CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

苦役列車

2011-05-11 23:16:51 | 読書感想文とか読み物レビウー
苦役列車  作:西村 賢太

話題作を読みました
話題になったのは少しというか、随分前のような気がしますが、
芥川賞なんていう難しいジャンルのそれ
今まで読んだ同賞の小説はいずれも
難しすぎて理解できないと投げてしまうような感じでしたが、
今回は、私が年齢を重ねたおかげもあってか
なかなか興味深く読めたのであります

言い回しと言葉遣いが
やっぱりどこかとっつきにくいというか、難しいよなと
思わなくもないのでありますが
それ以外はさして難しくなくというか、
私小説なのか、そうではないのか、わからない感じで、
吐露される心情みたいなのが、全然共感できないけど、
何か惹かれるというか、引き込まれるというか、
読まされてしまう内容で驚いたのでありました

うらぶれた男が、どうしてうらぶれたのか、
それを語りつつも、そのうらぶれたところで、
くすぶりつづける様というのが、
執拗に描かれていて、ちょっとくらいというか、
案外たくさん思い当たるところがあったりして、
薄ら寒い気分になれるのもなかなかステキで、
自尊心による破滅というか、些末な破綻を繰り返す生き方が、
何か、自分にもそういうところがあるんじゃないかと、
反省とは違う、もっと、居心地の悪いものを想起させてくれるのであります

文体として気になったわけでもないのですが、
一文が結構長くて、最近読んでいた小説が、
どれもこれも、句読点までの道のりが短かったのに、
この小説はなかなか、それが長くて読むテンポが
難しいとか感じたところ
ただ、冗長というわけでもなく、言葉面はもちろん、
言葉の意味や節も重複することがないので、
行き着く間もない文章でも、読みやすくて
凄く面白かったと思うのであります

オチとかいうのは何もないのですが、
思わされるところがたくさんあっただけに、
こういうのがいわゆる、凄い文章であり、
芥川賞なのかななんて、勝手に解釈して
楽しめたのでありましたとさ

何より、短いというのが素晴らしいですね
内容が重たくても、ひきずられないのがステキです

あと、余談ですが、作者の受賞したときのコメントが、
なんだかな、という感じだったので興味惹かれて読んだわけですが、
そのなんだかなという気分そのままのことが、
またこの小説に描かれていて驚いたのでありました

底辺を覗くという言葉と雰囲気と、事象が好きなんだろうなと、
勝手な感想を並べておくのでありました