「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

町村が、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を地方自治法94条は許容

2014-10-15 23:00:01 | 地方自治法
 憲法で議会を置くとしながら、地方自治法で、総会を許容しています。
 この地方自治法94条は、憲法93条に反するか。

 地方自治法は、総会という議会を許容し、そのメンバーは、選挙で選ばれていない。
 憲法は、選挙権で選ばれた議員による議会を設置することを定めている。

 実際に、総会を置いている、置いた町村はあるのかな?
 
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地方自治法

第八十九条  普通地方公共団体に議会を置く。

第九十四条  町村は、条例で、第八十九条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。



憲法

第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

○2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

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刑法学:他人のやった犯罪行為まで、途中で抜けた/途中から参加したのに、責任を負う場合とは。

2014-10-15 23:00:00 | 刑法学
(平成26年10月15日23:00作成第2稿)

 途中から抜けた者に、最後までの罪の責任を負わせるか、下の事例なら、兄貴に殴られ失神して最後まで暴行に加わらなかったものに暴行死の責任を負わせることができるか、途中から抜けた兄貴に暴行死の責任を負わせることができるのか(共犯からの離脱の問題)。
 自分がやった罪の責任しか負わないのが、原則だけど、どう考えるか。

*****教室事例1*****

X(男、35歳)、Y(男、30歳)、Z(男、25歳)及びA(男、20歳)は、同じ暴力団組織に所属する組員であり、Xは幹部、Y、Z及びAは、Xの舎弟である。
Xらは、日頃から、覚せい剤の密売により生活費や組の活動資金を得るなどしていたところ、ある時、Zは、Aが覚せい剤を一部横流しして、稼ぎを自分だけのものにしているのではないかとの疑いを持った。
そして、ZがXに、「あいつ(A)は、クスリを一部抜いて稼いでますよ。他の組の奴とつるんでいるという噂もあります。」などと伝えたところ、Xは激怒し、Y及びZと共に、Aを追及して、制裁を加えるに決め、Y及びZに対し、「Aは覚せい剤を勝手に横流しして稼いでいるようだ。明日あいつを呼び出してヤキを入れるからな。」などと指示したところ、Y及びZは「分かりました。半端なことをしたらどうなるか分からせてやりましょう。」などと応じた。
翌日、Xは、組事務所にAを呼び出し、「お前、覚せい剤を横流ししてるだろう。全部分かってんだぞ。お前がこれまでに稼いだ金をすべて渡せ。」などと言って追及したが、Aは、普段からXに不満を感じていたこともあり、のらりくらりとした態度を取っていた。  
それを見たX、Y、Zは、激昂し、およそ1時間にわたり、それぞれ、顔面を手拳で殴打し、背部等を竹刀で殴打し、腹部を足蹴りするなどの暴行を加えた。
すると、Aは、腹部をおさえ顔面蒼白となりながら、ふざけた態度を取ったことを謝ってきたので、少し可哀想になったZが「もう終わりにしましょう。」とXに進言したところ、Xは、「ふざけんな。お前が持ち込んできたことだろう。勝手なこと言うんじゃねえ。」などと言って、Zの顔面を力任せに殴打したため、Zは、失神してその場に倒れた。
その後、XとYは、横流しの事実を認めるようAを追及しながら、しばらくの間、竹刀などを使ってAに暴行を加えていたが、依然としてAが認めないことから、Xは、追及するのを諦め、「俺はもう帰るぞ。少し手当してやれ。」と言い残して、組事務所を後にした。
ところが、Yは、かつてAに愛人を奪われたこともあったことから、その恨みを晴らすべく、もう少し痛めつけてやろうと思い、引き続き、数回にわたり、顔面を手拳で殴打し、胸部や腹部を足蹴りするなどの暴行を加えた。
そうして、しばらくしてYがAを組事務所に放置したまま帰宅したところ、Aは、数時間後、外傷性ショックにより死亡したが、その後の捜査において、死亡原因がどの時点における暴行によるものか判明しなかった。

