「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

難病の在宅ケアの現場

2007-09-01 16:48:26 | 医療
在宅療養を可能にするには、
多職種の連携が必要である。

色々な問題が山積みになった現場である。
本日9/1、在宅医療の現場を見て、感じたことを書いてみた。

①介護・看病するもののレスパイト
24時間365日、家族は付きっ切りになることが多い。
家族は、時にはゆっくりしたいことがある。
日中の何時間かでもあれば休まる。
家族が一息ぬくことができる、レスパイトのための、
入院や療養所があればよいが、なかなかそうはいかない。
家族の代わりが出来るヘルパーもなかなか見つかりにくい。

②難病医療の医療器具の貸与制度
人工呼吸器をつけて、自宅で介護する場合もある。
この場合、人工呼吸器自体や、
体の中の酸素濃度を計るパルスオキシメーター、
医療器具やモニターが、あればより安全な介護看護が出来る。
家族が買うには、高価である。
行政による貸与制度などがあると助かるであろう。

③在宅療養への訪問理学療法士
呼吸機能訓練法、はい痰など、在宅療養中のところへ、
訪問の形で理学療法士が通えることができるなら、
療養の質がより向上できるはずである。
ただ、人材面で、ここまでのサービス提供は難しい現実がある。

④介護点数枠
訪問介護・看護の認められる点数が決められている。
一律ではなく、個々の家庭のケースで、どうしてもという場合、
医師意見書をもって、審査会で審査の上、制限点数を増加させることが、
できるようにして行きたい。

⑤緊急通報システム
 年老いた家族が、介護・看病する場合、その家族自体に何かある場合があるかもしれない。その家族になにかあって、介護・看病するものが、人工呼吸器を使用していた場合、共倒れになってしまう。このような時や、介護・看病する家族ひとりでは、どうしようもならないとき、緊急通報システムを利用したいものである。これを押せば、消防署や、近所の人につながり、助けが入るように。
 あらたな地域創りの中に、緊急通報システムで、駆けつける人が近所に現われる地域になればよいと考える。それは、近所の知り合いでも、近所の消防団員でもよい。救急車到着よりも、すぐに駆けつけられるかもしれない。
 昔は、普通にやっていたことができにくくなってきた。だから、もう一度、助け合いシステムを入れるところから始めるのである。

⑥災害時の対応を考えること
 災害時の対応も考える必要がある。人工呼吸器は、24時間ほど、外部バッテリーでもつが、電気復旧や、人工呼吸器のある場所まで24時間以内にいけることはまれ。手動で、人工呼吸をできるよう、家族周りの人は、心がけておく必要があるかもしれない。
 また、災害の時、地域の人が、逃げるに当たって、援助を必要とする人というのを頭にいれ、援助できるように、災害前からリストに入れておく必要がある。

⑦嚥下機能
 飲み込みが落ちてくるケースがある。飲み込みの機能(嚥下機能)をきちんと評価し、水ではなくとろみをつけるとか、一度の与える量をどれ位にするとか、ベッドは何度にあげるとか、頭はどちら向きがよいとか、チューブで栄養をいれるとか、方策が立つ。きちんと評価しなくては、飲み込みを誤って、肺にいれて、誤嚥性肺炎が起こりうるので、注意が必要である。


以上。
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マクロとミクロ

2007-09-01 03:28:10 | メディア・リテラシー
政治をする場合、私の一生悩むであろうテーマを、
本日8/31、日経の夕刊のコラムが取り上げていたので、
転載したい。

東京大学教授 吉川洋氏の文章。

題して『マクロとミクロ』

***コラムより***
 象は大きい。蟻は小さい。幼い子供でも知っている素朴な体験から始まるマクロ(大きい)、ミクロ(小さい)という区別は、様々な学問で重要な役割を果たしている。
 「マクロ」は単に大きいだけではなく、多数の構成要素(ミクロ)から成る。むしろ大きさそのものはマクロにとって相対的で二義的ともいえる。バクテリアは肉眼では見えない小さなモノだが、多数の分子から構成されているので、分子をミクロとすればマクロというわけだ。
 私たちはマクロをどのような方法で理解すればよいのだろうか。ミクロの動きを正確に捉えて足し合わせれば良さそうなものだが、それではうまくいかない。マクロを構成するミクロの要素の数があまりに大きいからだ。しかもミクロの動きはいるでも「揺らぎ」を持っている。給料も価格も変わらなくても、わたしたち一人一人が昼食に何を食べているか、ミクロの選択は日々揺らいでいる。
 ミクロの動きを正確に追うことは止めて、マクロを統計的に把握する。こうした方法は物理学で始まったが、明確な意思を持って行動する人間の社会を、あたかも分子の集まりと同じように扱うことは果たして有効なのか。当然の疑問に対して、寺田寅彦は「物質群として見た動物群」(1933年)というエッセーで「イエス」と答えた。
 残念ながら経済学の世界ではこうしたマクロ特有の方法論が未だ受け入れられていない。同じ論文で寅彦は書いている。「科学の進歩を妨げるものは素人の無理解ではなくて、いつでも科学者自身の科学その物のの使命と本質とに対する認識の不足である。」深く味わうべき言葉だと思う。

