詐欺事件の重要判例。
明日の講義の題材ゆえ、メモとして。
****最高裁ホームページ*****
判決文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115338769000.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理 由
弁護人渡邉靖子の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴
法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,詐欺罪の成否について,職権をもって判断する。
1 原判決及びその是認する第1審判決並びに記録によれば,本件の事実関係は
,次のとおりである。
(1) Aは,友人のBから,同人名義の本件クレジットカードを預かって使用を
許され,その利用代金については,Bに交付したり,所定の預金口座に振り込んだ
りしていた。
その後,
本件クレジットカードを被告人が入手した。その入手の経緯はつまびらかではない
が,当時,Aは,バカラ賭博の店に客として出入りしており,暴力団関係者である
被告人も,同店を拠点に賭金の貸付けなどをしていたものであって,両者が接点を
有していたことなどの状況から,本件クレジットカードは,Aが自発的に被告人を
含む第三者に対し交付したものである可能性も排除できない。なお,被告人とBと
の間に面識はなく,BはA以外の第三者が本件クレジットカードを使用することを
許諾したことはなかった。
(2) 被告人は,本件クレジットカードを入手した直後,加盟店であるガソリン
スタンドにおいて,本件クレジットカードを示し,名義人のBに成り済まして自動
車への給油を申し込み,被告人がB本人であると従業員を誤信させてガソリンの給
油を受けた。上記ガソリンスタンドでは,名義人以外の者によるクレジットカード
- 1 -
の利用行為には応じないこととなっていた。
(3) 本件クレジットカードの会員規約上,クレジットカードは,会員である名
義人のみが利用でき,他人に同カードを譲渡,貸与,質入れ等することが禁じられ
ている。また,加盟店規約上,加盟店は,クレジットカードの利用者が会員本人で
あることを善良な管理者の注意義務をもって確認することなどが定められている。
2 【要旨】以上の事実関係の下では,被告人は,本件クレジットカードの名義
人本人に成り済まし,同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い
,その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから,被告
人の行為は詐欺罪を構成する。仮に,被告人が,本件クレジットカードの名義人か
ら同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金が
会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があった
としても,本件詐欺罪の成立は左右されない。したがって,被告人に対し本件詐欺
罪の成立を認めた原判断は,正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項本文により,裁判官
全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 滝井
繁男)
-
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50047&hanreiKbn=02
事件番号
平成14(あ)1647
事件名
詐欺被告事件
裁判年月日
平成16年02月09日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
決定
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
刑集 第58巻2号89頁
原審裁判所名
大阪高等裁判所
原審事件番号
平成13(う)1472
原審裁判年月日
平成14年08月22日
判示事項
クレジットカードの名義人に成り済まし同カードを利用して商品を購入する行為が詐欺罪に当たるとされた事例
裁判要旨
クレジットカードの規約上,会員である名義人のみがクレジットカードを利用できるものとされ,加盟店に対しクレジットカードの利用者が会員本人であることの確認義務が課されているなど判示の事実関係の下では,クレジットカードの名義人に成り済まし同カードを利用して商品を購入する行為は,仮に,名義人から同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金が規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたとしても,詐欺罪に当たる。
参照法条
刑法246条1項
明日の講義の題材ゆえ、メモとして。
****最高裁ホームページ*****
判決文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115338769000.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理 由
弁護人渡邉靖子の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴
法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,詐欺罪の成否について,職権をもって判断する。
1 原判決及びその是認する第1審判決並びに記録によれば,本件の事実関係は
,次のとおりである。
(1) Aは,友人のBから,同人名義の本件クレジットカードを預かって使用を
許され,その利用代金については,Bに交付したり,所定の預金口座に振り込んだ
りしていた。
その後,
本件クレジットカードを被告人が入手した。その入手の経緯はつまびらかではない
が,当時,Aは,バカラ賭博の店に客として出入りしており,暴力団関係者である
被告人も,同店を拠点に賭金の貸付けなどをしていたものであって,両者が接点を
有していたことなどの状況から,本件クレジットカードは,Aが自発的に被告人を
含む第三者に対し交付したものである可能性も排除できない。なお,被告人とBと
の間に面識はなく,BはA以外の第三者が本件クレジットカードを使用することを
許諾したことはなかった。
(2) 被告人は,本件クレジットカードを入手した直後,加盟店であるガソリン
スタンドにおいて,本件クレジットカードを示し,名義人のBに成り済まして自動
車への給油を申し込み,被告人がB本人であると従業員を誤信させてガソリンの給
油を受けた。上記ガソリンスタンドでは,名義人以外の者によるクレジットカード
- 1 -
の利用行為には応じないこととなっていた。
(3) 本件クレジットカードの会員規約上,クレジットカードは,会員である名
義人のみが利用でき,他人に同カードを譲渡,貸与,質入れ等することが禁じられ
ている。また,加盟店規約上,加盟店は,クレジットカードの利用者が会員本人で
あることを善良な管理者の注意義務をもって確認することなどが定められている。
2 【要旨】以上の事実関係の下では,被告人は,本件クレジットカードの名義
人本人に成り済まし,同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い
,その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから,被告
人の行為は詐欺罪を構成する。仮に,被告人が,本件クレジットカードの名義人か
ら同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金が
会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があった
としても,本件詐欺罪の成立は左右されない。したがって,被告人に対し本件詐欺
罪の成立を認めた原判断は,正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項本文により,裁判官
全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 滝井
繁男)
-
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50047&hanreiKbn=02
事件番号
平成14(あ)1647
事件名
詐欺被告事件
裁判年月日
平成16年02月09日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
決定
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
刑集 第58巻2号89頁
原審裁判所名
大阪高等裁判所
原審事件番号
平成13(う)1472
原審裁判年月日
平成14年08月22日
判示事項
クレジットカードの名義人に成り済まし同カードを利用して商品を購入する行為が詐欺罪に当たるとされた事例
裁判要旨
クレジットカードの規約上,会員である名義人のみがクレジットカードを利用できるものとされ,加盟店に対しクレジットカードの利用者が会員本人であることの確認義務が課されているなど判示の事実関係の下では,クレジットカードの名義人に成り済まし同カードを利用して商品を購入する行為は,仮に,名義人から同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金が規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたとしても,詐欺罪に当たる。
参照法条
刑法246条1項