(小問1)
X、Y、Zの罪責を論ぜよ。

**************




 次は、途中から抜けたのとは逆に、途中から参加した場合は、自らが加わっていない初めの暴行の責任も負うことになるのかどうか(承継的共同正犯の問題)。


****教室事例2******

(小問2)
上記事例について、以下のような事実関係であった場合、Yの罪責について論ぜよ。
当初、組事務所において、Aに対して暴行を加えたのは、XとZのみであった。その態様は、上記のとおり、顔面を手拳で殴打し、腹部を足蹴りし、背部等を竹刀で殴打するというものであった。
その後、Xらは、Aを監禁して追及するため、組が使用している付近の倉庫まで連行した上、Aに恨みを抱いていたYを呼び出して、事情を告げた。
そしたところ、Yは、Aが顔面蒼白となりもはや抵抗の意思をなくしているのを見て、この機会を利用して以前の恨みを晴らそうと思い、Xらと一緒になって、Aに対して、傍らにあった角材で背部等を殴打するなどの暴行を加えた。
そうしたところ、数時間後、Aは外傷性ショックにより死亡したが、所要の捜査によっても、Aの死亡原因につき、Yが合流する前に生じたものか後に生じたものか判別しなかった。
なお、組事務所と倉庫は車で約10分の距離にあり、XがYに連絡してからYが合流するまでは30分程度であった。

***************

 教室事例1と2を考えてみる。


第1、 小問1

1、 Yの罪責について
(1) XYZの共謀について
 XYZAは、同じ暴力団組織(以下、「組」という。)に所属する組員であり、Xは、幹部、YZAは、Xの舎弟であった。
 組は覚せい剤を密売していたが、Xの指示で、覚せい剤の一部横流しをしている疑いのあるAを懲らしめることとし、YZは、「分かりました。」など応じ、XYZは、Aに対し暴行を加えて制裁をする共謀が成立した。

(2) Yが傷害致死罪(205条)をなしたことについて
 共謀の翌日、組事務所において、Aに対し、XYZは、1時間にわたり、顔面を手拳で殴打し、背部などを竹刀で殴打し、腹部を足蹴りするなどの暴行を加えた。Zが失神するまでの暴行を、以下、「本件暴行1」という。
 その後、ZがXに殴られ失神したが、XYは、暴行を加えたが、途中、Xは組事務所を後にした。Zが失神後、Xが去るまでの暴行を、以下、「本件暴行2」という。
 X離脱後も、Yは、Aに対し、顔面を手拳で殴打し、胸部や腹部を足蹴りするなどの暴行を加えた。Xが去った後の、Yによる暴行を、以下、「本件暴行3」という。
 YがAを組事務祖に放置したまま帰宅したところ、Aは、数時間後、外傷性ショックにより死亡した。
 Yは、Aに対する暴行の全過程(本件暴行1ないし3)に関与し、その暴行の結果、外傷性ショックでAは死亡していることから、Aには、傷害致死罪が成立する(205条)。

(3)殺意について
 Yは、Aに対する殺意は、抱いていないため、殺人罪は成立しない。
 XZもまた、殺意を抱いていない。

(4)Aの遺棄について
 暴行後、Aを組事務所に放置したことには、長時間暴行を加え、負傷させた者として、保護する責任をYが有していたが、その保護をせず、Aは死亡し、Yには、保護責任者遺棄致死罪(219条)が成立するか問題になるが、被遺棄者の死傷についての認識がYにはあり、傷害罪のみ成立する。

(5) 小結
 Yには、傷害致死罪(205条)が成立する。


2、 Xの罪責について
(1) Yとの共同正犯について
 Xは、組の幹部として、Aに対する暴行を指示し、実行している。Xは、本件暴行1と2をYと共同しているが、本件暴行3はY単独でなしており、関与していない。
 
 Xは、Aに対する暴行において、途中で、離脱した(共犯関係が解消した)といえるのか問題となる。

ア、共犯の処罰根拠について
 まず、共犯が処罰される根拠は、正犯の行為を介して構成要件該当事実である法益侵害を、惹起したことにある(因果共犯論)。
 物理的因果関係と心理的因果関係の両者で、自らの関与に因果関係が認められるから、共犯として、正犯同様に罰せられるのである。

イ、
 上記、因果関係が認められるから、共犯になるのであれば、その因果関係が、心理的にも物理的にも、断絶されるといえれば、共犯から離脱したといえる。

 心理的因果性が切れたというためには、�離脱の意思の表明と、�他の共犯者の承諾が必要である。

 物理的因果性が切れたというためには、�自らが関与を打ち消すだけの行動を取る必要がある。

 すなわち、

 実行行為の途中において、共謀者の一人が他の共謀者に対し�離脱の意思を表明し、残余の共謀者がこれを�了承したと言うにとどまらず、さらに進んで、�他の共謀者が現に行っている実行行為を中止した上、以後は自己を含め共犯者の誰もが当初の共謀に基づく実行行為を継続することのない状態を作り出したような場合には、その時点で共犯関係は解消されたといえる(以下、「共犯関係解消の規範」という。)

