CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】関心領域

2024-11-04 21:02:11 | 読書感想文とか読み物レビウー
関心領域  作:マーティン・エイミス

重いと思った
書かれていることが、でもあるし、そのモチーフの事実もあるし、
なんとも、夢でうなされそうな不安を抱える読書になった

ナチのホロコーストを題材とした小説で
ドイツ軍がソ連に侵攻したあたりから、反転敗退するあたり
その間に、ユダヤ人をどのように扱ってきたか
そういう将校たちの姿を描いていて、生々しいといったらいいのか、
ユダヤ人捕虜の女性とうまくやろうとする男や、
そもそもホロコーストの仕事そのものをどう遂行するかを考える男、
ドイツの勝利を信じてやまない男たちの声などなど、
結末を知っている状態なのは当たり前だが、
その時、その当時は、きっとこんなことがあったのだろうなと
思うにたやすいというか、
あまりにも、ある意味での人間ぽさがある物語で、
それでいて、非人道的なそれがまかり通っていた空気といえばいいか、
狂騒というほどではない、その感覚みたいなのが
読んでいて、少しわかりそうになるのが怖い
そんな気分になって読んだのである

ホロコーストを題材にとっているが、
そこへの断罪という使い方ではなく、その状況下の人間というものを描いているのが秀逸で、
賛歌するはずもないのだが、どこか理解できてしまいそうな、
その憐憫や理解すらも、断ってきたであろう今までと、
それを少しばかり深く、人間の方へと掘ったというのか
時代が変わりつつあるようにも感じる内容であった
多分このあたりは、ヨーロッパと距離のある身分だからこそ
より思うのかもしれない、
この本が示唆しているものの重さは、ヨーロッパではより強い反発というか
反応を呼んだのではないかと思ったりするのである

戦争下、そこで犯された罪は確かにあり、誰かが断罪されるべきであろうが、
その細かなところに関わった、あるいは、そこにいたという者は、
やはり人間で、その営みがあったということが
生々しく恐ろしいと思うばかりである
よい小説だった、そして、やはり、大変重かった