-22 00:51:14 | ジョナ研
▲7六歩△3四歩▲2六歩△3四歩▲4八銀△8五歩▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲9六歩△8二飛▲8七歩△3二金▲2五歩△8八角成▲同銀△2二銀▲2四歩△同歩
▲同飛△2三銀▲2八飛△2四歩▲6八玉△3三桂▲7七銀△9四歩▲3六歩△5二金▲3七銀△1四歩▲4六銀△4四歩▲5六歩△4三金右▲3七桂△4五歩▲同桂△同桂
▲同銀△4四歩(図)

▲6六角△4五歩▲1一角成△2二銀▲2一馬△5四歩▲8六香△8五桂▲2五歩△同歩▲6六銀△4二玉▲2五飛△3一金▲4三馬△同玉▲4五飛△4四歩
▲6五飛△7四角▲2五飛△5六角▲5八金△2四歩▲8五飛△同飛▲同香△4九飛▲4八桂△7四角▲6一飛(途中図)△8九飛成▲7九金打△9九竜▲7一飛成△6四香▲7七銀△5五桂
▲5六桂打△6七香成▲同金右△同桂成▲同玉△4九角▲5八歩△5九金▲6八金上△5八金▲同金△6九竜
まで、92手でKaz氏の勝ち。

Hon氏はすでに退席しており、いまはR氏が真剣な表情で観戦してくれている。
私は▲6六角と打った。Kaz氏は少考後△4五歩と銀を取る。私は▲1一角成とし、銀香交換なら悪くないと思った。
Kaz氏は△2二銀と打つ。ちょっと固めすぎに見えるが、これがKaz流である。
私は▲2一馬と逃げ、▲5五桂を防ぐ△5四歩に▲8六香。これで手応えを感じた。
数手後▲4三馬と切り、▲6五飛と捌いて先手好調だ。△4九飛には△4七角成を防いで▲4八桂がピッタリで、これはもう負けられないと思った。
しかし次の▲6一飛(途中図)が勝ちに逸った疑問手で、ここは▲5九歩か▲5九金打とするのだった。

Kaz氏に涼しい顔で△8九飛成とされ、そこで▲7九金打と受けているようではおかしい。
さらに数手後、△6四香に▲7七銀と引いた手が悪手だった。Kaz氏にすかさず△5五桂とされ、もう先手容易でない。
▲7七銀では、▲6二竜と引くのだった。これに△6六香なら黙って▲同歩で、次に▲5三銀などを楽しみにする。
▲6二竜はずっと指したかった手なのに、味を持たせたのがアダとなった。
最後は私に見落としがあり、あえなく幕。また負けた…。
Kaz氏にコテンパンにやられた記憶はあまりなく、むしろ中盤まではこちらがいい印象が多い。しかしいつも、私が終盤で大ポカをやらかす。簡単な7手詰を逃したり、1手必至が分からず投了したり…。
しかし将棋は勝敗がすべてだ。いくらいい将棋を指しても、勝たなければ意味がない。なぜなら周りは、勝敗の結果しか記憶していないからである。
結局は私が勉強するしかないのだが、それにどのくらいの意味があるのか、というところはある。
R氏を交えて感想戦を20分くらいやり、これでお開きとなった。
R氏の愛車で王子駅まで送っていただく。きょうもだらけた1日だったが、ジョナ研が私の癒しになっているのは確かである。

帰宅して、きょうの将棋を(脳内で)検討する。
43手目の▲6六角には、△7四桂で先手が痺れていた。勢い▲4四角と突撃するしかないが、△同金▲同銀△5二玉の結果は、先手敗勢だ。
また85手目▲6七同玉は、▲同金とするのだった。当初の予定は▲同金だったのだが、指す寸前で気が変わってしまった。
▲6七同金なら△5九角▲同玉△7九竜▲6九歩△7八金が想定手順。これでも先手が悪そうだが、まだ綾があった。
それにしても欲求不満の残る負け方である。何か、猛烈に将棋が指したくなってきた。ちょうどあす(12日)は、竹橋で女流棋士会のイベントがある。ここで室谷由紀ちゃんに指導対局を受けて、今夜のウサを晴らそうと思った。
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