事例紹介コラムです。
先日、スポナビに「Jリーグの理念を体現する地域貢献 奇跡の甲府再建・海野一幸会長 第4回」のというタイトルで、J1甲府の海野社長について触れるコラムがありました。さすが、プロヴィンチャの雄の甲府さんだと、親企業のない地方クラブの望ましい姿である事を実感する内容でした。以下、抜粋して紹介。
【勝てない中で集客力を高める戦略」】
強化資金が潤沢でない小クラブは簡単には白星を重ねられない。どうしても負けが先行する。そういう中で集客力を高めるにはどうしたらいいのか。「負けても、お客さんが来てくれる阪神タイガースのようにならなければいけない。それには、ただサッカーを見せるだけではなく、地域貢献活動を徹底的にこなすしかない」と海野社長。もともと、それがJリーグの理念でもあるとしています。
コーチによる巡回スポーツ教室。選手の小学校への学校訪問。子どもたちの田植えや稲刈りを実施する食育活動。お年寄りの健康増進を図る介護予防事業。’12年に選手やマスコット等が参加した地域の祭りやイベントは396を数えたとか。
地域貢献の柱としている活動が「ヴァンタス実育山梨」。’11年には佐久間GMの発案で「ヴァンくん体操」をつくり、年30回のペースでヴァンくんが幼稚園、保育園を巡回して子どもたちと踊っているもの。「1回踊れば、すぐ覚えてしまうもので、2歳児でも踊っている。ヴァン、ヴァン、ヴァンという連呼がボディーブローのように効いて、みんな甲府のサポーターになるでしょうね」という声も。訪問を終えたら、クラブは公式サイトの「ヴァンフォーレ日記」に子どもたちの写真を数多く掲載。ヴァンくんに再会したくてスタジアムに足を運ぶ園児も多いとか。
【選手にも活動への積極的な関与が求められる】
地域貢献がクラブの生命線であることは選手の頭に普段たたき込まれているそうです。海野会長は毎年、新加入選手を含む全選手が集まる始動日に、苦しかったクラブの歴史を講演し、「我々のクラブは地域に支えられている」と強調。「生き残って行くには地域に根ざしていく必要があり、選手にはサッカーだけでなく、地域貢献活動をしてもらう」と説明。
選手による地域・社会貢献活動には選手の社会教育の側面もあるとしています。地元の特別養護老人ホームに毎年、新人研修を兼ねて高卒、大卒の新人選手を派遣。単なる慰問ではなく、看護師の手を借りながら、お年寄りを風呂に入れるなど介護作業まで手伝うとか。
「施設の利用者は選手から元気をいただいている。スポーツのエリートが介護の現場を見るのはムダではない。老いを身近なものとして感じ取り、1日1日を大切にかみしめてほしい」と施設理事長のコメント。お年寄りと触れ合ううちに、選手に意識改革を生むいい影響が出ているようです。
【スタジアムで仲間意識が芽生える】
甲府が地域貢献活動、特にハンディのある子どもたちの慰問に力を入れ始めた原点と言えるのが、地元の児童養護施設との交流。虐待を受け、心に傷を負って入ってくる子が多く、入園当初はなかなか心を開いてくれない子ども達をクラブは県を通して試合に招待し、選手が施設に足を運んで交流会を実施。コミュニケーション能力に問題があり、乱暴を働いてしまう癖がある子がいつしか心を開くようになったという効果も。
「スタジアムでみんなで応援していると仲間意識が芽生えるのでしょうね。人とコミュニケーションが取れなかった子なのに、チームに夢中になって、話の輪に入っていけるようになった」という声があり、試合の翌日はみんなで新聞のスポーツ面を開くようになったとか。
【クラブの活動が地域に浸透】
'03年からは山梨大学付属病院小児病棟への慰問を継続実施。この年7月に行った甲府の選手による慰問は当時としては特殊なケース。プレールームで5選手の演技と子どもたちとの質疑応答。その後、サイン会と記念写真撮影を実施。選手は、個々の病室を回って対応。慰問を続けて10年がたち、選手は子どもたちとの接し方が上達してきたとか。
「どうしたら喜んでもらえるのかをよく考えていて、ベテラン選手はやはり言葉の掛け方がうまい。そういう姿を若手が見て学んでいる」とクラブ運営部のコメント。慰問による交流会は父兄や看護師にとってもリフレッシュの機会になっているとか。「この会の対象は子どもたちだけれど、その周りにいる大人へのプラスの効果も大きい。ヴァンフォーレが子どもたちとコミュニケーションを取る際の格好の材料にもなっている」と元小児科病棟医長のコメント。
クラブの試みが、小児病棟の意識改革にもつながったともあります。選手の慰問をきっかけに、外部の人を招いた病棟内でのイベントが増えたとか。選手たちの慰問が医療の現場のあり方にも変革をもたらしたことになるとしています。
一連の活動は地元で確実に評価されているとされ、Jリーグによるスタジアム観戦者調査の観戦動機に関する問いで「クラブが地域に貢献しているから」という返答の割合を見ると、J1甲府は'12年までの9年間で7度、全40クラブの中でトップになっています。
【地域貢献活動が身を結び、入場者数は増加】
クラブが地域のための活動に精力的だから、人々の共感を呼ぶ。活動は地元企業の経営者の琴線にも触れて、その地道な地域貢献活動を耳にし、クラブへの支援を厚くする。地域貢献活動は海野会長の狙いどおり、入場者の増加に結びついているそうです。
