都市計画のもともとの決定(原決定)通りなら、自宅の土地を収用されることはなかったのに、原決定とは異なる形の道路工事が先になされ、後追いで、そのなされた道路工事の形の都市計画変更決定がなされ、第2次都市計画事業認可がなされました。
第2次都市計画事業認可により、自宅の土地を収用されるXを救済するには、どうすればよいか。
第2次都市計画事業認可の取り消しを争えばよいのであるが、すでに時が経ってしまっていたとして。
(事例研究行政法 第二部問題3を題材にして、2013/11/08第3稿)
第1、土地収用裁決取消訴訟の提起について(設問1に関連して)
1、都市計画変更決定における違法について
(1)手続的違法について
ア、本件では、都市計画変更決定において、都市計画審議会手続の瑕疵を主張しうると考える。
イ、都市計画変更決定において、都市計画決定と同様に、変更内容を公告し(21条2項、17条1項)、その計画変更に対し、住民及び利害関係人は、意見書を提出することができる(21条2項、17条2項)。都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県の都市計画審議会の議を経て、都市計画の変更を決定する(21条2項、18条1項)。その都市計画審議会では、意見書の要旨が提出されることになっている(21条2項、18条2項)。
都市計画審議会を経ることは、判断の適正と公正を担保することにあり、住民及び利害関係人の意見書が同審議会に提出されるのは、重大な利害関係を有する者に対しても、意見を提出する機会を与え、判断の基礎及びその過程の客観性と公正を保障する趣旨に出たものと考えられる。
従って、審議会手続については、都市計画法が審議会の諮問を経ることを要求した趣旨に反するような瑕疵が認められる場合、違法になることが考えられる。
ウ、本件では、Xは、原決定の変更に対して意見書を提出し、その意見書は都市計画審議会に要旨が提出された。同審議会において、一委員から変更決定に対して地元では反対がでていないか懸念が示されたが、事務局が、自治会が反対するなどのような特に強い反対運動は見られていないと説明しただけであり、Xからの意見書提出のことやXが反対していることが説明されることはなかった。Xのような反対者がいた場合は、慎重に審議されるはずのところ、事務局の説明は、本件計画変更に反対者がいないことを委員に意識付けたものと考えられる。
エ、従って、事務局から審議会委員に、正しい情報提供がなされたとはいえず、反対者の有無は、決議を左右する重要な情報である以上、同審議会の決議は、重大な瑕疵がある。
よって、都市計画変更決定には、審議会における手続き上の瑕疵があって違法である。
(2)実体的違法について
ア、本件では、都市計画変更決定において、都市計画法21条違反を主張しうると考える。
都市計画法21条は、都市計画の変更の事由を規定する。すなわち、①都市計画区域または準都市計画区域が変更されたとき、②調査(同法6条1項、2項、13条1項各号)の結果都市計画を変更する必要が明らかになったとき、③「その他都市計画を変更する必要が生じたとき」である。
これら変更事由にあたるかどうかは、都市計画変更が、各地域の状況、将来予測、地域の人々の意向、合意形成の過程など総合的に判断して決定変更していくべきことがらであるため、広範な行政庁の裁量によるべきものであると考えられる。ただし、その裁量も無制約のものではなく、都市計画法1条の目的、2条の基本理念、13条の都市計画基準などの制約を受けつつ、裁量権の逸脱濫用があった場合、違法であると考えられる。
イ、形質的違法理由
本件では、既になされた都市計画施設区域外の事業を追認的に適法化しようとするものであって、21条のいずれの要件にも該当しないにも関わらず、該当するとして計画変更したことは、行政権の逸脱濫用があり、形式的には、違法である。
ウ、実質的違法理由
ただし、本件では、本来、第1次事業認可の際に都市計画変更をすべきものが、手順を前後したとの行政庁の主張もありうるのであって、本件裁決取消事由の瑕疵を判断する上では、形式的違法事由のみならず、実質的な都市計画変更理由も合わせて検討すべきと考える。
