築地市場移転候補地である土壌汚染の土地を不当に高い価格(汚染がない価格)で東京都は購入し、また、今年度予算でも残り分を購入しようとしています。
不当に高くなった購入費のしわよせが、果たして都民や市場関係者の負担になってよいものなのでしょうか。
また、「ブラウンフィールド」(塩漬け土地)という概念が、環境・土木分野でいわれています。
汚染対策費が、土地購入費の20%を上回ればそのように定義されるそうです。
豊洲の土壌汚染地は、土壌汚染対策費586億円、土地購入費1980億円(すでに購入720億円+今年度予算執行をするという1260億円)であり、
586億円÷1980億円=0.295 30%!で、ブラウンフィールド。
なお、専門家会議提言した当初の土壌汚染対策費は、973億円
973億円÷1980億円=0.491 50%!で、さらにひどいブランフィールドと定義されることになっていたのでした。
ブラウンフィールドを、汚染がないものとして購入し、なおかつ、その汚染対策費は、買主東京都が負担するということが、なされようとしている事実を皆様、いかに受け止められるでしょうか?
そのような状況下、土壌汚染の土地購入に関連した裁判として「豊洲汚染地購入の公金支出金返還請求訴訟」が行われています。
以下、第二回公判を中心にレポートします。
平成22年12月7日、「豊洲汚染地購入の公金支出金返還請求訴訟」 第2回公判が東京地方裁判所522号法廷でなされた。
この訴訟は、都民が本年4月に行った住民監査請求が不受理の結果になったのを受けて、提訴されたものである。築地市場移転問題では、「豊洲汚染土壌コアサンプル廃棄(証拠隠滅)差止請求訴訟」に引き続き二つ目の裁判。(ちなみに、今後、状況によっては、本年度執行予定の残りの土壌汚染の土地を東京ガスから汚染がないものとした価格(23.54ヘクタールを1260億円、53万5000円/m2)で購入することを差し止め請求する3つめの裁判が出される可能性がある。先日のブログ記載「豊洲市場用地購入の予算執行差止めのための『東京都職員措置請求』」が却下された場合にありうる。)
「豊洲汚染地購入の公金支出金返還請求訴訟」の内容は、築地市場移転候補地である土壌汚染の土地(全体で37.32ヘクタールのうちの10.18ヘクタール、27%)を不当に高い価格(汚染がない価格)、すなわち601億円(59万円/m2)で購入しており、余計にかかることになる土壌汚染対策費 全体で586億円のうち、27%分の158億8000万円(=586×10.18/37.32)を、都知事と当時の都幹部5人に返還を求める訴訟である。
この裁判で、訴える原告側都民にとっては、監査請求の「時効の壁」が大きな争点となっている。
すなわち、地方自治法242条には、「住民監査請求」に関する定めがあり、「前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」とある。
東京ガスとの間でなされた土地売買は、平成18年(2006年)に行われており、住民が監査請求をしたのは、本年4月であり、1年以上経過しており、被告である都側の主張としては、時効が成立したとしている。
それに対して、原告側は、「正当な理由」があるため、1年以上経過した監査請求が有効であると主張する。
なぜならば、住民が相当の注意力を持って調査を尽くしても、東京都が行った不当な土地購入を見抜けなかったからである。
「住民が相当の注意力を持って調査しても知り得なかった場合」も、「正当な理由」に含めることは、最高裁判例(平成14年9月12日民集56巻7号1481頁)で認められているのである。
都は、平成18年3月17日都議会経済・港湾委員会、平成18年12月12日同委員会に報告したため、原告らが、相当の注意力をもって調査すれば、監査請求をするに足る情報を知り得たという。
たしかに「秘密裏でなかった」ことは、都の主張としてわかっても、その売買の裏にある問題点は、隠されたままの報告なのであるから、その報告したことだけをもってして、あとは相当な注意力を都民に貸すのは無理がある。
さらに上記二つの委員会で東京都は、事実に反する答弁を行っており、監査請求をするに足る情報は、誰も得ることはできなかったと考えられる。
<平成18年3月17日都議会経済・港湾委員会での事実に反する答弁>
後藤参事:「すべての土地が安全となるよう処理を行っております。」
→いまや、誰もがしっているが、専門家会議の調査により日本最大規模の土壌汚染地であることが判明している!!
