岩波写真文庫というシリーズは、今も発行されているのだろうか。
本書は、元は、1956年に発行されたものだが、1990年の復刻ワイド版だ。
なかなか古そうな装丁で、いい味出している。
全て白黒だが、仏陀の生涯にかかるお宝の写真を使って、仏陀の生涯を追う構成になっている。遺跡の写真は、一切使われていない。インドのみならず、中国、日本、インドネシアなどのお宝も、ごちゃまぜに使われているのがユニーク。ベゼクリクの燃灯仏の壁画の写真が鮮やかだが、これは、ばらばらにされる前の写真だったろうか。
説明が、白黒写真とかぶってちょっと読みにくいところもあるが、オーソドックスな説明がなされている。漢字が多くて、ちょっと古臭さを感じるが、逆に格調高い文章だ。
三道宝梯降下の物語も載っている。僧伽施国(さがせ)国に降下したとあるが、サンカーシャのことか。略年譜には、この伝説が、仏陀42歳のことだったとある。何が、根拠なのだろうか。地図の方では、サンカーシャは無視されている。
写真を豊富に使った仏陀の生涯を描いた本として、元祖的なものか。写真の説明も詳しく、面白かった。
表紙の涅槃像は、私も敦煌で見たものである。