当初計画では、①中学校設置基準の問題、②土地R1とR2の所有者Zとの関係、③国の施設の問題があって、都市計画変更をしている。
①③は、公共的な理由であるが、①は、当初計画を是正する理由として正当であるが、ただし、校舎の位置自体を道路に面する計画から移動することにより対処可能である。③は、当初から、都市計画道路と面するはずであったのであって、理由とはなりえない。②は、土地所有者個人の希望であり他事考慮であるが、Zの反対で収容が長引き、施設設置の時期に間に合わなくなるおそれを考慮したものと考えられる。
すると、①の公共的な理由はありうるが対応が可能なことがらであり、②③という本来考慮すべきでないものを考慮して、都市計画変更を判断しており、行政権の逸脱濫用があり、実質的にも違法である。
2、都市計画変更決定における違法を、収用裁決の取消訴訟で主張することについて
1において、都市計画決定変更の違法はあるとしても、では、後続の収用裁決の取消訴訟で主張しうるか問題である。
(1)都市計画変更決定の処分性
道路は、都市計画に掲げられた施設であり(11条1項1号)、都市計画により定められる(4条6項)。都市計画の決定や変更は、都市計画審議会を経て、都道府県が決定し(18条1項)、都市計画で定められた道路などを整備する「都市計画事業」(4条15項)は、市町村が、都道府県知事の認可を受けて施行することとなっている(59条1項)。都市計画事業認定は、収容適格事業であって(69条)、土地収用法の事業認定の要件は、都市計画事業認可によって代えられる(70条)。
従って、都市計画変更決定は、一種の立法類似の行為としての性格をもつもので国民の権利義務は形成しておらず、処分性はない。
一方で、都市計画決定事業認可は、公権力の行使である公用収用又は公用換地の手法によって、その法的実現が担保されており、処分性がある。
よって、都市計画変更決定の違法性は、本来、都市計画事業認可の取消訴訟において主張することとなる。
(2)都市計画事業認可の違法性の承継
ア、しかし、本件では、都市計画事業認可は、2005年の段階で認められ、都市計画事業認可の取消訴訟の出訴期間はすでに徒過してしまっている。
先行行為である都市計画事業認可に後続の収用裁決において、都市計画事業認可の違法を主張しうるのは、違法性が承継される場合である。
イ、違法性の承継
先行行為と後行行為とが相結合して一つの効果の実現をめざし、これを完成させるものである場合には、先行行為の違法性が後行行為に承継され、従って、後行行為の取消訴訟で先行行為の違法性を主張できる。
ウ、都市計画事業認定の違法性が収用裁決に承継されることについて
土地収用の事業認定と収用裁決の関係においては、違法性の承継が認められる。なぜならば、先行の事業認定が、起業者の申請に基づき起業者に収用権を付与し、土地所有権の消滅取得という法効果は収用裁決によって完成され、両者は、一連の手続きを構成し、一定の法律効果の発生を目指しているといえるからである。
アで述べたように、都市計画事業認定は、土地収用の事業認定とみなされ、収用裁決へと至るのであって、土地収用の事業認定と同様に、都市計画事業認定の違法性は、土地収用裁決に承継されると考えられる。
エ、さらに、今回の違法性は、処分性のない都市計画変更決定にあるのであって、本来、都市計画事業認可において争うべきであったとはいえ、手続き保障を与えるうえでも、後行行為の土地収用裁決で争えることを認めることが妥当である。
第2、収用裁決の執行停止の申立て(設問2に関連して)
仮の権利保護として、収用裁決の執行停止の申立て(行訴法25条)が考えられる。
以下、行訴法25条の各要件を検討する。
1、重大な損害をさけるための緊急の必要(積極要件)について
執行による重大な損害とは、執行により、原状回復が困難である場合や金銭賠償が不可能な場合であり、損害の回復の困難の程度も考慮し損害の性質・程度、処分の内容・性質を勘案すべき(行訴法25条3項)とされる。
本件では、夫婦2人で31年間やってきた理髪店・美容室であり、顧客はその地域のなじみの人を中心としたものであると推測できる。そうすると、収用によって移転を余儀なくされた場合には、他の場所で同様の営業を行うことは極めて困難であり、生業の基盤を失うことともなりかねない。金銭補償が
