「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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民法百選I-49:特約によらない中間省略登記請求権

2014-10-20 17:18:19 | 民法 物権法
  不動産の所有権が甲乙丙と順次移転したのに、登記名義は依然として甲にある場合には、丙が甲に対し直接自己に移転登記を請求することは、甲および乙の同意がないかぎり、許されない。



*********************************

事件番号

 昭和39(オ)985



事件名

 所有権移転登記等請求



裁判年月日

 昭和40年9月21日



法廷名

 最高裁判所第三小法廷



裁判種別

 判決



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 民集 第19巻6号1560頁




原審裁判所名

 大阪高等裁判所



原審事件番号

 昭和38(ネ)8221



原審裁判年月日

 昭和39年5月22日




判示事項

 中間省略の登記を求める請求の許否。



裁判要旨

 不動産の所有権が甲乙丙と順次移転したのに、登記名義は依然として甲にある場合には、丙が甲に対し直接自己に移転登記を請求することは、甲および乙の同意がないかぎり、許されない。


*****判決文全文 最高裁ホームページ*****
         主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。

         理    由
 上告代理人西阪幸雄の上告理由第一点について。
 法律解釈の根拠、理由の説明は、必ずしも判決に示す必要がないのであるから、
これを欠いているからといつて、審理不尽、理由不備の違法があるとはいえない。
論旨は採用することができない。

 同第二、三点について。

 実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は、当然には発生しな
いと解すべきであるから、甲乙丙と順次に所有権が移転したのに登記名義は依然と
して甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、甲に対し直接自己に移転登
記すべき旨を請求することは許されないというべきである。ただし、中間省略登記
をするについて登記名義人および中間者の同意ある場合は別である。(論旨引用の
当裁判所判決は、すでに中間省略登記が経由された後の問題に関するものであつて、
事案を異にし本件には適切でない。)本件においては、登記名義人の同意について
主張、立証がないというのであるから、上告人の中間省略登記請求を棄却した原判
決の判断は正当であつて、不動産登記法に違反するとの論旨は理由がない。また、
登記名義人や中間者の同意がない以上、債権者代位権によつて先ず中間者への移転
登記を訴求し、その後中間者から現所有者への移転登記を履践しなければならない
のは、物権変動の経過をそのまま登記簿に反映させようとする不動産登記法の建前
に照らし当然のことであつて、中間省略登記こそが例外的な便法である。右の法解
釈をもつて経験則や慣習に違反しているとの論旨もまた理由がない。所論は、いず
れも採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
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県による開発行為の誤った許可に続く建築確認を取消すことで、違法建築を止める方法

2014-10-20 15:20:00 | 行政法学
(2014/10/11作成第1稿) 
 『事例研究 行政法』第2部問題4にある問題。

 県による開発行為の誤った許可に続く建築確認を取消すことで、違法建築を止める方法がひとつ考えられる。

第1、 設問1

1、 開発行為非該当証明書の交付行為の取消訴訟(行訴3条2項)

(1) 処分性について
ア、行政庁のある行為について、個別法が明文で行審法による不服申立や行訴法による取消訴訟の提起を認めている場合は、その行為には処分性が認められる。
 都市計画法50条(以下、「都計法」という。)には、開発審査会に対して審査請求をすることができる都道府県知事の行為を列挙しているが、開発行為非該当証明書(以下、「非該当証明書」という。)の交付行為の記載はなく、この点で処分性があるとはいえない。

イ、処分とは、行政庁の行為によって、直接国民の権利義務を形成し、または、その範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最判昭和39年10月29日)。
 非該当証明書の交付は、開発許可権者が建築計画に「土地の区画形質の変更」(法4条12項)を伴うか否かについて単なる事実を証明する効果があるに過ぎず、その交付行為は建築主(申請人)に証明された事実を通知する行為であり、交付行為によって、私人の権利義務の範囲を画するような性質のものとはいえない。従って、処分性は認められない。
 また、非該当証明書の交付は、法律にもとづくものではなく、都市計画法施行規則60条という省令にその根拠があるに過ぎないのであって、その点からも処分性は認められない。

ウ、非該当証明書の交付行為に処分性が認められないため、取消訴訟は不適法である。


2、開発行為非該当証明書の交付行為が違法であることの確認訴訟(行訴4条後段の実質的当事者訴訟)

 上述1で、処分性がないことから、甲県を被告とする確認訴訟を検討する。

(1) 確認の利益について
 確認の利益は、①確認対象選択の適否、②即時確定の利益、③方法選択の適否の三点から判断される。

 ①確認対象選択の適否について検討するに、確認訴訟は、第三者効のない公法上の当事者訴訟であり(行訴32条1項、41条)、処分の名宛人以外の第三者の確認訴訟の提起が紛争解決としては、適当とは言えない。
 確認の利益がないため、確認訴訟は不適法である。


3、 直接型義務付け訴訟(行訴3条6項1号、37条の2)

