「緑子への手紙」の続き
いつだったか・・・寒い季節の入り口だった頃、私はいつも行っている二番館で「ロミオとジュリエット」と「卒業」と言う二本立ての映画を観た。私の家のすぐ近くにある公園の角の電柱には、いつも決まってその映画館のポスターが貼られる。こと有る事に、その看板を見ていた私は、そこに映っていた青年に恋心を抱くようになっていった。
レナード・ホワイティング。
私は、それまでの人生で(と言っても、わずか12年だったのだが)、こんなに美しい男の人を見たことがなかった。
映画の感想はここでは控えることにして、とにかく私はレナードの虜。彼は、知っている限りでは一度来日した。その時私は、街で偶然彼と出会い、そして彼が家にやって来るという夢を見た。英語を話す事が出来ない私は、夢の中でも殆ど話さず、見詰め合ってばかりいた。彼が帰国する日の朝、空港からわずかな時間の隙を狙って、電話をしてくると言う丁寧な夢の続きまであるおまけ付き。
でも、私の夢だと言うのに、私の都合よく彼は私を愛してはいなかった。夢のくせにー。
すがるように電話の向こうにいるレナードに語りかける私。いや、話せない、英語が話せないから。
「Adieu.」とロミオが言った。
「あたし、あなたに会いに行く。きっときっと会いに行く。あたしのこと忘れないで。」と日本語で言った。
いにしえの日本人は、夢に出てきた人が自分のことを思っているなどと、幸せな発想で生きていた。ああ、あり得ない事だ。
だけど、その夢の教訓も生きないで、私がその後せっせと英語の勉強に勤しむことはなかった。しかも、レナードに対しての想いも、意外と早くに冷めてしまった。なぜなら、次回作に恵まれず、私が知っているのは「アラビアのロレンス」のチョイ役で出ているらしいという噂しかない(あの少年がそうだったのか、と言う程度)。他にもテレビ用の映画だった「フランケンシュタイン」があるらしいけれど、見たような気もするが、どうも記憶が曖昧だ。
眠ってしまって起きたら、だんなが
「今日の映画は意外と面白かった。でも、最後がぶっちぎれていた。」と言ったのが、それだったような気がする。ああ、惜しい事をした。
緑子、あなたはオズモンズに憧れて、彼らを理解したくて近づきたくて、英語の勉強を熱心にし、大学も英米文学を取り、短大の卒業後はアメリカに留学してしまった。その後も英語が生きる仕事に着いたよね。
私にはそんな事はなかったけれど、ずっと世界史と言う科目が好きだった、。友人達は私が国文科に行ったと思っていたみたいだけれど、何処でもいいから、私は社会科の教員免許が取れる大学に行きたかった。歴史と言う物語の傍らにいたかったからだ。
ある時、丘の上の斜面に腰を下ろしながら、港の水平線を見ながら、私たちはおしゃべりをしていたね。
あなたは言った。
「あたしって、ちっぽけな心でちっぽけな未来ばかり見ているの。どうしようもなくアメリカが好きなのよ。」
私は言った。
「ちっぽけだなんて思わないわ。でも、あたしはイギリスが好きなの。未来はアメリカにあり、過去はイギリスにある。未来も過去も大切じゃない。」
足の下にある日本のことなんて何も見ていなくて、夢ばかり見ていた
13歳の頃。
あれから何年も、何年もたってしまった。
―未来はアメリカにあり、過去はイギリスにあるー
迷うことなくそんな言葉が言えた昔に、笑ってしまう。
余計な事だけれど、近影。
果たして時は残酷だろうか。変わらない素敵な目をしていると思うのだけれど。
こういうレナード・ホワイティングをよく見つけてきましたね!
そっか~確かに目元に面影はあるけど、
やっぱり頭かなあ、一番変化したのは (^▽^;)
現在も役者をやっているんでしょうか。
私も「ロミオとジュリエット」は、2~3回映画館に行きましたよ。
主演の二人とも大好きで、それこそ夢にみたくらいです。
でも、kiriyさんのように具体的には覚えてませんよ。
できれば見詰め合うだけじゃなく、抱きしめ合いたかったでしょ?
ところで、kiriyさんが今度 出かける先はイギリスじゃないですか?
>私も「ロミオとジュリエット」は、2~3回映画館に行きましたよ。
凄ーい♪ 2~3回も行くなんて、私負けましたわ。
http://lenpage.tripod.com/
こんな所に行ってみて!
いろいろ懐かしいのやらも含めて、いろいろなレナードに会えますよ。
次の記事で「ロミオ・・」の感想も載せましたが、感想になっていないかも。ひたすら賛辞です。
私にとっては、レナードの代表作がそれしかないのも悲しい限りです。(大根だったのかな~?)
←これ、コメントのお返事です。