<平成18年12月12日都議会経済・港湾委員会での事実に反する答弁>
都答弁:「東京ガスは、環境確保条例に基づく土壌汚染対策指針に沿って、汚染土壌処理基準以下になるよう処理を行っておりますが、測定できないごく微量な物質が残留する可能性はございます。」
→「測定できないごく微量な物質」の残留ではなく、ベンゼン環境基準の4万3000倍、シアン同基準の930倍の残留が測定されている!!
<平成18年10月25日都議会公営企業会計決算特別委員会第一分科会での事実に反する答弁>
都答弁:「東京都が工事をした場合に東京ガスの操業に基づく汚染物質等が発見された場合につきましては、契約書の文言は今不確かでございますが、東京ガスが処理するという了解は得てございます。」
→東京都が東京ガスと結んだ契約では、売り主東京ガスは、「瑕疵担保責任を負わない」と(なんとも売り主東京ガスにとって有利な)契約を結んでいるのである!!
<平成19年6月21日都議会経済・港湾委員会での事実に反する答弁>
都答弁:「東京都は、平成17年5月、東京ガス株式会社との間で、処理基準を超える操業由来の汚染土壌について、同社が適切に処理を行うという内容の確認書を取り交わしております。」
→「平成17年確認書」には、新たな土壌汚染が発見された場合についての費用負担に関する規定は存在しない!!
都議会で、上記のように、事実に反する答弁を東京都が行っているにもかかわらず、果たして都民は、都議会の議事録を読んで、住民監査請求するにいたる問題点を、果たして知り得たであろうか。
相当な注意力をもってしても、普通は、東京都の答弁を信じるが故に、問題点は、知り得なかったであろう。
都は、さらに、では、「情報公開請求」をすれば、問題点を知り得たではないかと、主張してくる。
相当な注意力をもって調査することに、「情報公開請求」も含めるのは、上記議会での事実に反する答弁を見抜くこと以上に無理難題であろう。
このことも、最高裁判所判例(平成20年3月17日判決 判時2004号59頁)に、監査請求で得た情報から監査請求できるわけがないことに関しての判断を下している。
都民が、土地売買の問題点を知り得たのは、以下に示す本年1月5日の朝日新聞のスクープ記事である。
*****朝日新聞(2010/01/05)*****
築地市場移転用地、都が土壌精査せず購入 汚染報告放置
2010年1月5日3時6分
築地市場(東京都中央区)が移転を予定している豊洲地区(江東区)の土壌汚染問題で、東京都が2002年に有害物質の汚染ガスが検出された調査報告を受けていたのに、詳しい調査を実施しないまま、04~06年に予定地の一部を購入していたことがわかった。このガス検出地点の一部は、07年以降に都の調査で見つかった土壌汚染個所とほぼ重なっていた。
この土壌汚染は、移転の最大の障害となっている。都は時価の約720億円で予定地の一部の13ヘクタール余を買ったうえ、汚染対策費約586億円の支出を迫られることになった。購入前の汚染に対するチェックの甘さが、この事態を招いた疑いが強まった。
問題の土地は東京ガスの工場跡地で、市場の移転予定地は約37ヘクタール。都はまだ取得していない23ヘクタール余の購入費約1260億円を新年度予算で要求している。
都は02年7月、予定地の所有者だった東京ガスが都条例に基づき汚染の調査や除去作業を行うことで、同社と合意。同社は順次、その報告書を都に提出した。都は同社を指導監督するとともに、都の購入地として土壌汚染などの問題がないかチェックする立場で、07年までに汚染対策が適切に行われたとしていた。
朝日新聞が入手した報告書によると、東京ガスが02年10月に報告した表層土壌ガス調査では、有害物質ベンゼンのガスが88地点で検出されていた。だが、このうちボーリングによる詳細調査の実施は、高濃度ガスなどが検出された9地点にとどまり、残りの79地点は未実施だった。
