CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】誰がネロとパトラッシュを殺すのか―日本人が知らないフランダースの犬

2016-05-14 17:38:21 | 読書感想文とか読み物レビウー
誰がネロとパトラッシュを殺すのか―日本人が知らないフランダースの犬  
著:アン・ヴァン・ディーンデレン

フランダース人が書いた
フランダースの犬という作品についての派生と考察をした本でありました
あんまり期待してなかったのに、読んだら結構面白かった

もともとの原作が、フランダースとあんまり関係の無い土地、
作家によって書かれたものだということも衝撃ながら、
アジアでしか成功していないということが
なかなか面白いところでありまして、
よくある、他人のほうが詳しい地元の名物みたいな
そういう状況であることが、わかりやすく網羅されています

まず原作については、さほどの知名度がないようで
西欧でもほとんど知られていない短編作品だというお話、
それでも作品としては、アメリカで5回も映画になっていて、
いずれも凡作で終わっているというのが
なかなか興味深いところであります
それが、何の因果か日本にわたってアニメーションになって
アジア方面だけでは、空前の大ブームを繰り広げる
本の中では、アメリカの映画のほか、
一番有名だと思われる日本のアニメについて
各話ごとの細かい注釈が載っていて、なかなか面白かったのであります
ここを読んで気付いたんだが、
私はフランダースの犬をたぶん見たことがない(なんだかな)

作品としての歴史や、内容の考察が終わると
このブームにのって、フランダース地方に、
フランダースの犬的なものを探しに来る日本人という
厄介なそれが生まれたようで、せっかくだからそれを
観光資源にしようかどうかという論争が
フランダース地方で持ち上がって、なんだかんだと失敗したというか
ブームが去ってしまったという
きわめて残念なことになっていたというのが
なかなか興味深いところでありました
このあたり、地方行政と観光商業のあり方が見られて面白い

そんなわけで、そもそも、フランダースという地方が存在するということが
私のような無知な人間には衝撃的で、あれはお話だから
実在なんてしないんじゃないのかと、そう思っていたわけなんだけども
このあたりが、著者であるフランダース人と誤解が続く遠因でないかしらなんて
思ったりなんだったりなのであります

秀逸というか、なるほどと手を打ったところでは
日本でなぜ、あそこまで哀しい結末が受け入れられるのかという話が、
当時の日本における自己犠牲というか、正しく生きて報われないという
そのなんともいえない部分が、凄く好きなメンタリティに響いたと
まぁなんだろう、最近そんな人減ってるなと
つくづく思い知りつつも、そのメンタルに自分はまだ属しているなんて
考えたりなんだったりして、楽しく読み終えたのでありましたとさ