したがって、積極要件(25条3項)を充足する。
2、公共の福祉への重大な影響(消極要件①)および本案について理由がないとみえるとき(消極要件②)について
本件執行停止は、あくまでXとの関係における執行停止であり、Xの収用をストップしても、拘束力(行訴法33条4項参照)によって、任意買収も含めてそれまでなされた道路建設に関わる行為のすべての効力を停止しなければならないものではない。
Xの土地の収用を強行し、道路を完成させることを急ぐ公益上の理由の有無を検討すると、当該道路がG地点で接続する予定の南北に走る道路はさほど基幹道路とは見受けられず、それに接続する本件道路の公益性の必要は、Xの受ける損害の重大性に比して、さほど大きいものとは言えない。従って、消極要件①はない。
また、裁決の違法性の検討(第1)から、消極要件②はない。
3、小結
以上から、執行停止は認められるべきと考える。
第3、第2次都市計画事業認可の取消訴訟が提起できたとしたならば (関連問題に関連して)
第2次都市計画事業認可(以下、「同認可」という。)がなされた際に、Xが、認可取消しの訴えを起こすことで、Xは目的を達することができ、その効力は、第1の収用裁決の取消訴訟を、通常の場合は、上回っていたと考える。以下、論ずる。
同認可で、事業計画が決定されると、Xを含め道路の周辺に土地を所有する住民の権利に影響を及ぼすことが、一定の限度で具体的に予測することが可能になる。そして、その後の事業計画に定められたことに従って、換地処分が当然に行われることになる。
Xは、第1のように、土地収用裁決の段階で取消訴訟を提起できるが、その場合に、たとえ違法の主張が認められたとしても、事情判決(行訴法31条1項)がされる可能性が相当程度あり、救済が十分されるとは言いがたい。
実行的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、事業決定を対象とした取消訴訟の提起することに合理性があると考える。
ただし、本件の場合は、第2次都市計画事業認可の段階で、すでに工事は進んでいるのであって、事情判決がなされてしまう可能性が同様に残る。
以上
第2次都市計画事業認可により、自宅の土地を収用されるXを救済するには、どうすればよいか。
第2次都市計画事業認可の取り消しを争えばよいのであるが、すでに時が経ってしまっていたとして。
(事例研究行政法 第二部問題3を題材にして、2013/11/08第3稿)
第1、土地収用裁決取消訴訟の提起について(設問1に関連して)
1、都市計画変更決定における違法について
(1)手続的違法について
ア、本件では、都市計画変更決定において、都市計画審議会手続の瑕疵を主張しうると考える。
イ、都市計画変更決定において、都市計画決定と同様に、変更内容を公告し(21条2項、17条1項)、その計画変更に対し、住民及び利害関係人は、意見書を提出することができる(21条2項、17条2項)。都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県の都市計画審議会の議を経て、都市計画の変更を決定する(21条2項、18条1項)。その都市計画審議会では、意見書の要旨が提出されることになっている(21条2項、18条2項)。
都市計画審議会を経ることは、判断の適正と公正を担保することにあり、住民及び利害関係人の意見書が同審議会に提出されるのは、重大な利害関係を有する者に対しても、意見を提出する機会を与え、判断の基礎及びその過程の客観性と公正を保障する趣旨に出たものと考えられる。
従って、審議会手続については、都市計画法が審議会の諮問を経ることを要求した趣旨に反するような瑕疵が認められる場合、違法になることが考えられる。
ウ、本件では、Xは、原決定の変更に対して意見書を提出し、その意見書は都市計画審議会に要旨が提出された。同審議会において、一委員から変更決定に対して地元では反対がでていないか懸念が示されたが、事務局が、自治会が反対するなどのような特に強い反対運動は見られていないと説明しただけであり、Xからの意見書提出のことやXが反対していることが説明されることはなかった。Xのような反対者がいた場合は、慎重に審議されるはずのところ、事務局の説明は、本件計画変更に反対者がいないことを委員に意識付けたものと考えられる。