これに対し、都が予定地の一部を購入した後、07~09年に予定地全体の土壌や地下水の調査を実施。環境基準を超えた地点は1475地点に上り、そのうちベンゼンが最大で環境基準の4万3千倍、シアンが930倍となった。
朝日新聞が、東京ガスの02年の調査と、都の調査を照合したところ、02年の調査で詳細調査が実施されなかった79地点のうち6地点が、都の調査で土壌からベンゼンが検出された地点とほぼ一致した。濃度は最大で環境基準の1500倍に達していた。
都は「都は東京ガスと協議しながら当時考えられる十分な対策を講じており、新たな汚染は予見不可能。汚染を知りながら買ったという認識はない」としている。(香川直樹)
*****以上******
裁判は、平成22年9月28日に初公判。
そして、今回平成22年12月7日、第二回公判。
裁判官は、原告側に2点(①1月朝日新聞のスクープ記事から、4月都民の監査請求までの期間は、相当な期間であることの証明、②監査請求書自体のコピー)要求、被告東京都側に1点(被告の6人の土地売買当時の補的な根拠に基づく権限の明確化)を要求し、10分もかからずに終了した。
次回、平成23年2月3日火曜日、11時~東京地方裁判所 522号法廷で、第3回公判が行われる。 この時は、東京都側から本格的な反論がなされる予定。
長々と経過を書きましたが、初公判の原告都民側の陳述書を読んでいただくと、頭が整理される手助けになると思われます。
****原告側弁護団 陳述書****
1本件の背景について
今回監査の対象となった豊洲の土地は,元々東京ガスの操業跡地であります。そして,ご承知のとおり築地市場の移転先として石原都政が画策しているところであります。都政における現在進行形の最大級の問題となっています。
この築地市場の豊洲移転問題をめぐっては,様々な問題が次から次に起こっています。
現在では,専門家会議・技術者会議での検討を経て,当該土地がベンゼン・シアン等を初めとして高濃度の汚染まみれの土地であることが判明しています。しかも,当時公表されていなかった発がん性物質ベンゾ(a)ピレンの存在が後になって新聞ですっぱ抜かれたり,最近では,東京ガスが盛り土をして安全であることが前提になっていたその盛り土についても,新聞によって指摘されて初めて汚染があるということが判明し,今後の汚染対策が必要であるという話になってきています。
本件は,そういった問題の内包する土地を平成18年,2006年に立て続けに都が購入したという問題であります。3回の売買で約600億円以上の莫大なお金が動きました。
この土地が東京ガスの豊洲操業跡地であることはもちろん誰もが承知しています。そして,もともと築地市場の再整備ということで進んでいた話が,石原都政誕生とともに,豊洲移転論が台頭し,本件の売買に至っているわけであります。
しかし,この東京都の動きに対して,平成12年6月東京ガスは「弊社豊洲用地への築地市場移転に関わる御都のお考えについて(質問)」を提出し,当該土地が生鮮を扱う市場には適さないのではないかと,当該土地での操業者として当然汚染者負担の問題が発生しうることを念頭においた指摘をしていた経緯もあります。
にもかかわらず,その後も都は豊洲移転を既定路線として推し進め,本件売買契約を締結しました。それぞれの契約書には,通常ありえない瑕疵担保責任についての免責規定があります。あろうことか,汚染者負担の責任原則を自ら放棄し,600億円もの都民の血税を汚染まみれの土地の購入のために使ったのであります。
2本件の争点
本件の争点は,監査請求をした時期が平成18年の売買契約のときから1年を経過しているではないかというものであります(地方自治法242条2項)。
しかし,平成18年当時石原都知事を含めた都の責任者以外の誰が,問題の本質を知りえたでありましょうか。