 本件では、本件暴行1と2の後、Yにおいてなお制裁を加えるおそれが消滅していなかったのに、Xにおいて格別防止する措置を講ずることなく、成り行きにまかせて現場を立ち去ったに過ぎないのであって、Yによるその後の本件暴行3に対しても、共謀に基づくものと認められる。

 従って、Yと共謀の上、Xは、本件暴行1ないし3を実行したのであるから、Yと同様に、Xには傷害致死罪(205条)が成立する。


(2) Zへの暴行について
 Xは、本件暴行の途中、Zの顔面を力任せに殴打し、Zを失神させている。
 Xには、Zへの傷害罪(204条)が成立する。

(3) 小結
 Xには、Aに対する傷害致死罪(205条)と、Zに対する傷害罪(204条)が成立する。



3、 Zの罪責について
(1) XYとの共同正犯について
 Zは、本件暴行のきっかけとなる情報をXに提供をしており、Xの指示に従って幇助しただけではなく、積極的に本件暴行に関与しているといえる。

(2) Zが本件暴行で途中離脱したことについて
 Zは、本件暴行1の後に、Xに顔面を殴打され、失神し、本件暴行2と3には、関与していない。
 Zは、共犯関係が解消したか、上記「共犯関係の解消の規範」を用いて判断する。
 Zは、XYと共謀し、本件暴行を開始し、途中、「もう終わりにしましょう。」と進言しているが、自分が離脱の意思を示しているとは判断できないし、引き続きAに暴行を加えようとするXYの実行行為を制止したとも判断できない。失神し、本件暴行2と3に加わっていないが、共犯関係が解消していない以上、Zには、失神後の本件暴行2と3に対しても、共謀に基づくものと認められる。

(3) 小結
 Zには、Aに対する傷害致死罪(205条)が成立する。

注、Zは、失神させられており、共犯からの離脱をする行動をとることを期待できない以上は、離脱を認めるという考え方も取れる。
  その場合であっても、Zの関与具合と、生じた結果の重大性から、結果の妥当性を導くため、同時傷害の特例(刑法207条)の規定を用いて、傷害致死の共犯が成立すると考えることも可能である。

4、 結論
 XYZは、Aに対する傷害致死罪(205条)の共同正犯(60条)が成立する。



第2、 小問2
 Yの罪責について
(1) 問題の所在
 組事務所で、XZのみが暴行を加え(以下、Yが合流する前の暴行を、「本件暴行4」という。)、その後、Yが呼び出され、事情を告げられた後、Xらといっしょになって、Aに暴行を加えた(以下、Yが合流後の暴行を、「本件暴行5」という。)。
 Yは、自らがなしていない本件暴行4を含めた犯罪全体に共同正犯としての刑責を問えるかが問題である。

(2) 共謀の成立について
 Yは、呼び出された後、事情を告げられ、一緒にAに暴行を加えている。
 XZは、同じ組仲間であり、事情を告げられただけでも、事情を察知し、XZと一緒に暴行を加えており、本件暴行の共謀は、XYZ間で成立したと評価しうる。

(3) Yの承継的共同正犯について
 後行者において、先行者の行為及びその行為によって生じた結果を認識・認容するに止まらず、その行為を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思のもとに、実体法上の一罪を構成する先行者の犯罪に途中から共謀加担し、その行為などを現に自己の犯罪遂行の手段として利用した場合には、承継的共同正犯が成立する。

 自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用しているところに、承継的共同正犯の論拠がある。

 本件では、Yは、途中から暴行5に加わった。

 一個の暴行行為がもともと一個の犯罪を構成するもので、後行者は、一個の暴行そのものに加担するのではない上に、後行者には、被害者に暴行を加えること以外の目的はないのであるから、後行者が先行者の行為等を認識・認容していても、他に特段の事情のない限り、先行者の暴行も、自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用したものと認めることができず、このような場合、共謀加担後の行為についてのみ共同正犯の成立をすべきこととなる。