エ、従って、事務局から審議会委員に、正しい情報提供がなされたとはいえず、反対者の有無は、決議を左右する重要な情報である以上、同審議会の決議は、重大な瑕疵がある。
よって、都市計画変更決定には、審議会における手続き上の瑕疵があって違法である。
(2)実体的違法について
ア、本件では、都市計画変更決定において、都市計画法21条違反を主張しうると考える。
都市計画法21条は、都市計画の変更の事由を規定する。すなわち、①都市計画区域または準都市計画区域が変更されたとき、②調査(同法6条1項、2項、13条1項各号)の結果都市計画を変更する必要が明らかになったとき、③「その他都市計画を変更する必要が生じたとき」である。
これら変更事由にあたるかどうかは、都市計画変更が、各地域の状況、将来予測、地域の人々の意向、合意形成の過程など総合的に判断して決定変更していくべきことがらであるため、広範な行政庁の裁量によるべきものであると考えられる。ただし、その裁量も無制約のものではなく、都市計画法1条の目的、2条の基本理念、13条の都市計画基準などの制約を受けつつ、裁量権の逸脱濫用があった場合、違法であると考えられる。
イ、形質的違法理由
本件では、既になされた都市計画施設区域外の事業を追認的に適法化しようとするものであって、21条のいずれの要件にも該当しないにも関わらず、該当するとして計画変更したことは、行政権の逸脱濫用があり、形式的には、違法である。
ウ、実質的違法理由
ただし、本件では、本来、第1次事業認可の際に都市計画変更をすべきものが、手順を前後したとの行政庁の主張もありうるのであって、本件裁決取消事由の瑕疵を判断する上では、形式的違法事由のみならず、実質的な都市計画変更理由も合わせて検討すべきと考える。
当初計画では、①中学校設置基準の問題、②土地R1とR2の所有者Zとの関係、③国の施設の問題があって、都市計画変更をしている。
①③は、公共的な理由であるが、①は、当初計画を是正する理由として正当であるが、ただし、校舎の位置自体を道路に面する計画から移動することにより対処可能である。③は、当初から、都市計画道路と面するはずであったのであって、理由とはなりえない。②は、土地所有者個人の希望であり他事考慮であるが、Zの反対で収容が長引き、施設設置の時期に間に合わなくなるおそれを考慮したものと考えられる。
すると、①の公共的な理由はありうるが対応が可能なことがらであり、②③という本来考慮すべきでないものを考慮して、都市計画変更を判断しており、行政権の逸脱濫用があり、実質的にも違法である。
2、都市計画変更決定における違法を、収用裁決の取消訴訟で主張することについて
1において、都市計画決定変更の違法はあるとしても、では、後続の収用裁決の取消訴訟で主張しうるか問題である。
(1)都市計画変更決定の処分性
道路は、都市計画に掲げられた施設であり(11条1項1号)、都市計画により定められる(4条6項)。都市計画の決定や変更は、都市計画審議会を経て、都道府県が決定し(18条1項)、都市計画で定められた道路などを整備する「都市計画事業」(4条15項)は、市町村が、都道府県知事の認可を受けて施行することとなっている(59条1項)。都市計画事業認定は、収容適格事業であって(69条)、土地収用法の事業認定の要件は、都市計画事業認可によって代えられる(70条)。
従って、都市計画変更決定は、一種の立法類似の行為としての性格をもつもので国民の権利義務は形成しておらず、処分性はない。
一方で、都市計画決定事業認可は、公権力の行使である公用収用又は公用換地の手法によって、その法的実現が担保されており、処分性がある。
よって、都市計画変更決定の違法性は、本来、都市計画事業認可の取消訴訟において主張することとなる。
(2)都市計画事業認可の違法性の承継
ア、しかし、本件では、都市計画事業認可は、2005年の段階で認められ、都市計画事業認可の取消訴訟の出訴期間はすでに徒過してしまっている。