クラブは地域貢献活動をマスコミに取り上げてもらうように積極的に働き掛けておられます。フロントスタッフは地元企業などへの営業の際に「我々はサッカーだけをしているわけではないんです」と訴え、地域貢献の内容を説明。
「いいことをしたときに、それを宣伝するのは美徳ではないという人もいるけれど、甲府は、Jリーグの理念は地域貢献であるということを世に知らしめたと思う」と海野会長のコメント。地域貢献こそがJリーグが生き残り、発展していくためのキーになるということを知らしめていると締めくくっています。
スポナビ該当記事:http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/soccer/jleague/2013/columndtl/201309120002-spnavi
この記事、甲府さんの活動の中に、偶然ですが当ブログで日々口にしているキーワードが散りばめられている気がします。勝ち負けに関係なく、来場者を増やすには「地域貢献活動を徹底的にこなすしかない」という海野会長の言葉にまず目が行きます。どこでもやっているコーチ中心の巡回スクールだけでなく、選手による学校訪問など地域貢献活動は年間400近くってすごいです。「ヴァンタス実育山梨」は以前に紹介済み。
海野会長自ら毎年、「クラブが生き残って行くには地域に根ざしていく必要があり、選手にはサッカーだけでなく、地域貢献活動をしてもらう」と説明され、選手による地域・社会貢献活動には選手への社会教育に加えて相手への波及効果も大きいとしています。老健施設での介護作業、小児病棟等への慰問など頭が下がる思いです。そうした中で、観戦者調査で9年間で7回、地域貢献度が全40クラブで№1を獲得しています。それらの活動が観客動員やスポンサー獲得にも大きく貢献しているようです。まさに素晴らしい限りなり。「地域貢献こそがJリーグが生き残り、発展していくためのキーワード」まさにそのとおりです。選手にはサッカーだけやらせる方針が、選手のためとする価値観が見受けられますが、このコラムを読むと、それがいかに愚かな価値観かよくわかりました。「我々はサッカーだけをしているわけではないんです」と訴え、地域貢献の内容説明が、スポンサー営業ツールっていいですね。
ちょっとこれ、読んで欲しいなという顔がいくつか浮かんでしまいました。たぶん、そのうち読む事でしょうけど。甲府さんにはこれからも、親企業のない地方クラブの雄として頑張って欲しいですね。
J1甲府関連⑯:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130811
〃 ⑮:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130609
〃 ⑭:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130530
〃 ⑬:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130510
〃 ⑫:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130406
〃 ⑪:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20120713
〃 ⑩:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20120422
〃 ⑨:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20090129
〃 ⑧:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20090126
〃 ⑦:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20090125
〃 ⑥:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20070630
〃 ⑤:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20070328
〃 ④:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20070113
〃 ③:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20061122
〃 ②:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20060830
〃 ①:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20060819
話は変わり、今日天皇杯3回戦が開催されました。仕事の移動中に時折ネットでチェックしておりました。明日、その様子を紹介できたらいいですね。