 従って、Yには、XZらの本件暴行4の承継的共同正犯は成立せず、本件暴行5のみの実行行為をしたこととなる。

(4)  同時傷害の特例の適用について
 本件では、Aは外傷性ショックにより死亡したが、所要の捜査によっても、Aの死亡原因につき、Yが合流する前の暴行4により生じたものか後の暴行5に生じたものか判別していないとなると、暴行4に帰責性のないYに、暴行4によるかもしれない死亡の結果の帰責性負わせることはできなくなる。

 傷害がいずれか者の暴行に生じた可能性があるとき、暴行が同一機会に行われた場合、生じた傷害について刑事責任を問え、傷害だけでなく傷害致死にも適用される(最判昭和26.9.20)。
 本来、共犯関係がないものへの特例であるが、だからといって、本条は、共犯のものを適用除外しているものとはいえず、承継的共犯の事案でも適用が可能である(大阪地判平成9.8.20)。

 本件では、暴行4と暴行5は、異なる場所で行われてはいるが、本件暴行4と5は、なされた場所が組事務所と倉庫でそれぞれ場所が異なるが、同様な室内でなされた暴行であり、両者は約10分の距離に位置し、また、本件暴行4から、一時中断し、Yが合流して、本件暴行5が開始するまで、わずか30分であったのであって、本件暴行4と5は、場所的にも時間的にも近接し、同一機会の暴行と評価しうる。

 すると、Yの暴行には、同時傷害特例が適用しうる。

(5) 傷害致死罪について

 Aは、本件暴行4と5により、数時間後、外傷性ショックで死亡した。

 Yには、同時傷害の特例(207条)を適用し、傷害致死罪(205条)が成立する。

以上




 
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独禁法違反:指定県以外での低価格販売禁止、製造工場建設した社へ原料供給拒絶、価格差補填金強制

2014-10-15 22:59:59 | 経済法、独占禁止法
(2014/10/15水曜日 23:00作成第2稿) 

 前のブログの事案を簡略化した教室事例です。

 独占禁止法の適用について、考えてみます。

1、A連について
 A連は、農業協同組合法に基づき設立された農業協同組合であり、22条に該当する一定の要件を備えた協同組合であり、かつ、会員に対する青果物用段ボール箱の供給その他の経済事業を行っている事業者である。


2、本件の一定の取引分野について
 一定の取引分野とは、競争制限が行われる場であり、競争の実質的制限とは、特定の事業者・団体がその意思である程度自由に価格・品質・数量等の競争条件を左右することによって市場を支配できる状態をいう。
 本件では、各県におけるJA出荷組合(以下「需要者」という。)への青果物用段ボール取引条件の価格等の競争条件が、下記で述べるように、A連によって支配される状態にあり、「各県の需要者の青果物用段ボール取引市場」が一定の取引分野である。


3、事実4において
(1)単独の取引拒絶(一般指定2項)について
 単独の取引拒絶(一般指定2項)とは、不当に、ある事業者に対し取引を拒絶することをいう。事業者がどの事業者と取引するかは、基本的には事業者の取引事業者の取引先選択の自由に属するので、他の違反行為の実行確保手段として取引拒絶が行われる場合、もしくは、有力な事業者が競争者を市場から排除するための手段として行われる場合に限られる。

 本件では、本件では、A連が、X県での指定メーカーであったB社が、Y県で系統外販売を行おうとしたのに対し、それを阻止するため、B社に低価格販売中止を申し入れ、B社をX県での指定メーカーから除外した。
 A連によるB社から供給を受ける段ボールを拒絶しており、当該単独の取引拒絶は、低価格販売をする業者を排除するという違法行為の実行確保手段で取引拒絶が行われている。

 A連の行為は、単独の取引拒絶に該当する。

(2)拘束条件付取引(一般指定12項)について
 拘束条件付取引(一般指定12項)とは、有力な事業者が、地域外顧客への販売を制限し、当該商品の価格が維持され、よって、流通業者間の価格競争を減殺することをいう。

 A連は、さらに低価格で販売を続けたときは、他の指定県についても除外する旨を伝えて、B社に他の指定県で取引を行っている。
 指定メーカーB社とその取引の相手方である需用者との取引について、指定県以外の自己の顧客に直接販売しないという取引先についての拘束条件を付け当該指定メーカーと取引しているのであって、一般指定12項(拘束条件付取引)に該当する。