先行行為である都市計画事業認可に後続の収用裁決において、都市計画事業認可の違法を主張しうるのは、違法性が承継される場合である。
イ、違法性の承継
先行行為と後行行為とが相結合して一つの効果の実現をめざし、これを完成させるものである場合には、先行行為の違法性が後行行為に承継され、従って、後行行為の取消訴訟で先行行為の違法性を主張できる。
ウ、都市計画事業認定の違法性が収用裁決に承継されることについて
土地収用の事業認定と収用裁決の関係においては、違法性の承継が認められる。なぜならば、先行の事業認定が、起業者の申請に基づき起業者に収用権を付与し、土地所有権の消滅取得という法効果は収用裁決によって完成され、両者は、一連の手続きを構成し、一定の法律効果の発生を目指しているといえるからである。
アで述べたように、都市計画事業認定は、土地収用の事業認定とみなされ、収用裁決へと至るのであって、土地収用の事業認定と同様に、都市計画事業認定の違法性は、土地収用裁決に承継されると考えられる。
エ、さらに、今回の違法性は、処分性のない都市計画変更決定にあるのであって、本来、都市計画事業認可において争うべきであったとはいえ、手続き保障を与えるうえでも、後行行為の土地収用裁決で争えることを認めることが妥当である。
第2、収用裁決の執行停止の申立て(設問2に関連して)
仮の権利保護として、収用裁決の執行停止の申立て(行訴法25条)が考えられる。
以下、行訴法25条の各要件を検討する。
1、重大な損害をさけるための緊急の必要(積極要件)について
執行による重大な損害とは、執行により、原状回復が困難である場合や金銭賠償が不可能な場合であり、損害の回復の困難の程度も考慮し損害の性質・程度、処分の内容・性質を勘案すべき(行訴法25条3項)とされる。
本件では、夫婦2人で31年間やってきた理髪店・美容室であり、顧客はその地域のなじみの人を中心としたものであると推測できる。そうすると、収用によって移転を余儀なくされた場合には、他の場所で同様の営業を行うことは極めて困難であり、生業の基盤を失うことともなりかねない。金銭補償が
したがって、積極要件(25条3項)を充足する。
2、公共の福祉への重大な影響(消極要件①)および本案について理由がないとみえるとき(消極要件②)について
本件執行停止は、あくまでXとの関係における執行停止であり、Xの収用をストップしても、拘束力(行訴法33条4項参照)によって、任意買収も含めてそれまでなされた道路建設に関わる行為のすべての効力を停止しなければならないものではない。
Xの土地の収用を強行し、道路を完成させることを急ぐ公益上の理由の有無を検討すると、当該道路がG地点で接続する予定の南北に走る道路はさほど基幹道路とは見受けられず、それに接続する本件道路の公益性の必要は、Xの受ける損害の重大性に比して、さほど大きいものとは言えない。従って、消極要件①はない。
また、裁決の違法性の検討(第1)から、消極要件②はない。
3、小結
以上から、執行停止は認められるべきと考える。
第3、第2次都市計画事業認可の取消訴訟が提起できたとしたならば (関連問題に関連して)
第2次都市計画事業認可(以下、「同認可」という。)がなされた際に、Xが、認可取消しの訴えを起こすことで、Xは目的を達することができ、その効力は、第1の収用裁決の取消訴訟を、通常の場合は、上回っていたと考える。以下、論ずる。
同認可で、事業計画が決定されると、Xを含め道路の周辺に土地を所有する住民の権利に影響を及ぼすことが、一定の限度で具体的に予測することが可能になる。そして、その後の事業計画に定められたことに従って、換地処分が当然に行われることになる。
Xは、第1のように、土地収用裁決の段階で取消訴訟を提起できるが、その場合に、たとえ違法の主張が認められたとしても、事情判決(行訴法31条1項)がされる可能性が相当程度あり、救済が十分されるとは言いがたい。
実行的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、事業決定を対象とした取消訴訟の提起することに合理性があると考える。
ただし、本件の場合は、第2次都市計画事業認可の段階で、すでに工事は進んでいるのであって、事情判決がなされてしまう可能性が同様に残る。
以上