都が売主側の汚染者負担の責任原則を免責させていたと誰が考えたでしょうか。そのような無責任な行動を都知事が行っているとは考えておりませんでした。それどころか,都はこの契約の時期にさらに都民に対する背信的な言動に出たのであります。
一つ目の契約は平成18年2月に行われ,その報告が同年3月になされたのでありますが,その報告では,「すべての土地が安全となるよう処理を行っております」と,これも事実に反する答弁を行うのみでした。従って,この時点では都民は単に契約の存在を知りえたというにとどまります。本件の契約にあたっては。平成18年3月に至るまでに東京ガスの汚染処理がなされることになっておりました。その時点で環境確保条例に基づく平成15年指針が既に策定されておりましたが,東京ガスは基準の甘い平成13年指針に基づいて汚染処理を行ったのであります。このような事情を知りながら,都は,そのことを都民に対して隠匿し,東京ガスの汚染処理によって安全性は確保されていると強弁していたのであります。
また,汚染処理の責任問題についても事実を隠し続けました。
平成18年10月25日の,公営企業会計決算特別委員会第一分科会において,都は「東京ガスの操業に基づく汚染物質等が発見された場合につきましては,・・・東京ガスが処理するという了解は得てございます」という事実に真っ向から反する答弁をし,さらに平成19年6月21日の経済・港湾委員会における答弁においてすら,「追加調査で新たに土壌汚染が見つかった場合,その処理については誰が行い,…誰が費用を負担するのか」という都議の質問に対して「操業由来の汚染土壌について,東京ガスが適切に処理を行うという内容の確認書を交わしている」とこれまた虚偽の答弁を繰り返したのであります。
このような状況では,原告を含めた都民が本件で問題としている土地の売買について監査を必要とするという正確な判断ができなかったことは言うまでもありません。都民が問題の所在を知りえたのは,まさに平成22年1月5日の朝日新聞の報道「汚染処理 都だけ負担も 東ガス義務規定なし」との内容によったのであります。この報道によって,初めて原告の方々は,4月1日になって監査請求をなしえたのであります。
今回被告東京都は,これまでの都議会での答弁の延長線上の答弁しかしておりません。被告は,監査請求期間が経過しているのだから門前払いをすべきだと裁判所に却下決定求めていますが,これまでの経過に鑑みれば極めて不誠実と言わざるを得ません。また,これだけの都民の税金が無駄に使われているという事実を直視し,さらなる損害の拡大を防止するためにも本件訴訟が有する社会的な意義を十分に理解した答弁をすべきものと考えます。
ぜひ裁判所には,本件訴訟についての意義を十分にご理解いただき,充実した実質審理をお願いし陳述を終わります。
以上
不当に高くなった購入費のしわよせが、果たして都民や市場関係者の負担になってよいものなのでしょうか。
また、「ブラウンフィールド」(塩漬け土地)という概念が、環境・土木分野でいわれています。
汚染対策費が、土地購入費の20%を上回ればそのように定義されるそうです。
豊洲の土壌汚染地は、土壌汚染対策費586億円、土地購入費1980億円(すでに購入720億円+今年度予算執行をするという1260億円)であり、
586億円÷1980億円=0.295 30%!で、ブラウンフィールド。
なお、専門家会議提言した当初の土壌汚染対策費は、973億円
973億円÷1980億円=0.491 50%!で、さらにひどいブランフィールドと定義されることになっていたのでした。
ブラウンフィールドを、汚染がないものとして購入し、なおかつ、その汚染対策費は、買主東京都が負担するということが、なされようとしている事実を皆様、いかに受け止められるでしょうか?
