CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

2021-10-13 20:46:45 | 読書感想文とか読み物レビウー
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー  作:桜木紫乃

昭和末の北海道、場末のキャバレーを舞台にした物語でした
ものすごいしっとりした、舞台装置は確かに昭和のそれこれなんだけども、
人情味あふれる話は、昭和のそれだと自覚できるのに
現代の小説として、みずみずしさがあるといった感想を抱いた
よくある昭和人情話でまとめたいところなのに
なんというか、古臭さや、鼻につくほどの昭和を明らかにした感じではない
なんとも不思議な読み応えなのでありました

ロクデナシの父親に売られるようにして、
キャバレーで住み込みのバイトをしている青年のもとに、
というか、そのキャバレーに年末年始の興行で
風変りな三人の芸人がやってきたと
そういうお話であります

マジシャン、シャンソン歌手、ストリッパーと
三人は、たまたまこの場所での興行に呼ばれたというだけなんだが、
渡世人でもないが、そういう仕事がら、
見事なチームワークというか、プロの仕事をしていく
その姿に、若い主人公があっけに取られたり、
その人たちと触れ合っていくことで、
だんだんと大人にというか、人生が動き出す、
そういう若者の機微がみずみずしく描かれていて、
いやー、青春小説とはちょっと趣が違うけど、
いい話だったと、ほのぼのとしたのでありました

とんでもない事件が起きたり、
しょってる人生の悲しさを押し付けられたりしない、
それぞれが、それぞれの人生を歩んでいて、
また、それぞれに何かがあるんだというのがわかり、
それを見守るような、そこで生きている人というのが描かれていて
なんともしんみりしてしまうのでありました

ヒモになる才能についての言及があって、
これについてはなるほどというか、
それもまた生き方なんだな、
男の職業の一つなんだというのに、
なんというか、ものすごく納得したのでありました

場末ならではの、悲喜こもごもというか、
男と女の色恋もあるんだが、
その寂しいとすら思える結末も、
それでいいんだと思えるような、
不思議な魅力が、ああ、昭和だなぁと
なんか感じ入るものを覚えたのでありました

多分昭和じゃなくて、今でもきっと存在する感傷なんだろう
あってほしいと願ってしまうような、
絶妙な人間関係が描かれていた小説でありました
すごいよかった
また、ラストシーンが素敵なんだこれが