「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

【新型インフル UP DATE15】 最小被害へ「手の内」あり 岡部信彦氏論説

2009-05-03 19:41:18 | 各論:新型インフルエンザに備える

 本日、産経新聞に、感染症の権威、国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦氏の論説が載っていたので、掲載します。
 内容的には、手洗い・うがい・マスク、不用不急の外出の自粛、企業活動の自粛など基本的な事柄です。その基本的な事柄の構築を社会にひろめられたおひとりとしての貴重な論説と考えます。

 下線、太字、赤字は、小坂による。

****産経新聞(09/05/03)転載*****
【感染症と人の戦い】国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦
2009.5.3 03:18
 
このニュースのトピックス:新型インフルエンザ
 ■最小被害へ「手の内」あり

 とうとう来たか、という思いだ。インフルエンザの専門家たちが長年、なかばオオカミ少年にでもなったかのように「いつか来る」と言い続けてきた新型インフルエンザが発生し、世界中に感染が広がっている。メキシコに端を発した豚由来のインフルエンザ(H1N1型)は、世界保健機関(WHO)の警戒水準(フェーズ)を世界的大流行(パンデミック)の一歩手前である「5」に引き上げ、このコラムのタイトルにあるように、人とウイルスの戦いは、まさに臨戦態勢に入った。

 幸いなことに、姿を現したのは、これまで最大の仮想敵として警戒されてきた高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の変異ウイルスではなかった。目の前に現れた新型インフルエンザは、通常のインフルエンザとして毎年流行していたAソ連型と同じ「H1N1型」だが、似て非なるものだ。過去数回の大流行と同じ「豚」を経てやってきたが、鳥由来のものほど手ごわくなさそうに見える。

 日に日に感染報告数が増え、世界を覆う空気は不安に満ちているが、小説やマンガのような「死のウイルス」がやってきたのではないし、正体不明のものが突然現れたのでもない。私たちはこれまで準備を重ねてきたし、少なくとも国内での被害を最小に食い止める「手の内」がいくつかあり、ひとりひとりの「心構え」にその成否がかかっているのだ、とお伝えしておきたい。

 ほんの数年前まで、私たちは新型インフルエンザに対してほとんど“丸腰”だった。2002年、SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生した際、初期段階では「新型インフルエンザ発生か」と関係者に緊張が走った。それが本当に新型インフルエンザだったならば、現在の何倍も状況は混乱したに違いない。この反省もあり、その後、各国が連携したインフルエンザ監視体制の構築や、ワクチンの開発、抗ウイルス薬の備蓄など、新型インフルエンザへの備えが進められてきた。そうした備えは完璧(かんぺき)なものとは言い切れないが、既存の対策に「微調整」を加えれば、十分に太刀打ちは可能だ。

 これまで備蓄を進めた抗ウイルス薬「タミフル」や「リレンザ」は今回のウイルスに効きそうだ。うまく使えば、ワクチンが製造されるまでの間を乗り切ることができる。限りのあるものの無駄遣いはできないが、熱が出たら早めに使うという方針が良い。

 外出や企業活動の自粛…。ウイルスとの戦いは、一時的に個人の日常生活を大きく制限し、不便の連続となるかもしれない。以前、本欄でスペイン型インフルエンザに見舞われたアメリカの3都市を比較し、学校閉鎖や集会自粛など「ソーシャルディスタンシング(社会的な隔離)」を早めに行った都市では、対応が遅れた都市と比べ、人的被害が小さく食い止められた事例を紹介した。

 新型インフルエンザは、症状が出始めたときには、すでに周囲に感染を広げている可能性がある。熱やせきが出始めたら、早めにマスクをつけるなど、他の人にうつさないための心遣いをしてほしい。新型インフルエンザを前に、落ち着いた行動を取るのは自分の身を守るためだけでなく、社会を、ひいては次世代への教訓を残すためにも重要なものとなる。(おかべ のぶひこ)

****転載終わり******

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【新型インフル UP DATE14】 新型インフル 世界的な対策の要 WHO、その組織について

2009-05-03 15:14:23 | 各論:新型インフルエンザに備える
 私が、新型インフルエンザの情報を出す場合、重きをおいている情報源のひとつは、WHOです。
 ただ、WHOという組織を理解しておかねば、出された情報を解釈し誤る可能性があります。
 例えば、記事の最後にかかれていますが、フェーズ5が6にあげられるタイミング。フェーズの定義と出されたタイミングのズレが、生じる可能性が存在します。
 丁度、WHOを分析した記事がありましたので、掲載します。

