CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】失われた芸術作品の記憶

2020-01-06 21:16:09 | 読書感想文とか読み物レビウー
失われた芸術作品の記憶  著:ノア・チャーニイ

タイトルの通り、かつてあったはずの芸術作品の数々が、
どのような運命を辿っていたか、それをすべてではないものの、
様々なパターンごとに紹介した内容でありました
戦争や災害で失われたもののほか、
盗まれたり、破壊されたりしたもの、
なくなったと思ったら、ひょっこりでてきたものなどなど
色々なパターンで、現在に続く芸術作品の運命を拾っていて
なかなか面白いのでありました
ギャラリーフェイクあたりが、てぐすね引いて待ってそうな話ばっかりだった

芸術も様々な分野がって、
わかりやすい、建築物や、絵画なんていうものは、
保存が悪くて破損していたり、略奪や、破壊されるといった
わかりやすい事象に巻き込まれやすいとみえて、
色々なものが、そんな運命を辿った様子、
このせいで、今に伝わらない、名画が数多く存在するらしいと
そんなことをなんとなし知ることになったのであります

特にこの作品が凄かったという話よりも、
災害で埋もれていたものが、それゆえに保存状態よく
現在において、復元されたという話もあったりするし、
物理的なものは、経年によって、どうしても破損磨耗してしまうという運命のなか、
むしろ、誰の目にも触れないことで守られてきたという
皮肉なこともあったりと、なかなか面白いのであります

芸術作品の破壊については、
所有者の気まぐれもさることながら
作者の強い意志があるというパターンが多いようで、
時代といえば仕方ないのだが、
苦労してスケッチを重ねて書いたというのがダサいから、
スケッチや素描、練習画なんてものは
焼却してしたという時代もあったんだそうで、なかなか残念に思われたりもするところ

ただ、それはそれで正しいというか、
やはり希少性と、確かなクオリティが担保されてしかるべきだから、
B品だからと残しておくのは
美術史としてはよろしくないともいえるなと感じるのであります
とはいえ、残ったものがA品かというと
決してそうではないものも数多く残っているようなので
何が正しいのかはわからんというのが、この本のよいところであった

消えることそのものも、芸術体験になるという
新鋭というか、前衛的な芸術もあったりするため、
失われるという言葉だけで、可哀想なものとは限らない
そのはかなさも含めての芸術であるという可能性まで感じさせられて
なかなか楽しい読書となったのでありました
まぁ、ひとつも手に入らないんだが
手に入れた人や団体は、必ず残す努力をするべきなんだろうなと
思うところである

でも、自分のためのコレクションだったら
人類のために残すという努力をするかというと
どうかなぁとも考えてしまうね

【読書】ひそやかな花園

2020-01-05 21:07:33 | 読書感想文とか読み物レビウー
ひそやかな花園  作:角田 光代

箱庭感というのか、描き出された世界観が見事だと
嘆息見舞った一冊でありました
設定の儚さというか、難しさが見事に人間の心理というか、
男と女ともとれる、あるいは、父と母、家族、
様々なものに紐づきながら、どれを明確に著したわけでもない
さりとて、そのドラマが興味深くて面白くて仕方ないと
なんともいえない感動を味わえました

子供の頃に体験した謎の集まり、
或るときから、そういえば、なくなっていたなと思い大人になって、
その頃の記憶は嘘だったのかも、なんかよくわからないものだったのかもと
そんなものを抱えながら生きてきた、或る意味、見ず知らずの他人たちが、
絆とはとても呼べないそこに惹かれて集まり、
そこで、それぞれの人となりを知り、また、
そもそもの始まりを知ることで、
また、どのように感じるか、考えたか、行動したかが
人間を描いているなと感動する内容でありました

終始いらいらさせるさーちゃんが、
結局、この物語を一番よくかきまわしていたんだと
最後まで読んで納得できる、
誰一人かけてはならない、他人の集まりであったと、
家族でもない、友達でもない、不思議な集まりをなんと呼ぶのか、
それはわからないけど、不思議な安堵があり、
何かを越えた一体感みたいなものもある、
絆とか呼ばれるものは、
血縁でなくても、作られるといったらいいのか
幸せだったかどうかとか、
そういうことではないものが提示されたみたいで、
また、読む人によって、この物語の登場人物と同じように
それぞれの感じ方があるものなんだろうと
思ったりしたのである

