東日本大震災復興構想会議の提言を見ておきます。
まずは、医療保健福祉関連のみ抜粋します。
読んでいて、伝わってくることは、
*保健・医療、介護・福祉サービスを一体的に整備
*保健・医療、介護・福祉サービスは、雇用を創出する力がある、特に、高度医療を担う人材を被災地において育成
*在宅療養を進める
*心のケアを行う
*健康関連サービスについて、民間企業の活用も活用する
*情報通信技術も活用し、例えば、カルテの共有も出来るようにする
など。
******内閣府ホームページより*****
http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kousou12/teigen.pdf
復興への提言 ~ 悲惨のなかの希望 ~
平成23年6月25日 東日本大震災復興構想会議
復興構想7原則
原則1:失われたおびただしい「いのち」への追悼と鎮魂こそ、私 たち生き残った者にとって復興の起点である。この観点か ら、鎮魂の森やモニュメントを含め、大震災の記録を永遠 に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、その教訓 を次世代に伝承し、国内外に発信する。
原則2:被災地の広域性・多様性を踏まえつつ、地域・コミュニテ ィ主体の復興を基本とする。国は、復興の全体方針と制度 設計によってそれを支える。
原則3:被災した東北の再生のため、潜在力を活かし、技術革新を 伴う復旧・復興を目指す。この地に、来たるべき時代をリ ードする経済社会の可能性を追求する。
原則4:地域社会の強い絆を守りつつ、災害に強い安全・安心のま ち、自然エネルギー活用型地域の建設を進める。
原則5:被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。日本経済 の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立 ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す。
原則6:原発事故の早期収束を求めつつ、原発被災地への支援と復 興にはより一層のきめ細やかな配慮をつくす。
原則7:今を生きる私たち全てがこの大災害を自らのことと受け止 め、国民全体の連帯と分かち合いによって復興を推進する ものとする。
(中略)
第2章 くらしとしごとの再生
(1)序
地域の再生は、くらしとしごとの条件整備がなされて初めて可能になる。 くらしの視点からは、「地域包括ケア」や「学校の機能拡大」が重要である。 保健・医療、介護・福祉サービスを一体化して、被災した人々を「つな ぐ」と同時に、それを雇用創出に結びつける。そして高度医療を担う人材を被災地において育成し、新たなコミュニティづくりの一翼を担ってもら う。この被災地における取組は、「地域包括ケアモデル」として、やがて全国に広く展開される試みに連なっていく。
「減災」の考え方から言っても、「学校施設」の機能強化は大切である。施設自体が災害時の避難場所や防災拠点となるのは無論のこと、学校を新 たな地域コミュニティの核となる施設として拡充していかねばならない。 教職員を始め、児童・生徒そして地域住民が、「減災・防災教育」を通じて、 あらためて地域の特性を知り、いざという時に「逃げる」までの道程を学 ばねばなるまい。こうした教育こそが、人と人とを「つなぐ」地域におけ る絆を確固としたものに育て、果ては地域における文化の復興にまでつな がっていく可能性を有する。そして、学校が地域コミュニティの核となる こともまた、広く展開する潜在的可能性を秘めている。
次いで、しごとの視点からは、やはり様々な産業の再生にあたって、ま ずは従来の制度や枠組の積極的活用を図らねばならない。復興に際して、 新たな取組によって、地域ごとに応用可能なモデルを提供していく。その 際注意すべきは、インフラの整備やエネルギーの多様化についても、必ず や、いくつかの要素をうまく組み合わせることによってより大きな効果を 生み出すものであり、そのように工夫することにある。
実はここにも「つなぐ」発想が現れている。一つ一つの要素をそれだけ にせず、機能的にまさに「つなぐ」ことが重要だからである。
(2)地域における支えあい学びあう仕組み
1 被災者救援体制からの出発
今回の震災により、被災地の医療機関、社会福祉施設、保育所等が甚大 な被害を受けている。当面は、これらの施設の復旧を行うとともに、仮設 診療所や薬局、介護・障害等のサポート拠点などの新たな設置が必要となっている。また、地域住民が支えあい学びあうなかで、地域の将来を話し あう拠点を設けることも有効である。