(3)小括
 従って、A連のB社に対する行為は、一般指定2項及び一般指定12項に該当し、不公正な取引方法であり、かつ、22条但書前段の不公正な取引方法にも該当するため、除外事由とはならず、19条違反である。


4、事実5について
 単独の間接取引拒絶(一般指定2項)とは、不当に、他の事業者に、ある事業者に対し取引を拒絶させることをいう。
 事業者がどの事業者と取引するかは、基本的には事業者の取引事業者の取引先選択の自由に属するので、他の違反行為の実行確保手段として取引拒絶が行われる場合、もしくは、有力な事業者が競争者を市場から排除するための手段として行われる場合に限られる。

 A連は、C社がZ県で工場建設し段ボール箱の製造を開始したため、Z県の指定メーカーD社が、C社にシートを供給することをやめさせた。
 供給をやめさせたのは、その供給をうけてC社が青果物用段ボール箱を製造し、低価格でZ件に販売することを阻止する目的であって、有力な事業者が競争者を市場から排除するための手段として行われたものといえる。

 従って、A連のD社に対する行為は、一般指定2項に該当し、不公正な取引方法であり、22条但書前段の不公正な取引方法にも該当するため、除外事由とはならず、19条違反である。


5、事実6について
 2条9項5号ロの「優越的地位の濫用」とは、取引上の地位が相手方に優越している者が、正常な商慣習に照らして不当に、継続取引先に経済上の利益を提供させることをいう。このことを許すと、取引上の一方当事者である地位が優越した者が、他方当事者に対して、取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障となるため、優越した地位の者が他方に著しく不利益な要請などを行っても他方が受け容れざるを得ないで取引されることとなり、不公正な取引方法である。

 本件では、段ボールメーカーは、1回あたりの取引量が多く、安定的需要が見込まれることから、A連との取引を強く望んでいる状況にあり、A連は、優越的地にあったといえる。
 優越的地位のA連は、系統外ルートで低価格の売り込みがあったときは、系統ルートによる需用者向け価格と当該低価格との差額に一定の数量を乗じた金員の補填をすることを、指定メーカーに「市況対策費」と称して支払わせた。各県のJAが負担すべき価格差補填金を、当該売り込みの発生とは関係のない指定メーカーに負担させており、指定メーカーの自由かつ自主的な判断を侵害しており、公正競争阻害性を認定でき、2条9項5号ロに該当する。
従って、A連の当該指定メーカーへの行為は、2条9項5号ロに該当し、かつ、22条但書前段の不公正な取引方法にも該当するため、除外事由とはならず、19条違反である。



6、私的独占について
 私的独占とは、事業者が他の事業者の事業活動を排除また支配し、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

 A連は、単独にまたは、他の事業者である指定メーカーと通謀して、上述3ないし5の各不公正な取引方法を用いて、系統外ルートの排除を行っており、結果、青果物用段ボール取引条件の価格等の競争条件を支配しているといえ、一定の取引分野における競争を実質的に制限している。

 なお、公益性はないし、22条但書後段にも該当するため、除外事由とはならない。

 従って、私的独占(2条5項)に該当し、3条前段違反である。   



以上



***************************教室事例******************************************

1 A農業協同組合連合会(以下「A連」という)は、農業協同組合法に基づき設立された農業協同組合であり、会員に対する青果物用段ボール箱の供給その他の経済事業を行っている。
  A連は、地域ごとに組織されている農業協同組合(以下「JA」という)が構成員となっておおむね都道府県ごとに設立されている都道府県経済農業協同組合連合会(以下「経済連」という)を会員としている。

2 わが国の青果物用段ボール箱の主要な流通経路は、段ボール箱メーカーからA連・経済連を経て、JA・出荷組合(以下「需要者」という)に供給されるルート(以下「系統ルート」という)と、段ボール箱メーカーから直接又は農業用資材販売業者を経て需要者に供給されるルート(以下「系統外ルート」という)とがあり、系統ルートが流通量の約5割を占めている。
段ボール箱メーカーは、1回当たりの取引量が大きく、安定的需要が見込めるA連との取引を強く望んでいる状況にある。

3 A連は、段ボールシート・段ボール箱のメーカーの主要な者との間に「売買基本契約」を締結し、これらの者(以下「指定メーカー」という)から青果物用段ボール箱を購入している。また、A連は、青果物用段ボール箱の購入に際し、原則として、その製造に要する段ボール原紙をそのメーカーから購入し指定メーカーに供給することとしている。
  A連は、青果物用段ボール箱を系統ルートにより供給するに当たり、指定メーカー別にそれぞれが製造した青果物用段ボール箱を納入する地域を指定することとしており、この地域をおおむね経済連の事業区域ごとに定め、これを「指定県」と称している。

