CLASS3103 三十三組

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【読書】よこどり 小説メガバンク人事抗争

2020-09-03 20:58:46 | 読書感想文とか読み物レビウー
よこどり 小説メガバンク人事抗争  作:小野一起

タイトルの通りの小説でありました
頭取付きの秘書めいた広報部長をしていた男が、
一種の野望に取りつかれて、自分を見失いながらも、
出世とよべるのか、栄達を夢見ていく姿が、
なんとも痛ましいというか、そういうものだよなと
まざまざ思わされる、ちょっと昭和っぽい企業内劇のようにも読めたのであります

相変わらず銀行という内部は昭和のまんまなんだろうなと
なんとなし、読みながら思ってしまったんだが、
「結果が出れば自分の手柄、失敗したら部下のせい」というのを
当たり前に通告してくる頭取の圧政ぶりが素晴らしいのだけども、
なんとなし、全体的にこざっぱりした印象でありました

もっとも、広報部長が自身の出世に目がくらみ、
さまざまな手練手管を駆使して、それまでの生き方とまるで変化して、
清濁併せ呑むというよりも、喜んで汚れていくような姿が
どきどきというか、破滅っぽくて素敵でありました
そこまでかられるほどに、銀行での出世というのは
素晴らしいものなんだろうかね
現実世界で、そういうのととんと距離のある自分では
もうひとつよくわからん感情だと思うのだが
出世するには、むしろ、そういう資質が必要なのかと思わされると
ますますもって遠いなと感じるばかりでありました

主に広報部門、そして、新聞を使っての闘争が描かれていて、
人事抗争も含めて、そういう情報操作から始まり、
なんのために、なんの仕事をしているのか
見ているだけだとまったく理解できない頭の使い方に
驚くというか、そういうものなのかもなぁと思うのであります

何かを切り捨てていく、自分も切り捨てられるのでその時の武器をもっておく、
そんなことを全員が当たり前にやっているという世界が
まぁ、居心地いいわけないだろうなとも思ったりするんだが
そこで、何かに取りつかれてしまった主人公の
虚無みたいなものがなかなか素敵で、終わりもまたビターな感じが
結構気に入った小説でありました
煉獄から、簡単には降りられないというお話であるように思うと
いやな世界だと思うばかりでありました

小説として、ちょっとしっくりこなかったのは
ライバルみたいなのが出てきたと思ったのに、特にそういうわけでもなく
あっさりと退場させられていったところで、
主人公はどちらかというと頭取の方で、
広報部長は狂言回しでしかないのかしらねとも思ったりした小説でしたとさ


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