被災地においては、避難所・仮設住宅等の生活者を中心に、心のケアや 健康管理、食事・栄養管理、衛生管理への支援が強く求められている。その際、障害者など社会的弱者には一層の配慮が必要である。また、保健・医療、介護・福祉サービスのさらなる基盤整備とともに、関係者の連携した取組が必要である。あわせて、住民が避難した地域をはじめとする被災地や避難先において、犯罪を防止する取組が行われるべきである。
さらに、被災したすべての子どもへの良質な成育環境を担保せねばなら ない。とりわけ、心のケア等の相談援助や教育環境の整備を長期的視点に 立って行う必要がある。また、両親が亡くなった子ども、あるいは、両親 が行方不明の子どもについては、里親制度の活用を含め、長期的な支援を 行なわねばならない。
2 地域包括ケアを中心とする保健・医療、介護・福祉の体制整備
被災市町村の復興にあたっては、従来の地域のコミュニティを核とした 支えあいを基盤としつつ、保健・医療、介護・福祉・生活支援サービスが 一体的に提供される地域包括ケアを中心に据えた体制整備を行う。その際、 地域の利便性や防災性を考慮し、住宅、保健・医療施設、福祉施設、介護・ 福祉事業所、教育施設等の一体的整備や共同利用に配慮する。
医療サービスについては、特に被災市町村が医師等の不足している地域 である点を考慮し、医療機能の集約や連携が行われるべきである。この時、 在宅医療を推進し、患者の医療ニーズに切れ目なく対応し、早期回復と患者の負担軽減が図られるよう努めなければならない。また、周辺の健康関連サービスについて、民間企業の活用も含め、充実を図る必要がある。情報通信技術なども活用し、保健・医療、介護・福祉の連携を図るとともに、 今後の危機管理のためにカルテ等の診療情報の共有化が進められねばならない。
さらに、これらの分野は雇用創出効果が高いことから、復興に向かう地域の基幹産業の一つに位置づけることができる。また、大学病院を核とする医師や高度医療を担う人材育成のための教育体制の整備を進め、大学・ 専修学校等の学校教育機関を含む多様な訓練機関を活用した職業訓練などを行い、それらの分野を担う人材育成を進める。これにより、若者・女性・ 高齢者・障害者を含む雇用を被災地において確保し、地域の絆をより深め る効果が期待される。
復興の過程においては、避難所や仮設住宅等での生活を通じて、新たな 住民相互の助け合いによる見守り活動と社会参加が進むことが期待される。 従来のコミュニティに加えて再構築された新たなコミュニティを基盤とし た支え合いが生まれるように支援すべきである。
こうした被災地における取組を将来の少子高齢化社会のモデルとして位置づけ、被災地以外においても、「地域包括ケアモデル」へと転換を図ることが望ましい。
(図表10)地域包括ケアを中心とした地域づくり
3 学ぶ機会の確保
被災した学校の再建や整備にあたっては、災害時の応急避難場所や重要 な防災拠点としての役割を果たせるように工夫する。例えば、現在地から の移転も含め、防災機能を一層強化する必要がある。このように、学校が 避難所として用いられることが多くなることから、こうした状況に備え、 地域住民を守るという視点からも、校長や教員等が適切に対応できるよう にすべきである。学校・公民館等の再建にあたっては、防災機能のみなら ず地域コミュニティの拠点としての機能強化を図ることが必要である。さらに、幼稚園や保育所を再建する際、財政基盤が脆弱なところもあることに配慮する必要がある。また、関係者の意向を踏まえ、幼保一体化施設(認定こども園)として再開できるよう支援することが望ましい。
なお、学校等を核とした地域の絆を強化するため、広く住民の参画を得て、地域の特色を生かした防災教育等を進める必要がある。阪神・淡路大 震災の際、近所の人たちの共助による人命救助が多く行われたのは、日頃 から小学校や公民館を拠点に祭などの活動が多かった地区であった。また、 情報通信技術も活用し、学びを媒介として被災地の住民が諸活動を行うこ とにより、災害時に力を発揮するネットワークの構築やコミュニケーショ ンの場を提供するよう工夫する。
さらに、今回の震災で親や身内が被災したことにより、経済的に大きな 損失を被った子どもや若者達が就学困難な状況に陥ることなく、広く教育の機会を得られるよう配慮する。このため、被災地のニーズや実情を踏ま え、奨学金や就学支援等の支援を適切に実施していく必要がある。このことは、社会的公正性を保つ上で大きな意義を有する。また、被災地の子ども達に、被災の影響により学習面や生活面で支障が生じることのないよう、 教職員やスクールカウンセラー等の適切な配置を図る。
被災地の復興に向けたより長期的な視野に立って人材を育成するため には、科学技術や国際化、情報化の進展等に対応した新たな教育環境の整備が必要である。同時に、被災地において、産学官の連携により、地域の産業の高度化や新産業創出、地元産業の復興を担う人材やグローバル化に 対応した人材を将来的に育成するため、大学・高専等における人材の高度化に努め、地域への定着を図ることが必要である。
(後略)