CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】父を撃った12の銃弾

2021-08-16 21:20:54 | 読書感想文とか読み物レビウー
父を撃った12の銃弾  作:ハンナ・ティンティ

面白かった
読むのに時間がかかってしまったけども、
終盤の物語が、ぐいぐい読み手をひっぱっていくようで、
よい読後感を覚えつつ、楽しい読書になった

大きく笑ったり、泣いたり、はらはらしたりと
そういう起伏がはっきりした物語ではないのだけども、
父親と娘、その関係を描いた見事な構成がよろしく、
特殊な親子の話ではあるものの、
根底に流れる父娘の愛情のようなものが、とても丁寧に、
言葉にできないものとしてはっきりと描かれているのがよかった
泣くというのではないが、感動する作品だったと思う

のっぴきならない背景をうかがわせる父親と、
その娘だからこそともいえるお転婆とも違う、尖った少女の日常から始まり、
親子は町から町へと移動して生きていたけども
ある土地で少しだけ根を下ろしたように見えて、
そこに、過去と未来と、現在の変化がぐるぐるとまじりあっていく

謎めいた、死んだとされる母親の話もキーとなりつつ、
二人の過去、娘の記憶がまだない頃の話なんかも挟まりつつ
過去が現在に追いついてくる、
その災悪とも呼べるようなものも一緒にやってくるところが
いよいよクライマックスというか、このあたりはどうなってしまうか
ぐいぐい読まされていくのが心地よかった

父親を貫いた12の弾丸の物語が過去語りともなりつつ、
12発目の弾丸の行方が見事に物語を終結させていて
すごく面白かったという感想を抱かせてくれた
何を描いていたかといえば、
親子の情というのが正しいのかなとも思うんだが、
その深さと、まつわるさみしさみたいなのがすごくよく見えて
感動的な作品だったと思うのである