そのような状況下、土壌汚染の土地購入に関連した裁判として「豊洲汚染地購入の公金支出金返還請求訴訟」が行われています。
以下、第二回公判を中心にレポートします。
平成22年12月7日、「豊洲汚染地購入の公金支出金返還請求訴訟」 第2回公判が東京地方裁判所522号法廷でなされた。
この訴訟は、都民が本年4月に行った住民監査請求が不受理の結果になったのを受けて、提訴されたものである。築地市場移転問題では、「豊洲汚染土壌コアサンプル廃棄(証拠隠滅)差止請求訴訟」に引き続き二つ目の裁判。(ちなみに、今後、状況によっては、本年度執行予定の残りの土壌汚染の土地を東京ガスから汚染がないものとした価格(23.54ヘクタールを1260億円、53万5000円/m2)で購入することを差し止め請求する3つめの裁判が出される可能性がある。先日のブログ記載「豊洲市場用地購入の予算執行差止めのための『東京都職員措置請求』」が却下された場合にありうる。)
「豊洲汚染地購入の公金支出金返還請求訴訟」の内容は、築地市場移転候補地である土壌汚染の土地(全体で37.32ヘクタールのうちの10.18ヘクタール、27%)を不当に高い価格(汚染がない価格)、すなわち601億円(59万円/m2)で購入しており、余計にかかることになる土壌汚染対策費 全体で586億円のうち、27%分の158億8000万円(=586×10.18/37.32)を、都知事と当時の都幹部5人に返還を求める訴訟である。
この裁判で、訴える原告側都民にとっては、監査請求の「時効の壁」が大きな争点となっている。
すなわち、地方自治法242条には、「住民監査請求」に関する定めがあり、「前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」とある。
東京ガスとの間でなされた土地売買は、平成18年(2006年)に行われており、住民が監査請求をしたのは、本年4月であり、1年以上経過しており、被告である都側の主張としては、時効が成立したとしている。
それに対して、原告側は、「正当な理由」があるため、1年以上経過した監査請求が有効であると主張する。
なぜならば、住民が相当の注意力を持って調査を尽くしても、東京都が行った不当な土地購入を見抜けなかったからである。
「住民が相当の注意力を持って調査しても知り得なかった場合」も、「正当な理由」に含めることは、最高裁判例(平成14年9月12日民集56巻7号1481頁)で認められているのである。
都は、平成18年3月17日都議会経済・港湾委員会、平成18年12月12日同委員会に報告したため、原告らが、相当の注意力をもって調査すれば、監査請求をするに足る情報を知り得たという。
たしかに「秘密裏でなかった」ことは、都の主張としてわかっても、その売買の裏にある問題点は、隠されたままの報告なのであるから、その報告したことだけをもってして、あとは相当な注意力を都民に貸すのは無理がある。
さらに上記二つの委員会で東京都は、事実に反する答弁を行っており、監査請求をするに足る情報は、誰も得ることはできなかったと考えられる。
<平成18年3月17日都議会経済・港湾委員会での事実に反する答弁>
後藤参事:「すべての土地が安全となるよう処理を行っております。」
→いまや、誰もがしっているが、専門家会議の調査により日本最大規模の土壌汚染地であることが判明している!!
<平成18年12月12日都議会経済・港湾委員会での事実に反する答弁>
都答弁:「東京ガスは、環境確保条例に基づく土壌汚染対策指針に沿って、汚染土壌処理基準以下になるよう処理を行っておりますが、測定できないごく微量な物質が残留する可能性はございます。」
→「測定できないごく微量な物質」の残留ではなく、ベンゼン環境基準の4万3000倍、シアン同基準の930倍の残留が測定されている!!
<平成18年10月25日都議会公営企業会計決算特別委員会第一分科会での事実に反する答弁>
都答弁:「東京都が工事をした場合に東京ガスの操業に基づく汚染物質等が発見された場合につきましては、契約書の文言は今不確かでございますが、東京ガスが処理するという了解は得てございます。」
→東京都が東京ガスと結んだ契約では、売り主東京ガスは、「瑕疵担保責任を負わない」と(なんとも売り主東京ガスにとって有利な)契約を結んでいるのである!!
<平成19年6月21日都議会経済・港湾委員会での事実に反する答弁>
都答弁:「東京都は、平成17年5月、東京ガス株式会社との間で、処理基準を超える操業由来の汚染土壌について、同社が適切に処理を行うという内容の確認書を取り交わしております。」
→「平成17年確認書」には、新たな土壌汚染が発見された場合についての費用負担に関する規定は存在しない!!
