中央区のまちづくりの問題点を精力的にとられた東京新聞特集記事の三日目を見てみたい。
中央区のまちづくりの典型的な問題点が、描かれている。
日本の東京一極集中の流れの中、本区もご多分にもれず、人口回復をなしえた。
ハード面を整備したはよいが、そこで住む住民や周辺地域とともにできるコミュニティが快適に生活できるハード及びソフト面の整備が追いついていかなかった。
それがいま、中央区のあちらこちらで、ひずみとしてあらわれてきている。
まちづくりの発想のありかたをもう一歩進めねばならなかったはずである。
経済功利主義唯一では、まちづくりは、もたない。
「文明と文化の共生」からは、程遠い「文明一辺倒」のやり方では、決してもたない。
ハード偏重の住宅整備は、まだまだ続いていく。
遅ればせながらも、ハード、ソフト両面からのコミュニティ作り、子育ての場作り、医療介護保健福祉の場作り、循環の仕組み、環境配慮、防災対策、交通基盤整備をなさねばならない。
キーワードは、時間:その地域の歴史、空間:その地域の地理、ひと:生きるひととひとをつなげるもの。お祭りもそのひとつ。
*****東京新聞(2010/12/09)*****
変容のまち 検証・月島の開発(下)見えない壁 「もの言う新住民」孤立
2010年12月8日
地下鉄の月島駅を降りて「もんじゃストリート」に向かうと、三十二階建ての高層マンション「アイ・マークタワー」がそびえ立つ。そのロビー脇の談話室で九月、元管理組合副理事長の男性が思わせぶりに話した。「このままだと、自分たちで自治会をつくる選択もあり得ます」
タワーは二〇〇三年、中央区月島一丁目に完成した。富裕層の新住民を中心に約三百五十戸が入居する月島で指折りの物件だ。四年前に地元町会に入会したが、今年五月に持ち上がったある問題をきっかけに両者にすき間風が吹いている。
タワーの真向かいに、高さ百八十七メートルの超高層マンション(五十三階建て、七百五十戸)を核とする再開発計画が浮上したのが原因だ。タワーにとっては高さが二倍近いビルが建ち、住環境の悪化は避けられない。
一方、古参住民が中心の町会は再開発を歓迎している。高齢化著しい月島では老朽化した住宅の建て替えが急務だ。今回は開発業者と地権者が再開発組合をつくり、古い家で暮らす地権者がそのままマンションに移れるよう考えている。借家に住む低所得の高齢者が月島に住み続けられるような工夫も検討中。国の交付金も見込む官民連携事業だ。中層棟には区の高齢者施設が入る。防災の向上にもつなげるという。
これに対し、タワーの住民は「計画で大きな影響を受けるのに意見を反映させる場がない。税金を投じる事業なのにおかしい」と、対策推進委員会を立ち上げ異議を唱えた。現在、タワー住民の町会役員はゼロ。役員選挙はなく、新たな役員は役員同士の話し合いで決める。あうんの呼吸を知らない新住民には、旧来のやり方が不透明に映る。「もの言う新住民」は孤立しつつある。
「町会内にもこのままじゃいけないという声はあるが、弁が立つ新住民にかき回されると困るのでは。新住民の多くは総会や防災訓練に顔を出さないし、どっちが正しいとも…」。古くからの月島住民でタワー入居者でもある商店主は、両者の板挟みで気苦労が絶えないという。
タワーが建設された当時、地元で反対運動が起きた。しかし新旧住民は祭りなどを通じ、少しずつ距離を縮めてきた。その最中に持ち上がった新たな開発が、再び地域の火種になりそうだ。
矢吹和重・町会長は当選十一回のベテラン区議でもある。再開発問題でタワー住民と口論もしたが、「町会はファミリー」が持論だ。今期で引退するため、十一月の議会では議員生活最後の一般質問として、「新しく来た人と古くからいる人が同化するための施策を」と訴えた。
しかし区の答弁に具体策はなかった。「子どもの運動会など日々の地道な活動の中で、交流も進んでゆくのではないか」
区は人口増加を最優先にし、新住民を増やし続ける当事者だ。しかし、「開発後」の問題意識は薄く、まるで人ごとのように映る。