***コラム終わり***

 例えば、“健康になろうとする行動”について考える。
 区民のひとりひとりの健康になろうとするための行動は、「ミクロ」である。
 それを、行政では、中央区民の健康行動として「マクロ」にとらえて表現しなくてはならない。それは、区民代表者の声を聞いたり、アンケートや健診データ、検査データを集計し、統計処理して(平均化するなどして)、中央区民の“一般的な”健康行動を「マクロ」に出す。
 「マクロ」に出した健康行動が、ひとりひとりの「ミクロ」な健康行動にどれだけ当てはまったものになるのかが、行政の腕の見せ所。
 ただ、出したから終わりというのではなく、出したものと各個人との差を検証し、実態にあわしたものに変えていく努力をしなければならない。区議もまた、一人ひとりの声を聞き、マクロとの差を明らかにし、差を縮める努力をしなければならない。
 中央区行政がこれから、区民のひとりひとりの健康行動を分析してだしたマクロな健康行動を参考にして、健康プラン、食育プランを立てていく。是非、マクロのこの部分が当てはまらないとかいう声を、届けていただきたい。


 なんでもそうなのである。
 中央区の子ども達の勉強は?
 中央区の親御さんの子どもの勉強への考えは?
 中央区民の病気療養での希望は?
 中央区民の食の安全への関心は?
 中央区民の日本の食の台所「築地市場移転問題」への考えは?
 中央区民の環状二号線地表化への考えは?
 中央区民のボランティア活動は?
 中央区民の病児保育事業への希望は?
 
 
 多数決が、マクロでもないと思う。
 組織の代表者が言ったからといって、その組織のマクロを正確に捉えているとも限らない。
 安易にマクロを設定していないか、常に反省したい。

「ミクロひとつひとつの丁寧な分析の上に立って、マクロを出す」ことは、
「何事も現状維持の力が働いている、その現状維持の力に勝つ」ことと、
「これからの社会を変えるのは、人の輪である」ということともに、
 政治における私の課題である。

 
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8/31 第2回 健康中央21推進委員会 開催される

2007-09-01 02:30:00 | 医療
第2回 健康中央21推進委員会が、
8/31金 午後6時30分から
中央区保健所2階大会議室で開催された。

傍聴者として、出席してきた。
医療保健福祉関連の計画策定に関しては、
医師としての専門家の目で分析していく
責任が私にはあると感じている。

まず、この委員会の運営自体の感想。

①欠席者が多すぎる。
学識経験者3名中の1名欠席。
医療関係団体6名中の3名欠席。
福祉・教育関係団体8名中の2名欠席。
どうか、委員に選ばれた方は、休まないようにお願いしたい。

②委員会での活発な意見交換がほしい
意見交換が活発になされたかというとそうではない。
せっかくの場である。
今日の内容は、専門的な統計も多く、難しくもあったから、しかたがないというのもわからないではない。しかし、行政側が準備した資料が読まれるのを聞いて、それで終わりというのではなく、なんでも言っていいのではないだろうか。間違いを恐れてといっても、すくなくとも一人の意見ではあるのであるから、言ってよいと私は思う。積極的にご自身の分析を言われる方がいらっしゃった。
言うことから、なにか、新たなひらめきが生まれるのだと思う。

③活発な意見交換が生まれるような努力が望まれる(含む パブリックコメント)
議題・資料は前もって委員に送り、分析しておいてもらう。また、一般区民をもっとたくさん応募して、会に出席していただいたり、パブリックコメントを受け付けるようにする。

④医学統計の専門家
私も数学や論文を書く時に泣かされたのが、統計学。数字が出て、ただ大きい小さいでよろこんでいられない。統計上は、同じ大きさであり、差がでないことが多々ある。統計の専門家の存在は欠かせない。行政では、統計処理はどうしているのだろうか?


⑤細かい気づいた内容
細かい気づいた内容をメモ程度に忘れないよう書き記す。
私自身の分析が甘いところがあるかも知れない点を、どうかご容赦願いたい。
分析を入れ、文章を今後訂正する可能性もあり。

1.年齢調整死亡率は、男女別のデータもほしい。

2.23区間接年齢調整死亡率で高いがんによる死亡率
23区間接年齢調整死亡率で、23区中、中央区の女性では、肺がん死亡率ワースト1位、乳がん死亡率ワースト1位、子宮がん死亡率ワースト5位。中央区の男性では大腸がん死亡率ワースト4位。なぜ、中央区で特徴的に高いのか、それは間接年齢調整という処理が、中央区の人口構成・規模では不利に働くのか?それとも真実なのか?がん死亡率の高い理由の分析が必要。

3.乳児(生後1年未満)の死亡率
平成17年の死亡数は、出生841人に対して2人。(1000人中2.3人)統計として、意味があるのかどうか。死亡数が少ないが故に、死亡原因も明らかにしてもよいかもしれない。

4.歯の状態
年齢別現在歯数、80歳のデータがない。80歳の健診が存在しないからではあるが、「80歳になったも20本の歯」(8020運動)展開しているので、80歳での状況が何らかの形で、わかるようにしたい。また、高齢者の場合、歯の数だけでなく口腔内の機能の評価が必要。

5.学年別肥満傾向の割合
数値が、男子 小6 6.5 が 中1 0.6と落ちている。これは、真実を表していない気がする。なぜ?学校医の目に依存した現象なのだろうか。

6.80歳の低体重
80歳で低体重の割合が増えている。高齢者の低栄養は、今後考えるべき課題かもしれない。

7.医師の評価基準の差
健診は、保健所であれ、個々の医院であれ健診を行う医師により、評価基準がわかれる場合がある。統計をとるのであれば、評価基準の標準化も必要かもしれない。

8.65歳の平均余命、65歳の健康寿命
このデータは、高齢者施策の評価に重要なものかもしれない。この数値を伸ばすこと、とくに健康寿命をのばすことが、一番の数値目標になるのではないだろうか。

今のところ(2007-09-01 02:30:00)、以上。

次回第3回委員会は、10月下旬開催予定。
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