CLASS3103 三十三組

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【読書】罪名、一万年愛す

2025-03-01 21:24:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
罪名、一万年愛す  作:吉田修一

戯曲というものなのか、脚本のようにも読める
不思議な文体で進む物語で、いささかというか
相当に演劇っぽい進み方と、それぞれの人たちのセリフであり行動であり
そうかと思って読んでいったら、最後にはというところで
なかなか面白いオチになってて、ちょっと楽屋落ちっぽいけども
そうではない、不可思議を描いててとてもよかったと
読み終わって満足したのでありました
演出も含めて、小説全体が物語という入れ子になってるのが
いい意味で腑に落ちたと思うのである

仰々しい感じで、探偵とかつて犯行を追った刑事がいて、
その結局冤罪であったとされる容疑者とその一族がいる
さらに、そこは無人島というか、その容疑者の所有地で台風が来て孤島になる

もう、この設定からしてあまりにもあからさまで、
さらに「まるで何か始まるようじゃないか」なんていう、容疑者の声からスタートする
そして、その人が行方不明となるなんていう
本当、ありがちなというか、ある意味気持ちがよいほどの進み方で、
かつそれがわざとらしく謎解きを展開していくようになって、
正直、その進み方、謎、あらゆる展開が幼稚とすら思うようなそれなのだが
不思議とというか、上手いから読まされてしまう
しかし、その幼稚さというのは、最後の方で明らかにされることによって
なぜだか腑に落ちてしまう
陳腐といえば陳腐だが、そこまで含めての一冊だという楽しみ方をしたら
随分と楽しい読書になったと思うのだが
それだけでは、一種の叙述トリックもののようになってしまうが
そうではない、この物語のクライマックスシーンといっても過言ではない
少しばかりのSFが、これまた見事な情景描写というのか
いや、言葉も少ないし、大仰なことは何も書かれていなかったと思うのだが
それでも、その不思議が見えるような文章だったと思い
その最後が見えたようにすら思える、この見事さに脱帽したと感じたのでありました

ややひいき目にすぎる読み方かもと反省もあるが
仕掛けや仕組みを考えても、非常に面白い小説だったと
そして気持ち良い話だったなと感心して読み終えるのでありました


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