 甲県知事に対して、工事中止命令等の規制権限(都計法81条)の行使を求めることを求めることを検討する。

 訴訟の過程において、非該当証明書の交付行為の適法性の判断がなし得るため、この訴訟の提起は妥当であると考える。


4、 建築確認取消訴訟(行訴3条2項)と甲県知事の訴訟参加の申立(行訴法23条)、建築確認の執行停止の申立(行訴25条)

 Bのなした建築確認を取消しを検討する。

(1) 被告について
 被告は、Bである(行訴法11条2項)。

(2) Bの建築確認審査における、非該当証明書の適法性の審査について

ア、建築主事は、建築確認の際に、都市計画法の規定の適合性の審査は、建築確認申請の受理要件である都市計画法29条1項に適合していることを証明する書面(以下、「適合証明書」という。)が添付されていることを形式的、外的的に審査することとされている(資料3)。

イ、本事例でも、Bは、通達に従い、適合証明書のひとつである非該当証明書の交付行為について、これが添付されているか否かという形式的、外形的審査をして建築確認をしている。結果として、開発許可が必要な本件開発区域が、開発許可なく建築確認が出されている。

ウ、建築確認に先行する処分性のない行政庁の行為の違法は、たとえ、建築主事等が形式的、外形的審査しかなしえないとしても、建築確認取消訴訟で非該当証明書の交付行為の違法を争いうると考えるべきである。
 なぜならば、争えないとなると、本件の場合のように、建築確認において、第三者の周辺住民が、処分性のない違法な先行行為を争いうる途が閉ざされかねないのであって、違法な行政庁の行為によって侵害された国民の権利利益の司法的救済を目的とする行訴法の趣旨に反し、合理性を欠くからである。

エ、ただし、被告Bは、非該当証明書の交付行為について、実質的審査をなしえないため、当該交付行為をなした開発許可権者たる甲県知事の訴訟参加を申し立てることが妥当と考える。

(3)仮処分の申立について

 建築物の完成で、訴えの利益が消滅するため、建築確認の執行停止の申立も同時に行う。



第2、 設問2

1、 棄却裁決の場合
 Xらは、Bを被告として(行訴11条2項)、開発行為非該当証明書の交付行為が違法であることを主張し、建築確認の取消訴訟を提起しうる。

 また、裁決は乙市の建築審査会がなしたのであるから、乙市を被告として(行訴法11条1項2号)、当該棄却裁決の取消訴訟(行訴3条3項)を提起しうる。

2、 建築確認の取消裁決の場合
(1) Aについて
 Aは、乙市を被告として(行訴法11条1項2号)、取消裁決の取消訴訟(行訴法3条3項)を提起しうる。

(2) 指定確認検査機関Bについて
ア、原処分庁が審査会の裁決の違法を争う訴訟は、行政機関相互の訴訟であり、機関訴訟(行訴6条)が可能かを検討する。

イ、機関訴訟は、権利義務の存否に関する法律上の争訟(裁判所法3条1項)ではないので、法律の定めがないと訴えは提起できない(行訴42条)。

ウ、また、指定確認検査機関の法制度上の位置づけを考えるに、

①指定確認検査機関の確認事務も建築主事の確認事務と同様に地方公共団体の自治事務であること、

②指定確認検査機関の確認等は建築主事の確認等とみなされること、

③指定確認検査機関は建築主事と同様に特定行政庁の監督の下において確認事務等を行っていること(建基4条、6条、6条の2)(以上、最決平成17年6月24日)、及び、不服申立てについて、指定確認検査機関を建築主事と同様に処分庁として取り扱っていること(建基94条)から、指定確認検査機関と建築主事は、建築確認について同様の法的地位にあると解しうる。

 建築主事の場合は、自らがした建築確認の取消裁決の取消訴訟は提起できないと解されるところ、指定確認検査機関もまた、上述のように建築主事と同様の法的地位にあるから、建築確認の取消裁決の取消訴訟は提起できないと考える。


第3、 設問3
 行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
 そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成元年(行ツ)第一三〇号同四年九月二二日第三小法廷判決・民集四六巻六号五七一頁参照)。

 都計法33条1項7号は、公益にとどまらず開発区域の周辺住民の個々人の生命・身体の安全という個別的利益をも保護の対象としている。

 本件においては、近接する開発区域はがけ崩れのおそれが多い土地などに当たり、絶えずがけ地崩壊等の危険にさらされ、その崩壊があった場合には、生命・身体・所有財産が危機に陥る蓋然性があるのであって、本件建築確認処分がなされると、都計法33条1項7号違反ゆえに生命・身体・所有財産が危機に陥る者は、原告適格を有すると言える。

 従って、開発区域の崖地に近接する位置に居住している者と、遠隔地に居住してはいるが近接地に土地・家屋等の所有権を有している者は、開発許可を経ない当該建築に起因する崖崩れで生命・身体・財産が危機に陥る蓋然性が高く、原告適格を有すると考える。
 一方、日常的にがけ地上の道路を通行・散策している者は、直接に崖崩れに巻き込まれ生命・身体が危機に陥る蓋然性が高いとまでは言えないため、原告適格は有しないと考える。


以上

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