最後までたどり着いてみれば、事件は右京が言うとおり単純な事件だった。だが、たどり着くまでには、あまりにも複雑な人々の心の迷路が、そこにはあった。
「時効」に対するメッセージの次は、「精神鑑定による不起訴」と言う法の矛盾に挑戦なのだろうか。
シーズン4(四話密やかな連続殺人・五話悪魔の囁き)で出てきた、行きずり連続殺人事件の犯人安斉が殺された。
安斉は精神鑑定の結果、刑事責任能力なしと言う結論で不起訴になっていた。指定医療機関に強制入院していたが、近々退院の予定で、外出訓練の途中での犯行だった。誰が犯人に外出訓練のことを教えたのか。右京は付き添っていたナースの真帆に疑いの目を向けるが、すぐに自首をしてきた末次とは何も接点がなかったのだった。
末次は、安斉に娘を殺された父親だった。末次は心を病んで安斉が助手を勤めていた美咲のところの患者だった。末次もまた、精神鑑定がかけられる。
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これは、娘を殺された末次の、犯人への又は精神鑑定で安斉の罪を問わなかった司法に対しての復讐だろうか。身近にいながら安斉の犯行に気が付かなかった事で、いまだに罪の意識に苛まれている美咲は、どのような関与をしているのだろうか。それとも、安斉が不起訴になったときに自殺未遂を起こした別の被害者の母、牧百合江はどう絡むのか。
殺した犯人にはやり直す機会が与えられるのに、殺されてしまった娘達の人生は、もうそこで立ち消えてしまっている。
一つの事件の犯人が捕まって世間から忘れられていっても、その被害者の家族の、又は、その犯人に関わっていた人の心の傷は深く、簡単には立ち直っていかない。
健康な心の持ち主は殺人などしない。人が人を殺そうとする時、すでにその時まともではない。殺人のその時、狂っていない人などいない。殺してしまった事実があるのならば「精神鑑定による不起訴」と言うのは一体何なのか。
「どこまで、壊れていたら良いんでしょうね。」と言う右京の言葉の中に、皮肉とも取れるメッセージがあるような気がする。
だけど、「相棒」はそんな切り口だけでは終わらない。
憑き物が落ちたような入院中の安斉は、自分のしてしまったことを只管悔いて、被害者家族に対しても謝罪の気持ちで一杯だ。かって精神科医を目指していた彼は、一人残されてしまった牧の心のケアまで気遣い、必死に立ち直ろうとしていた。
罪は罪。してしまったことは消えない。だが、人は、何時からでもやり直していくことが出来るのではなかったのか。立ち直ってやり直してはいけないのか。そこには、また別のdeepな罠が仕掛けられているような気がしてしまった。
だから、安斉は犯人の顔を見たとき、逃げなかった。私には少し微笑んでそれを向かい入れたようにさえ見えてしまった。
私はそのdeepな罠に落ち込んで、涙で画面が滲んでしまった。
今回も、面白かったですね。角田課長の「面白いもの」を教えようとして無視されて、挙句の果てに叱られて、思わず、笑っちゃいましたね。お可哀想に。
伊丹と薫のいつものいちゃつき勝負などいつもどおり小ネタには笑わせていただきました。そういえば、伊丹さん、細かい所で光っていますよね。
もしかしたら、見逃して(又は、聞き逃した)しまったのかも知れないのですが、もう一人の被害者の家族はどうしているのでしょうか。もう一回引っ張る?まさかね。。。
先週は、「雨」「三浦」がポイントだった「せんみつ」、一回抜けちゃったな。なんか悔しい気もするが、お気楽にいきましょう。と、独り言です。
よろしければ、どうぞよろしくお願い致します。
そうですね。私にも安斉は、向けられた刃をまるで迎え入れるように、抵抗せずに死んでいったように見えました。
罪に問われないのも、行き場のない心を抱える事になってしまい救われていないのかも知れない、安斉を見ていると、そんな感じがしましたね。
また、宜しくお願いいたします。
私も最後の安斉は逃げなかったように思えました。
罰せられて少しでも罪を償えることが嬉しかったんですかねぇ。
いろいろと考えさせられる回で
見終わった後、うーんとしばらく悩んでしまいました
>罰せられて少しでも罪を償えることが嬉しかったんですかねぇ
そうですよね。私も、安斉は罰せられる事を暗に望んでいたのだと感じてしまいました。犯罪を犯すときは、全ての人が狂った脳で実行してしまっていると思うのですが、その後、静かに冷静になり正常な神経に戻ってみれば、その罪を認識できる人が正常な人だと思うのです。
その罰を受け入れようとする安斉の姿に、本当に回復していたんだと思うのも皮肉のような気がしました。
―狂ったものに罪はなく、まともになったものに罰が来る。。。みたいな。
すみません。なんだか、目もちかちかしていて、ついでに頭もぼんやりしていて、判りづらい事書いてしまいましたが、単純なのに入り組んでいて私もしみじみしてしまいました。