4 A連は、X県を指定県とするB社が、指定県ではないY県において青果物用段ボール箱を系統外ルートにより系統ルートより低価格でJAに販売していたところ、同社に対し、右低価格販売を中止するように申し入れるとともに、同社の指定県からX県を除外し、また、さらに低価格での販売を続けたときは他の指定県についても除外する旨を伝えた。このためB社はA連に対し、Y県の需要者に対し受注活動を行わない旨を約束・実行している。

5 A連は、C社がZ県において段ボール箱製造工場を建設し、青果物用段ボール箱の製造を開始したため、Z県を指定県とする指定メーカーに対し、C社に青果物用段ボール箱向けに段ボールシートを供給しないよう要請した。これを受けてZ県の指定メーカーであるD社はC社へのシートの供給を中止した。

6 A連は、需要者が系統外ルートにより青果物用段ボール箱を購入するのを防止するため、系統外ルートによる低価格での売り込みがあったときは、その売り込みを受けた地区のJAの申出に応じ、当該JAに対し、系統ルートによる需要者向け価格と当該低価格との差額に一定の数量を乗じた金員を補填することとし、これに要する費用を指定メーカーに「市況対策費」と称して支払わせている。支払を要請された指定メーカーは、A連との青果物用段ボール箱の取引の継続を必要とする立場上、「市況対策費」の負担を余儀なくされている。

設問 上記のA連の行為に独占禁止法上どのような問題があるかを論じなさい。
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独禁法 拘束条件付取引・優越的地位濫用等の例 全国農業協同組合連合会VS青果物用段ボール箱製造会社

2014-10-15 17:18:15 | 経済法、独占禁止法

 公正取引委員会から勧告が出された例。

 青果物用段ボール箱の供給に関連した事例です。


 引用条文は、現在改正されています。



********公正取引委員会ホームページより*************************
http://snk.jftc.go.jp/JDSWeb/jds/dc005/DC005?selectedDocumentKey=H020220H02J02000001_ 

全国農業協同組合連合会に対する件

独禁法19条
一般指定2項(現行、法2条9項1号ロ)一般指定・13項(現行、同12項)・14項2号(現行、法2条9項5号ロ)




平成2年(勧)第1号

勧告審決





東京都千代田区大手町1丁目8番3号
全国農業協同組合連合会
右代表者 理事 鹿垣 籾義

 公正取引委員会は、平成2年1月11日、右の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第48条第1項の規定に基づき勧告を行ったところ、右の者がこれを応諾したので、同条第4項の規定に基づき、次のとおり当該勧告と同趣旨の審決をする。

主文
一 全国農業協同組合連合会は、
(一) 株式会社トーモクに対し昭和57年11月19日に、日本ハイパック株式会社に対し昭和60年4月上旬及び昭和61年2月中旬に、並びに鎌田段ボール工業株式会社に対し昭和60年3月中旬に行った青果物用段ボール箱を系統外ルートにより需要者に販売しないようにする旨の申入れ
(二) 昭和56年10月下旬、「関東5県対策」の実施に際し、レンゴー株式会社、本州ダンボール工業株式会社、福岡製紙株式会社、株式会社トーモク及び森紙業株式会社に対し、青果物用段ボール箱を系統外ルートにより需要者に販売しないようにするために確認させた事項をそれぞれ撤回し、これらと同様に東日本において取引先段ボール箱製造業者に対し行っている青果物用段ボール箱を系統外ルートにより需要者に販売しないようにさせる措置を取りやめるとともに、今後、これと同様の行為を行ってはならない。

二 同連合会は、
(一) セッツ株式会社に対し昭和60年7月中旬に行った青果物用段ボール箱の需要者に対する受注活動を取りやめるようにする旨の申入れ
(二) 東日本段ボール株式会社に対し昭和62年1月中旬及び日本マタイ株式会社に対し昭和62年3月ごろ行った株式会社トキワパッケージに青果物用段ボール箱向け段ボールシートの供給をしないようにする旨の要請
(三) レンゴー株式会社、本州製紙株式会社、株式会社トーモク及び森紙業株式会社に対し昭和62年夏から秋にかけて行った常盤産業株式会社から段ボール中芯原紙を購入しないようにする旨の要請
をそれぞれ撤回するともに、今後、取引先段ボール箱製造業者以外のものが青果物用段ボール箱の製造販売を開始することを妨げる行為を行ってはならない。


