「悪い奴ほど良く眠る。」・・・
いえね、何も脈絡ないけれど呟いてしまったりして。そう言えば、そのタイトルのドラマは先日黒澤明生誕100年と銘打って遣っていましたね。あのドラマはけっこう良かったです。
そのドラマとは関係なく思わず呟いてしまいました。
だって、法界坊って本当に悪い奴なんです。
かばう所がないくらい。
だからこいつはきっとグーグー寝ているぞって思ってしまったと言うわけなのです。
だけどそれを中村勘三郎が魅力たっぷりに演じているので、お茶目な人に見えてしまうところが、ある意味ツボかもしれません。
「悪」の魅力なんてものはないですよ。
本当にろくでもない。
一応僧侶なのですが、還俗し武士になるのが夢で、それも自分のさまざまな欲を満たすためなのでした。
法界坊は永楽屋のお組に横恋慕し、だけどそのお組は手代の要助と良い仲なのでした。その要助は実は元武士で、紛失した家法の「鯉魚の軸」を骨董屋に勤めながら探していたのでした。
お組と軸を我が物にしようとしているのは、法界坊ばかりではなく番頭もしかり山崎屋といういかにもいやらしい男も加わり、大混戦。しかもそこには要助の幼少の頃からの許婚の野分姫まで現れて・・・。
と、私が手抜きで書くより、ちゃんと分かりやすい解説が載っていましたので粗筋・解説などはそちらでどうぞ。
シネマ歌舞伎・作品ラインアップ→△
隅田川続俤(wiki)→▲
このお芝居、ちょっと残酷です。時々セリフも怖い。だけど役者様のユーモアたっぷりの演技に笑いが絶えません。上手く出来ている舞台演出を逆手に取ったり(穴を掘っている時に土がその中から適度に飛び出す場面とか)切った見得さえもパロディに見えるのです。(そう、見せているのかな)
私の周りに座った人も、大きな声で笑いまくりでした。特に後ろの席の人は甲高い声で「ホホホ」と笑いが絶えません。これが映画だと、ちょっとムカッとしそうなくらい声が高い。でもなぜか許せてしまいます。映画であってもやっぱり舞台の感覚なのかもしれません。
舞台は観客席の反応も含めて作品が完成するような所があると思います。特にこの作品は、観客をバリバリに引き込んでいました。
ちょっとこの日に来ていて、声をかけられた人(特に小学生は名前で呼ばれていたし、雷おこしを貰っていた人)又は、映っていた人、凄いです!
その方たちは舞台を観に行っただけなのに、いつの間にか映画の出演者になってしまっているんですよ。
観客席と舞台の一体感が、良いですよね~。
ああ~、なんかウズウズ・・・
リンクしたラインアップ内にも書いてあることですが配役をこちらにも載せておきます。
アドリブで(だと思う)話す、家族ネタがちょっと楽しかったりしましたが、七之助は本当に綺麗だし、勘太郎の芸達者ぶりも良いし、これからもこの二人は楽しみですね。
勘三郎が勘太郎に言う
「頭が悪いのはおじさんに似たんだな。」的な事を敢えて言ったりするのですが、その時の勘太郎の無表情振りがこれがまた良いのですが、おじさんって言うのは橋之助の事ですよね。さりげなさ過ぎて笑ってしまいます。
もちろんそんな所が良いと言うわけじゃなくて、全編面白いのですよ。全編なので書けないのです。
そして二部の浄瑠璃「双面水照月(ふたおもてみずにてるつき)」 は、野分姫と法界坊の合体怨霊がお組そっくりに出てきてその正体が暴かれていくのですが、その踊りは見ごたえ十分で、これでもかと言うくらいに降り注ぐ花びらや背景の演出にも、ワクワクさせてもらいました。
シネマ歌舞伎は気軽で、癖になりそうです。