 下線、太文字、下線は小坂による。

****読売新聞(09/05/03)転載*****

WHO、迅速な情報収集 「隠せば被害広がる」

新型肺炎の教訓生かす

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)対策の陣頭指揮で、一躍注目を集める「世界保健機関(WHO)」。感染症対策だけでなく、たばこ規制、食の安全の基準作りなど、生活に直結する様々な分野で「指針」を定めている。国連機関として「中立不偏」を原則とするが、国際政治の荒波をかぶりがちだ。(ジュネーブ 大内佐紀、金子亨)

■万人の健康

 「過去の例からインフルエンザは途上国でより深刻な被害をもたらすことがある」。新型インフルエンザの警戒レベルを「フェーズ5」に引き上げると発表した4月29日の記者会見で、マーガレット・チャン事務局長は、先進国に比べ公衆衛生が不備な途上国への目配りを見せた。

 1948年に発足したWHOの活動根拠は、「世界保健機関憲章」。憲章は「あらゆる人に最高の保健衛生を確保すること」をうたい、ジュネーブの本部の下に、西太平洋、アフリカなど6地域委員会がある。

 初代から7代目チャン現事務局長(2007年~)まで、トップはいずれも医師。4代目は日本人の中島宏氏(1988~98年)だった。ただ、地域事務所も含め約5000人の正規職員では、医師よりも法律や行政の専門家の方が多い。

 医師が活躍するのは、事務局長の諮問委員会や専門家委員会の場。通常、各国のトップレベルの医師・研究者が指名され、意見をたたかわせた上で、事務局長に提言する。

 新型インフルエンザの警戒レベルを協議する「緊急委員会」メンバーは、日米加などの16人。ほかにも、エイズやマラリアなど病気ごとに異なる委員が指名されている。

 WHOの財政基盤は、加盟国の拠出金と任意の寄付で、08~09年予算額は42億ドル(約4200億円)。日本は米国に次ぐ16・6%の分担金を担う

■反省

 世界が注視する「警戒レベル」は「国際衛生規則」(IHR)に基づく。1969年以来改訂を繰り返してきたIHRには、2003年の新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)、04年からの鳥インフルエンザの教訓が反映されている。教訓とは、「隠すことで、被害は広がる。隠すことは許されない」というものだ。

 SARSは中国から、鳥インフルはインドネシアからの情報提供が遅れた。いずれも社会・経済への打撃を恐れた当局の「ことなかれ主義」があった。

 WHOは、この反省から05年の改訂で、「公衆衛生に関する危機や国際的に影響を及ぼしそうな懸念事項が発生した場合」、加盟国にWHOへの可及的速やかな通報を求めた。

 こうして集まる情報に基づき、緊急委員会が「フェーズ1」から「6」の警戒レベル見直しを検討。緊急委の提言を受け、事務局長が見直しを最終的に決める。各国は警戒レベルに連動して対策を定めており、事務局長の決定は法的な強制力こそないものの、各国の対策を規定することになる。

 WHO発の情報が、加盟国に迅速、かつ的確に伝わるよう、加盟国には5人ずつの「連絡係」が指定されており、WHOが「緊急事態」を認定した場合、一斉に同時通報メールが発出される。各国は、この情報を24時間体制で監視する仕組みを整えることになっている。

■任務多様化

 公衆衛生は、元々はペストやコレラなどの伝染病対策から生まれた概念で、WHO発足時の任務は伝染病に関する情報収集、支援が主だった。だが、21世紀に入って任務は多様化が著しい。

 背景には、グローバル化の進展がある。WHOのホームページは、活動分野として、飲み水の安全性確保、高齢化社会への備えなど、実に200近くを挙げている。

つえとへび
 WHOの紋章の中央には、1本のつえに絡みつくヘビが描かれている。ギリシャ神話の医学の神アスクレピオスのシンボルだ。

「フェーズ6」宣言にジレンマ

 190か国以上が加わるWHOにとって、有力加盟国の立場には配慮も必要だ。「科学に立脚」「中立」の原則が揺らぐこともある。

 新型インフルエンザの呼称から「豚」を取り去るにあたり、WHOの科学者の間では、「従来のソ連型と混同される」と異論が噴出した。だが、米国をはじめ各国の養豚産業が「豚」と呼び続けることに強く反発。WHO関係者は「結局、(事務局長の)鶴の一声で『豚』が外れた」と明かす。

 警戒レベル引き上げを検討する「緊急委員会」では、米国やメキシコの参加者が「フライングは困る」と声を上げるたびに、積極論がしぼんだという。

 今、WHOが直面する最も困難な問題は、最高レベルの「フェーズ6」に踏み込むかどうかだ。「6」の条件は明文化されており、欧州やアジアなどアメリカ大陸以外で人から人への持続的な感染が確認されれば満たされる。だが、緊急委員会の田代真人委員(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)は、「それほど単純でない。宣言で得られる『効果』と、社会・経済的な影響のバランスをチャン事務局長は考えざるを得ない」と述べる。

