CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】カード師

2021-10-18 21:07:31 | 読書感想文とか読み物レビウー
カード師  作:中村文則

掏摸とか、王国とかを彷彿とさせるスリリングなやつを期待したんだが、
あそこまでエンタメに振ったわけではない、
気づけば、哲学思考とも異なる、世界の成り立ちに対する
理解、愚痴、考察、あきらめ、奇妙な期待
様々なものを織り交ぜつつ、
アンダーグラウンドとも異なる、暗い世界がさも当たり前にあるという前提の上に成り立つ
SMともまた違う、上下関係とそこに対する人の情欲であったり、
いいようのない気持ちの悪いものが描かれていたように思うのである

ま、そういう難しいことが唐突に差しはさまれるんだが
おいといて、タイトルの通りカード師としての、
イカサマも交えたカード戦描写が面白かった
合ってるかどうかもわからんが、
ハマることが前提に組まれているような、そこまで複雑ではない駆け引きが
ひりひりと続いてよかった
描写が人物に当たっているので、その人物の考えるそれなんだが、
その緊張感が伝わってくる文章展開がすこぶるよかった
奇をてらいすぎないというか、裏切りの裏切りみたいな、
こねくりまわしたのじゃなくて、一回だけの、一通りだけの罠というのに
どのようにはまるかというところが焦点になってるのがよかった
あれこれ考えすぎるというのではなく、
緊迫感と、そうなってしまうのかというあたり、
多分罠だろうけど、どうだろうかと、悩みつつも判断するというそれこれが
くどくなく、それでいて濃厚に書かれていてすごくよかった
というか、読み応えが素晴らしかった

途中、少々インモラルな雰囲気もいつものように上がってきたんだけども、
割と大人しめで、そういうのではなく、
賭け事の魅力というか、魔力というものを描いていたと思うのでありました
それだけ力の入ったように思う文章だけど、
実際のところ、この本筋というか、語ろうとしていたところとは
あんまり関係がないというのも、不思議なところなんだが、
難しい理屈というか、妄想に近い想像が、
カード賭博の魔力とあいまって
タロット占いとかのからくりと魔力とが混在する世界のようにも見えてと
最終的に、すかっとこれだとならないのが
残念といえば残念だけど、
だからこそのこの物語だったともいえて
なんというか、面白い部分もあったが、全部読むと
ちゃんと理解できなかった
そんな感想を抱いたのでありました