都議会で、上記のように、事実に反する答弁を東京都が行っているにもかかわらず、果たして都民は、都議会の議事録を読んで、住民監査請求するにいたる問題点を、果たして知り得たであろうか。
相当な注意力をもってしても、普通は、東京都の答弁を信じるが故に、問題点は、知り得なかったであろう。
都は、さらに、では、「情報公開請求」をすれば、問題点を知り得たではないかと、主張してくる。
相当な注意力をもって調査することに、「情報公開請求」も含めるのは、上記議会での事実に反する答弁を見抜くこと以上に無理難題であろう。
このことも、最高裁判所判例(平成20年3月17日判決 判時2004号59頁)に、監査請求で得た情報から監査請求できるわけがないことに関しての判断を下している。
都民が、土地売買の問題点を知り得たのは、以下に示す本年1月5日の朝日新聞のスクープ記事である。
*****朝日新聞(2010/01/05)*****
築地市場移転用地、都が土壌精査せず購入 汚染報告放置
2010年1月5日3時6分
築地市場(東京都中央区)が移転を予定している豊洲地区(江東区)の土壌汚染問題で、東京都が2002年に有害物質の汚染ガスが検出された調査報告を受けていたのに、詳しい調査を実施しないまま、04~06年に予定地の一部を購入していたことがわかった。このガス検出地点の一部は、07年以降に都の調査で見つかった土壌汚染個所とほぼ重なっていた。
この土壌汚染は、移転の最大の障害となっている。都は時価の約720億円で予定地の一部の13ヘクタール余を買ったうえ、汚染対策費約586億円の支出を迫られることになった。購入前の汚染に対するチェックの甘さが、この事態を招いた疑いが強まった。
問題の土地は東京ガスの工場跡地で、市場の移転予定地は約37ヘクタール。都はまだ取得していない23ヘクタール余の購入費約1260億円を新年度予算で要求している。
都は02年7月、予定地の所有者だった東京ガスが都条例に基づき汚染の調査や除去作業を行うことで、同社と合意。同社は順次、その報告書を都に提出した。都は同社を指導監督するとともに、都の購入地として土壌汚染などの問題がないかチェックする立場で、07年までに汚染対策が適切に行われたとしていた。
朝日新聞が入手した報告書によると、東京ガスが02年10月に報告した表層土壌ガス調査では、有害物質ベンゼンのガスが88地点で検出されていた。だが、このうちボーリングによる詳細調査の実施は、高濃度ガスなどが検出された9地点にとどまり、残りの79地点は未実施だった。
これに対し、都が予定地の一部を購入した後、07~09年に予定地全体の土壌や地下水の調査を実施。環境基準を超えた地点は1475地点に上り、そのうちベンゼンが最大で環境基準の4万3千倍、シアンが930倍となった。
朝日新聞が、東京ガスの02年の調査と、都の調査を照合したところ、02年の調査で詳細調査が実施されなかった79地点のうち6地点が、都の調査で土壌からベンゼンが検出された地点とほぼ一致した。濃度は最大で環境基準の1500倍に達していた。
都は「都は東京ガスと協議しながら当時考えられる十分な対策を講じており、新たな汚染は予見不可能。汚染を知りながら買ったという認識はない」としている。(香川直樹)
*****以上******
裁判は、平成22年9月28日に初公判。
そして、今回平成22年12月7日、第二回公判。
裁判官は、原告側に2点(①1月朝日新聞のスクープ記事から、4月都民の監査請求までの期間は、相当な期間であることの証明、②監査請求書自体のコピー)要求、被告東京都側に1点(被告の6人の土地売買当時の補的な根拠に基づく権限の明確化)を要求し、10分もかからずに終了した。
次回、平成23年2月3日火曜日、11時~東京地方裁判所 522号法廷で、第3回公判が行われる。 この時は、東京都側から本格的な反論がなされる予定。
長々と経過を書きましたが、初公判の原告都民側の陳述書を読んでいただくと、頭が整理される手助けになると思われます。
****原告側弁護団 陳述書****
1本件の背景について
今回監査の対象となった豊洲の土地は,元々東京ガスの操業跡地であります。そして,ご承知のとおり築地市場の移転先として石原都政が画策しているところであります。都政における現在進行形の最大級の問題となっています。
この築地市場の豊洲移転問題をめぐっては,様々な問題が次から次に起こっています。
