CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】劉邦の宦官

2013-07-29 21:04:39 | 読書感想文とか読み物レビウー
劉邦の宦官  作:黒澤はゆま

前漢というか、劉邦の話を正直なところ
満足に知らないという体たらくで、
そのあたり補完するためにも一つ読んでみようと
おっかなびっくり読んでみました
読んでびっくり、劉邦じゃなくて、その子、劉盈こと恵帝
そこについた宦官の話でありました
これはなんというか、劉邦の宦官という題名のほうが
わかりやすいからそうしたんだろうか、
いや、まさにそれに引っかかって読んでしまったんだが

さておき、内容は、宦官としてというか、
酷い身分から脱するために宦官となるしかなかった、
そんな哀れな二人の子供を主人公にしつつ、
その片割れが年老いた今、ある司書に尋ねられて
物語するといった内容でありました
語り口が、女くさい感じなのですが宦官なので、
なんというか、一種独特と形容するか、
ともかく、その文章の柔らかさとかで、歴史の男っぽくなりがちな部分を
うまく丸めて、それでいて、歴史は失わずといった
そう読めてなかなか、面白いと思いました
ステキですね、こういう昇華の方法

子供の頃、麗しき宦官であった二人の子供は
その美貌もあってか、うまいこと宮廷というか、
あの呂夫人に認められるというか、可愛がられ、
出世というか転身していく
その間に、劉邦であるとか、夏侯嬰とか、張良とか
当時の英雄たちも出てくるのでありますが
これはすでに、項羽を倒したあと、王朝を建てた後というわけで、
治世の段階に入ってからの話であります
ただ、政治劇や、その頃の戦争の話はほとんどなく、
その後、主人公が尽くすことになる恵帝のまわり、
最終的には、あの陰惨な事件に向けての話になっていくと
まぁ、そんなところでありました

当然のようにというべきか、仲の良かったもう一人の宦官とは、
途中で離れて暮らすこととなり、その暮らしの中で、
だんだんとその宦官が怪しくというか、恐ろしく変貌していく
その姿や、また、そうさせる魔というか、
呂夫人の見えない恐ろしさというのが描かれ
なかなか引き込まれるのでありました
クライマックスは、前述のとおり、戚夫人を人豚にする
おぞましいあの話につながっていき
なんというか、絶望的な具合になるのでありますが
そこで、なんとか生きていた恵帝という人
それを描いた作品ということで珍しくも面白いと
興味深く読み終えたのでありました

最終的に、このたずねていた司書の姿とともに
物語は終わるのでありますけども
前漢の速い段階なんていう、あんまり見たことないそれを
少しだけ知ることができて、それはそれで満足だったと
そんな感想でありました