面白かった

【読書】在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

2020-01-04 23:04:33 | 読書感想文とか読み物レビウー
在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活  著:荒木 優太

面白おかしい本かと思ったら、
凄いまじめな、在野でどのように研究をしているか
そういう人々のインタビューや寄稿をまとめた本でした
そうか、在野研究ってこういう感じなのかと
その世界に驚いたのであります、ちょっと憧れてしまうところすらある

研究という話なので、完全に理系ばっかりだと早合点していたんだけども、
大半がむしろ文系のお話で、文系の研究テーマというのは予算がつかないから
結局好きな人たちが、好きなことを調べていくという土壌があるというべきか
非常に面白そうだと思わされたのでありました
ただ、学会に見るべきものがないという気炎をはいた内容もあって
襟を正すではないが、なかなか骨が太いと、侮って読んでいた自分を
戒めたりもしたのであります

理系では、専門分野ではないけども、
なんとなく気になったハエを調べてみたら、新種の可能性が出てきたので
まぁ、気になることをまとめていくか、なんていう感じで
アシナガバエなるものの研究が進められていったというのが面白かった
これが研究の、一番あるべき姿なのかもなと感じたりもしたのであります

学会に属するということが、必ずしも研究にとってよいことでもないと
そんな事例も紹介しながらだったのだけども、
共通するのは、そういうことから離れて、自身が調べたいから調べる
そして、その結果を表明することで、その他の研究者の役に立つという
至極まっとうに見える研究スタイルが素晴らしいと思えてならない読み物でありました
また、象牙の塔ではないけども、学会というものが
研究にとっての足かせとなることも多いようで、
実地検証が必要な経済分野とかだと、そのあたりが顕著なようで
なかなか面白いと思えたのであります

世の中副業というのが注目を集めているけども
業ではなく、こういう働きというのもまた
生きる意味になるのではなんて
かっこいいことを思わされたりしたのであります
研究をしたいと思える何かがあるかといえば、
そこからなんだけども、在野研究という生き方は
とても楽しそうだと思える一冊でありました

【ドラマ】検事・佐方 裁きを望む

2020-01-02 17:56:06 | ドラマ映画テレビ感想
年末にやってたドラマであります
日頃あんまり見ないタイプのそれなんだが、
エキストラで自分が出たという理由から
がっつり見入っていたのでありました
もう放送しないんじゃないか、ネット放送だけじゃないかと
はらはらしてたけど、ちゃんと放映されて
そして、自分も映っていたので大満足である

と、しょーもないことはさておき
ドラマはシリーズ第三弾だったそうで、
なかなか面白い筋書で見入ってしまったのでありました
ひらたくいってしまうと、
主役の自業自得めいたところもある事件の起こりなんだけども、
それはそれとして、なかなか面白いなと
ちょっとした掛け違いが、こういうことをまねくという
人間ドラマが見られて満足なのであります
最近はサスペンスを見ても、人間ぽさというべきか
トリックの整合性よりも、
動機部分がどれだけ面白いかばっかり見ていて、
これこそが、正しいドラマの楽しみ方だろうと
今更ながらに思っている次第
そこにきて、このドラマは楽しめたのでありました

殺人事件ではないし、ある意味では地味な事件なんだが、
そこを丁寧に描くことで、まあ、そういうこともあるのか、ないのか、
登場人物に肩入れしたり、しなかったりしながら
ぞんぶんにドラマを楽しんだわけなんだけども
ちょっと気になったというか、こういうものの典型というべきか、
ごく自然な流れとして、
説得のきっかけとなる「手紙」が出てくるんだが、
今日日、手紙を書いたりするんだろうかねと
素朴な疑問を覚えてしまったのである
これもまた、一種形骸化したやりとりだなと、
よくよく考えると、昨今にかかわらず、手紙って書いた記憶がないと
40歳またぎの自分ですら思うのだから、
視聴者層的には問題ないんだろうが
もう、最近の若い人にはさっぱり通じない何かじゃなかろうかなんて
思ったりしたのでありました

もっとも、逆にという使い方が正しいのか、
ある意味新鮮で、手紙が見直されるという余力はあるなと
年賀状書いたときに思ったりしたのだけども、
こういうドラマ展開は今後見られないのかもしれないと
なんとなし思ったのでありました

地味だけど、どっしりとみられるドラマだったと感じつつ
うちの母くらいの世代は、こういうドラマがめっぽう好きだなと
実家で眺めつつ思うのでありました