(この企画は、岡村淳司が担当しました)
中央区のまちづくりの典型的な問題点が、描かれている。
日本の東京一極集中の流れの中、本区もご多分にもれず、人口回復をなしえた。
ハード面を整備したはよいが、そこで住む住民や周辺地域とともにできるコミュニティが快適に生活できるハード及びソフト面の整備が追いついていかなかった。
それがいま、中央区のあちらこちらで、ひずみとしてあらわれてきている。
まちづくりの発想のありかたをもう一歩進めねばならなかったはずである。
経済功利主義唯一では、まちづくりは、もたない。
「文明と文化の共生」からは、程遠い「文明一辺倒」のやり方では、決してもたない。
ハード偏重の住宅整備は、まだまだ続いていく。
遅ればせながらも、ハード、ソフト両面からのコミュニティ作り、子育ての場作り、医療介護保健福祉の場作り、循環の仕組み、環境配慮、防災対策、交通基盤整備をなさねばならない。
キーワードは、時間:その地域の歴史、空間:その地域の地理、ひと:生きるひととひとをつなげるもの。お祭りもそのひとつ。
*****東京新聞(2010/12/09)*****
変容のまち 検証・月島の開発(下)見えない壁 「もの言う新住民」孤立
2010年12月8日
地下鉄の月島駅を降りて「もんじゃストリート」に向かうと、三十二階建ての高層マンション「アイ・マークタワー」がそびえ立つ。そのロビー脇の談話室で九月、元管理組合副理事長の男性が思わせぶりに話した。「このままだと、自分たちで自治会をつくる選択もあり得ます」
タワーは二〇〇三年、中央区月島一丁目に完成した。富裕層の新住民を中心に約三百五十戸が入居する月島で指折りの物件だ。四年前に地元町会に入会したが、今年五月に持ち上がったある問題をきっかけに両者にすき間風が吹いている。
タワーの真向かいに、高さ百八十七メートルの超高層マンション(五十三階建て、七百五十戸)を核とする再開発計画が浮上したのが原因だ。タワーにとっては高さが二倍近いビルが建ち、住環境の悪化は避けられない。
一方、古参住民が中心の町会は再開発を歓迎している。高齢化著しい月島では老朽化した住宅の建て替えが急務だ。今回は開発業者と地権者が再開発組合をつくり、古い家で暮らす地権者がそのままマンションに移れるよう考えている。借家に住む低所得の高齢者が月島に住み続けられるような工夫も検討中。国の交付金も見込む官民連携事業だ。中層棟には区の高齢者施設が入る。防災の向上にもつなげるという。
これに対し、タワーの住民は「計画で大きな影響を受けるのに意見を反映させる場がない。税金を投じる事業なのにおかしい」と、対策推進委員会を立ち上げ異議を唱えた。現在、タワー住民の町会役員はゼロ。役員選挙はなく、新たな役員は役員同士の話し合いで決める。あうんの呼吸を知らない新住民には、旧来のやり方が不透明に映る。「もの言う新住民」は孤立しつつある。
「町会内にもこのままじゃいけないという声はあるが、弁が立つ新住民にかき回されると困るのでは。新住民の多くは総会や防災訓練に顔を出さないし、どっちが正しいとも…」。古くからの月島住民でタワー入居者でもある商店主は、両者の板挟みで気苦労が絶えないという。
タワーが建設された当時、地元で反対運動が起きた。しかし新旧住民は祭りなどを通じ、少しずつ距離を縮めてきた。その最中に持ち上がった新たな開発が、再び地域の火種になりそうだ。
矢吹和重・町会長は当選十一回のベテラン区議でもある。再開発問題でタワー住民と口論もしたが、「町会はファミリー」が持論だ。今期で引退するため、十一月の議会では議員生活最後の一般質問として、「新しく来た人と古くからいる人が同化するための施策を」と訴えた。
しかし区の答弁に具体策はなかった。「子どもの運動会など日々の地道な活動の中で、交流も進んでゆくのではないか」
区は人口増加を最優先にし、新住民を増やし続ける当事者だ。しかし、「開発後」の問題意識は薄く、まるで人ごとのように映る。
(この企画は、岡村淳司が担当しました)