三 同連合会は、東日本において取引先段ボール箱製造業者に対し行っている「市況対策費」と称する金員の提供を要請する措置を取りやめるとともに、今後、これと同様の行為を行ってはならない。


四 同連合会は、前三項に基づいて採った措置を、東日本に所在する青果物用段ボール箱の製造業者、販売業者及び需要者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、当委員会の承認を受けなければならない。

五 同連合会は、前各項に基づいて採った措置を速やかに当委員会報告しなければならない。


事実
当委員会が認定した事実は、次のとおりである。

一(一) 全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)は、肩書地に主たる事務所を置き、昭和47年3月30日、農業協同組合法(昭和22年法律第132号)に基づき設立された農業協同組合連合会であり、会員に対する青果物用段ボール箱の供給その他の経済事業を行っている者である。
全農は、農業協同組合(以下「単協」という。)単協が構成員になっておおむね都道府県を地区として設立されている都道府県経済農業協同組合連合会(以下「経済連」という。)その他の農業団体を会員としており、会員の数は、平成元年6月末日現在、いわゆる総合農協のうちのほとんどすべての単協及びすべての経済連を含む3,654名である。
全農は、全国に東京支所等5支所を置いており、そのうち東京支所の事業区域は東北6県、関東1都6県、新潟県、山梨県及び長野県(以下「東日本」という。)である。
(二) 我が国における青果物用段ボール箱の主要な供給経路は、段ボール箱製造業者から全農及び経済連を経て単協、出荷組合等の需要者(以下「需要者」という。)に供給される経路(以下「系統ルート」という。)と段ボール箱製造業者から直接に又は農業用資材販売業者等を経て需要者に供給される経路(以下「系統外ルート」という。)である。
青果物用段ボール箱の供給数量全体に占める系統ルートによる供給数量の割合は、昭和62年7月から昭和63年6月までの1年間において、東日本で約6割、全国で約5割である。
青果物用段ボール箱の製造業者は、1回当たりの取引数量が大きく、かつ、安定的需要が見込めること、代金回収が確実であること等から、全農との取引を強く望んでいる状況にある。
(三) 全農は、段ボールシート及び段ボール箱を製造している者のうち主要なものとの間に「売買基本契約」を締結し、これらの者(以下「指定メーカー」という。)から青果物用段ボール箱を購入している。また、全農は、青果物用段ボール箱の購入に際し、原則として、その製造に要する段ボール原紙を段ボール原紙製造業者から購入して指定メーカーに供給することとしている。
全農は、青果物用段ボール箱を系統ルートにより供給するに当たり、指定メーカー別にそれぞれが製造した青果物用段ボール箱を納入する地域を指定することとしており、この地域をおおむね経済連の事業区域ごとに定め、これを「指定県」と称している。
指定メーカーのうち東日本にその指定県を有する者は、平成元年6月末日現在24社である。

二 全農は、かねてから、系統ルートによる青果物用段ボール箱の供給数量の維持拡大に努めているところ、その一層の推進を図るため、東日本において、指定メーカーが青果物用段ボール箱を系統外ルートにより販売しないようにさせる措置及び指定メーカー以外のものが青果物用段ボール箱の製造販売を開始ることを妨げる措置を講じ、また、需要者が青果物用段ボール箱の購入を系統ルートから系統外ルートに変更することを防止する対策を行うために要する金員を指定メーカーに提供させる措置を講じている。
これらに関する事例は、次のとおりである。