 ある外交筋は、「チャン事務局長も、世界経済危機のさなかに『6』を宣言し、『世界経済回復の足を引っ張った』と後ろ指さされたくない」と見る。条件が満たされたのに宣言しなければWHOの信頼が失われる。同筋は、「いずれは『6』宣言が避けられなくなる可能性があるが、その場合は、主要国に根回しし、潘基文国連事務総長とも協議して、国連全体の『連帯責任』の形に持って行くのでは」と予測する

2009年5月3日  読売新聞)

*****転載終わり****
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【新型インフル UP DATE 13】 新型インフル 過去の教訓より、考え方を学ぶ

2009-05-03 14:49:08 | 各論:新型インフルエンザに備える
 新型インフルエンザの報道の中で、いかに考えていくかその考え方をもつのに役立つ記事が時々出されています。
 この記事もそのひとつと思い、転載いたします。
 下線、太文字、赤字は、小坂による。

*****読売新聞(09/05/03)転載****

新型インフル、過去の教訓 おびえず冷静な行動

新型肺炎の教訓生かす

 新型インフルエンザが発生した。予想される事態を、どう乗り越えたらよいか。20世紀に大流行したインフルエンザから教訓を探る。(宮崎敦)

◆スペインかぜ

 「世界的感冒 到る處 猖獗を極む」「五千の死亡者 各都市荒廃 南米聯邦惨状」……。1918年(大正7年)10月25日、読売新聞が報じた、スペインかぜの記事の見出しだ。

 スペインかぜ(H1N1)は同年3月、米国で発生した。第1次大戦出征兵士と共に大西洋を渡り、欧州を席巻。戦時報道規制の中、中立国だったスペイン王室の感染が大きく報じられ、スペインかぜの名が定着した。第2波、第3波と大流行を繰り返し、死者は世界で約4000万人に上った。

 日本には秋に第1波が上陸。12歳だった福岡市の地三郎さん(102)は、広島県での流行を克明に覚えている。両親と兄弟4人が感染。「ガラスが刺さったように」のどが痛み、母親が病気を押して看病した。学校が2週間休校になり、回復して登校すると、友人数人が亡くなっていた。

 当時、薬剤を染みこませた「黒マスク」が登場した。値段が高く、裕福な人しか買えなかった。医者も死んだと聞き、慄然とした。

 「貧しい人が多く亡くなった。今は栄養状態も医療もいい。おびえるより、自分の健康、免疫力を高めておくことが大事」。地さんは、諭すように語る。

◆アジアかぜ・香港かぜ・ソ連かぜ

 アジアかぜ(H2N2)57年香港かぜ(H3N2、A香港型)68年、香港で発生したとみられる。

 松本慶蔵・長崎大名誉教授(80)(呼吸器内科)は、仙台で流行を経験。アジアかぜに感染し、39度超の熱が3日以上続き苦しんだ。

 インフルエンザでダメージを受けた肺に、黄色ブドウ球菌が感染し、重症化する例が目立った。ただスペインかぜの時と違い、ペニシリンなど抗菌薬が普及していた。死者の多くは、肺気腫や結核手術などで呼吸機能が落ちていた。

 「現代なら肺炎球菌による高齢者の肺炎が問題になるが、肺炎球菌にはワクチンがある。未接種の人は、受けた方が安心」と松本名誉教授はアドバイスする。

 ソ連かぜ(H1N1、Aソ連型)77年、中国で発生した。スペインかぜとウイルスが似ており、免疫がある人がいて流行が穏やかだったため、新型ではなく「亜型」との説もある。

 インフルエンザは新型が出現するたび、旧型がなぜか消失していたが、ソ連型と香港型は、共存して同時に流行を繰り返している。

◆2009年新型

 メキシコで発生した新型(H1N1)は、Aソ連型の免疫があってもかかりやすく、現代人が経験していないのは確実だ。

 免疫がないインフルエンザが上陸すると、何割の人が感染するのか。アフリカ・マダガスカルでA香港型が初めて流行した2002年、住民の67%が感染したとみられる地区もあった。3人に2人が高熱を出すシナリオも、予想できる

 スペインかぜ当時と違うのは、栄養状態がよくなり、抗菌薬や抗ウイルス薬などの対抗手段もあること。逆に、高齢者や生活習慣病など高リスクの人が多い、交通が発達し短期間で広がるなど、対応が難しい面もある。スペインかぜは世界中に広がるまで1年近くかかったが、今なら4~7日で地球を一周する

 松本名誉教授は「新型の重症度は不明だが、インフルエンザであることに変わりはない。過去の経験を生かす準備はできている。パニックに陥ることなく、冷静に行動することが大事だ」と話している。

2009年5月3日  読売新聞)

*****転載終わり*****
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする