CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

信長私記

2012-05-05 10:56:03 | 読書感想文とか読み物レビウー
信長私記  作:花村萬月

信長の若いころというか、幼いころを描いた小説でした
花村萬月作ということなので、これまた、
とんでもない、エログロナンセンス小説だろうと
思っておりましたが、案外大丈夫なもので、
割と、変態色は薄く、さりとてずっと真面目に信長をおっかけるでもなく
なかなか面白い小説でありました

生まれてから、物心がつき、
やがて、親父が死に、爺が死に、尾張の跡目争いで勝つという
そのあたりのお話を、男と女の話を織り交ぜつつ
なにこれ描いたというわけでありまして、
出てきた女は三人、正式には名もなき女も出てきましたが
濃姫、吉乃、母者で、それぞれと
さまざまな思いを描く、まさに私記であります

何が面白いかといえば、信長の幼いところにだけ
ただただスポットを当てたというところで、
そこから描かれる信長の像というのは、
まぁ、よく言われているそれこれと離れもせず、だけど、
オリジナルな感じで心地よく、
非常に魅力的だったところであります
話の筋でも、なにやら超然としている信長が、
人並みに、爺に死なれたとき、父親が死んだときそれぞれに
さめざめというか、涙を流し、泣きじゃくるというあたりは
人情ものとは違うものの、何やら
感動に近いものを覚えるほどでよろしかった

また、その人情味というか、人間味が足らないような描写でありながら、
その実、女にかかわると、情に厚いというのか、
よくよく優しさではないものの、そこに
男と女の営みをまじえながら、会話がしっかりと成り立ち
安寧があるといった描写になって、
いきいきとした信長になっているのがまた、
面白いと思ったのであります

てっきり、歴史小説めくと思ってましたが、
まぁ、実際、信長が尾張を平定するという
非常に重要な部分を描いてはいるものの
あまり、歴史的などうしたということにはかかわりがなく
信長というのは、こういう人であったのではないかと
そういうことを描かれた小説でありまして
そのほか、家康、秀吉の若い時分も少しずつ信長とかかわって、
それぞれのことも描かれたという
三英傑の子供時代を描いた小説でもありました

なかなか、面白かったけど、
非常におとなしい、よくできた小説でした