CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】千の輝く太陽

2021-08-23 21:20:08 | 読書感想文とか読み物レビウー
千の輝く太陽  作:カーレド・ホッセイニ

20年から30年前のアフガニスタンを描いた小説でありました
イスラム教、タリバン、ソ連の関係などが市井の民ともいうべき、
二人の女性の過酷な人生によって描かれていくのが見事
政治的なそれこれとはまったく関係なく、
ただただ、人間として、あるいは家族として、
宗教や国といった、大きなものの変動がどんな影響を与えて
苦難をしいたのかというのが、強く伝わる物語だった

もう一度ちゃんと読まないと正確に把握できないと思いつつも、
イスラムという影響下における女性の苦難描写がきつくて、
何度も読めるものではないななんて思ってしまうところ
この感じ、この感覚というものは、前時代的という感覚でよいのか、
あるいは、今もって根付いている、人間が社会生活を行ううえで
排除できない問題、もしくは、当たり前の世界観なのかを
凄く考えさせられるものだった

女性が虐げられるのはごく当たり前で、
それは所有物であるし、男を辱めてはいけないという確固たる教えのような
高圧的なルールが酷いとも思えるのだが、
少し前は、ことの大小はともかく、父長というものを制度化している
原則ルールとして存在していたと考えさせられてしまう
今、あれこれとやかましくなっている、色々な権利なんかの問題ともクロスしているようで
これを思うと、イスラムの原理主義的な思想というものは、
つきつめていったとき、アメリカの貧困層というべきか、前時代的なそれにしがみつく層に
支持されることもあるんじゃないか
そんなことを思ってしまった
この本の主題ではないな

私生児として生まれてしまった、そのうえに女だったという状況が
どんな酷いものか、マリアムという女性の生涯が
暗く辛いものであるというところから始まり
一瞬だけ、本当に少しだけ明るい生活というものを楽しんだあとに
それが翳っていく様、そしてそのかげりに訪れる
新たな不幸な女ライラの存在というのが
物語の中心で、ただ、彼女たちに訪れる不幸というものが
大きな外からの変化、ソ連の介入であったり、タリバンの勃興であったり、
イスラムという世界で生きていて、
それまでにあった日常に溶け込んだ宗教が、或るときは否定され、
或るときは原理主義に返り、その触れ幅によって翻弄されていくというのが切ないというか
とても厳しいと思われた

マリアムとライラの共通の夫であるラシードという男
彼の行動が、ある種偶像的にイスラムの男という役割なんだろうけども、
悪人かというとそういうのではない、彼の育った環境では当たり前であったことをして、
彼の人生なりに嫉妬や後悔を覚え、それに対する怒りを示した
そういう事件のお話ともいえるのだけども
それを受ける側であった女性二人にとって、その暴力というものは、
肯定も正当化もされないものであるし、
そもそも家族という概念が、共通となる何かが存在しないというつながりが
不幸ともいえる世界を、当たり前にしていたんだと思うばかりであった

とりあえず読んで、何かを批判するという
単層では読みこなせない本だったと思うところ
うまく感想をまとめられないのが悲しいが、ともかく、辛い物語であった