あの時があるから今がある、と言うお話の一つです。
中学一年の入学式の翌日。
朝礼で並んだ私の後ろ、彼女はそこにいた。仮に彼女の名前は緑子としよう。新学期だと言うのに、なんとなくけだるくて体調が悪かった私。
だけど中学だからと言うものには、期待はあっても不安もなく体はブルー、心はピンクと言う12歳だった。
朝礼が終わって教室に入るとき、緑子が当たり前のように声をかけてきた。
顔は知っていたが、小学生時代に一度も同じクラスになったことはなかった。パッとしない、だけど埋もれてもいない彼女、そんなイメージだった。私には何の興味もない少女のはずだった。
だけど、
「ねえ、今日さぁ・・」
まるで、昔から友達だったかのように話しかけてきた少女は、その後すぐに私の親友になり、今でもずっとずっと心の中で大切にしている「時の欠片」である。
今年のバレンタインに書いたエピソードは、その彼女との思い出の一つだ。
私たちは時々横浜駅のダイヤモンド地下街やジョイナスなどに遊びに行き、お揃いのものを買った。例えば校則破りの銀のリボン。私がポニーテール用に幅広なら、彼女は同じものの幅の狭いものを買った。二つに髪を分けていたからだ。
それから紙袋。そしてノート。彼女の模様はいつも星条旗。私の模様ははいつもユニオン・ジャックだった。
彼女はいつもアメリカを見ていた。私はイギリスに思いを馳せていた。
緑子がその頃好きだったのはオズモンズ。前はオズモンドブラザーズと言っていたが、いつの間にか名前が変わっていた。彼女は彼らのファンではあったけれど、取り分けダニー・オズモンドのファンだった。
その思いはどんどんエスカートしていき、彼女は目はいつもアメリカに向けられるようになって行った。
私がイギリスに思いを馳せるようになったのは、別にそれに対抗してというわけではなかった。
中一の夏休みに私は「イギリスの歴史」と言う本を読んだ。世界の歴史のシリーズもので、続けてたぶん私はドイツの歴史、スペインの歴史、ロシアの歴史を読んだのではないかと思う。だけど、最初に読んだ「イギリスの歴史」の本の面白さとは比べ物にならなかった。かって、大英帝国と呼ばれ、あらゆる世界に影響を与えていたイギリス。イギリスの歴史を学ぶと、中世のヨーロッパが見えてくる。
―中学時代は考える時代である。人生の思考の原点が作られる。―
と、ずっと思っていた。自分の人生を振り返ってそう思っていたのだが、今、周りの少女達を見ていると、少し首を傾げてしまう。傍から見ると、実は私も何も考えていないように見えていたのかもしれない。または、何も考えていないように見える少女達のその内面は、土砂降りの雨のように思考の雨粒が降り注いでいるのだろうか・・・(信じられないが・・)
だけど、今の,ジャニーズに心ときめく少女達との共通点は、しっかりとある。如何に私が真面目少女であったとしても、ユニオンジャックが、それで「オズモンドブラザーズ」率いる星条旗に対抗する理由が「イギリスの歴史」と言う本であるわけがない。
それは好きになる土壌を作っただけ。
ミーハーにはミーハー・・・・
長くなったので、又明日。