現在では,専門家会議・技術者会議での検討を経て,当該土地がベンゼン・シアン等を初めとして高濃度の汚染まみれの土地であることが判明しています。しかも,当時公表されていなかった発がん性物質ベンゾ(a)ピレンの存在が後になって新聞ですっぱ抜かれたり,最近では,東京ガスが盛り土をして安全であることが前提になっていたその盛り土についても,新聞によって指摘されて初めて汚染があるということが判明し,今後の汚染対策が必要であるという話になってきています。
本件は,そういった問題の内包する土地を平成18年,2006年に立て続けに都が購入したという問題であります。3回の売買で約600億円以上の莫大なお金が動きました。
この土地が東京ガスの豊洲操業跡地であることはもちろん誰もが承知しています。そして,もともと築地市場の再整備ということで進んでいた話が,石原都政誕生とともに,豊洲移転論が台頭し,本件の売買に至っているわけであります。
しかし,この東京都の動きに対して,平成12年6月東京ガスは「弊社豊洲用地への築地市場移転に関わる御都のお考えについて(質問)」を提出し,当該土地が生鮮を扱う市場には適さないのではないかと,当該土地での操業者として当然汚染者負担の問題が発生しうることを念頭においた指摘をしていた経緯もあります。
にもかかわらず,その後も都は豊洲移転を既定路線として推し進め,本件売買契約を締結しました。それぞれの契約書には,通常ありえない瑕疵担保責任についての免責規定があります。あろうことか,汚染者負担の責任原則を自ら放棄し,600億円もの都民の血税を汚染まみれの土地の購入のために使ったのであります。
2本件の争点
本件の争点は,監査請求をした時期が平成18年の売買契約のときから1年を経過しているではないかというものであります(地方自治法242条2項)。
しかし,平成18年当時石原都知事を含めた都の責任者以外の誰が,問題の本質を知りえたでありましょうか。
都が売主側の汚染者負担の責任原則を免責させていたと誰が考えたでしょうか。そのような無責任な行動を都知事が行っているとは考えておりませんでした。それどころか,都はこの契約の時期にさらに都民に対する背信的な言動に出たのであります。
一つ目の契約は平成18年2月に行われ,その報告が同年3月になされたのでありますが,その報告では,「すべての土地が安全となるよう処理を行っております」と,これも事実に反する答弁を行うのみでした。従って,この時点では都民は単に契約の存在を知りえたというにとどまります。本件の契約にあたっては。平成18年3月に至るまでに東京ガスの汚染処理がなされることになっておりました。その時点で環境確保条例に基づく平成15年指針が既に策定されておりましたが,東京ガスは基準の甘い平成13年指針に基づいて汚染処理を行ったのであります。このような事情を知りながら,都は,そのことを都民に対して隠匿し,東京ガスの汚染処理によって安全性は確保されていると強弁していたのであります。
また,汚染処理の責任問題についても事実を隠し続けました。
平成18年10月25日の,公営企業会計決算特別委員会第一分科会において,都は「東京ガスの操業に基づく汚染物質等が発見された場合につきましては,・・・東京ガスが処理するという了解は得てございます」という事実に真っ向から反する答弁をし,さらに平成19年6月21日の経済・港湾委員会における答弁においてすら,「追加調査で新たに土壌汚染が見つかった場合,その処理については誰が行い,…誰が費用を負担するのか」という都議の質問に対して「操業由来の汚染土壌について,東京ガスが適切に処理を行うという内容の確認書を交わしている」とこれまた虚偽の答弁を繰り返したのであります。
このような状況では,原告を含めた都民が本件で問題としている土地の売買について監査を必要とするという正確な判断ができなかったことは言うまでもありません。都民が問題の所在を知りえたのは,まさに平成22年1月5日の朝日新聞の報道「汚染処理 都だけ負担も 東ガス義務規定なし」との内容によったのであります。この報道によって,初めて原告の方々は,4月1日になって監査請求をなしえたのであります。
今回被告東京都は,これまでの都議会での答弁の延長線上の答弁しかしておりません。被告は,監査請求期間が経過しているのだから門前払いをすべきだと裁判所に却下決定求めていますが,これまでの経過に鑑みれば極めて不誠実と言わざるを得ません。また,これだけの都民の税金が無駄に使われているという事実を直視し,さらなる損害の拡大を防止するためにも本件訴訟が有する社会的な意義を十分に理解した答弁をすべきものと考えます。
ぜひ裁判所には,本件訴訟についての意義を十分にご理解いただき,充実した実質審理をお願いし陳述を終わります。
以上