(一)イ 全農は、指定メーカーであって神奈川県等を指定県とする株式会社トーモク(以下「トーモク」という。)が、昭和57年ごろ、指定県でない長野県において青果物用段ボール箱を系統外ルートにより系統ルートによる需要者向け価格より低い価格(以下「低価格」という。)で約20の単協に販売していたところ、同年11月19日、同社に対し、右低価格販売を直ちに取りやめるよう申し入れるとともに、同社の指定県から神奈川県を即日除外し、また、更に右低価格販売を続行するときは、他の指定県についても順次これを除外し、最終的には取引を停止する旨を申し渡した。
このため、トーモクは、昭和57年11月下旬、全農に対し、長野県下における青果物用段ボール箱の販売先及び販売先別数量を報告するとともに、以後は、同県の需要者に対し受注活動を行わない旨及び需要者から引き合いがあった場合にはその数量、価格等を全農に連絡する旨を申し出た。
その後、トーモクは、前記単協向けの青果物用段ボール箱の販売を取りやめている。
ロ 全農は、指定メーカーである日本ハイパック株式会社(以下「日本ハイパック」という。)が、指定県でない山形県において出荷組合からの引き合いに応じ昭和60年産ブドウ用段ボール箱を系統外ルートにより低価格で販売することとしていたところ、昭和60年4月上旬、同社に対し、今後需要者に対し受注活動を行わないよう申し入れた。
次いで、全農は、右の出荷組合が昭和61年産ブドウ用段ボール箱についても日本ハイパックに発注しよとする動きを示したので、昭和61年2月中旬、同社に対し、需要者から引き合いがあっても系統外ルートにより販売しないようにする旨を確約するよう申し入れた。
これを受けて、日本ハイパックは、同月下旬、全農対し、以後は、全農の指示を遵守し、需要者に対し受注活動をしない旨を申し出た。
その後、日本ハイパックは、山形県において青果物用段ボール箱を需要者に販売していない。
ハ 全農は、指定メーカーでなかった鎌田段ボール工業株式会社以下「鎌田段ボール工業」という。)がかねてから岩手県等において青果物用段ボール箱を系統外ルートにより低価格で需要者に販売していたところ、昭和58年夏ごろ岩手県経済連とその対策について検討した結果、鎌田段ボール工業が低価格販売等を行わなければ指定メーカーとすることとし、同社にこの旨を伝えた。しかして、鎌田段ボール工業がこれを了承したので、全農は、昭和58年秋ごろから1年間同社の販売状況を監視した後、昭和60年3月中旬、同社に対し、
(イ) 岩手県内において、今後、需要者直接販売しないようにする旨
(ロ) 岩手県外において需要者に直接販売しているものについては、協議の上、今後、系統ルートによる供給に切り替える旨
を申し入れ、その遵守を確約させた上、同社を岩手県を指定県とする指定メーカーとし、取引を開始した。
その後、鎌田段ボール工業は、青果物用段ボール箱を供給するに際し、右確約事項を遵守している。

(二)イ 全農は、段ボール原紙の購入先であるセッツ株式会社が埼玉県熊谷市に段ボール箱製造工場を建設し、昭和60年6月ごろから青果物用段ボール箱の需要者に対して受注活動を行っていたところ、同社がこの分野に新たに参入すると系統外ルートによる低価格販売が拡大することが懸念されたため、同年7月中旬、同社に対し、右受注活動を取りやめるよう申し入れた。
これを受けて、セッツ株式会社は、全農との段ボール原紙の取引に悪影響が出ることを懸念して、右受注活動を取りやめた。
ロ 全農は、株式会社トキワパッケージ(以下「トキワパッケージ」という。)が埼玉県児玉町に段ボール箱製造工場を建設し、昭和61年9月ごろから青果物用段ボール箱の製造販売を開始したところ、これを取りやめさせるため、次の措置を講じた。
(イ) 全農は、昭和62年1月中旬、東日本段ボール株式会社埼玉県を指定県とする指定メーカーとの会合において、これら指定メーカーに対し、トキワパッケージに青果物用段ボール箱向け段ボールシート(以下「青果物用シート」という。)を供給しないよう要請した。
このため、これら指定メーカーのうちトキワパッケージに青果物用シートを供給していた東日本段ボール株式会社は、全農から青果物用段ボール箱の取引を停止されることを懸念し、昭和62年2月初旬、トキワパッケージに対する青果物用シートの供給を停止した。
(ロ) また、全農は、東日本段ボール株式会社が右(イ)の青果物用シートの供給を停止した後、指定メーカーである日本マタイ株式会社がトキワパッケージからの求めに応じ青果物用シートを供給しようとしていたところ、同社に対し、昭和62年3月ごろ、トキワパッケージに青果物用シートを供給しないよう要請した。
このため、日本マタイ株式会社は、全農との青果物用段ボール箱の取引に悪影響が出ることを懸念し、トキワパッケージに対し青果物用シートを供給しないこととした。
(ハ) トキワパッケージは、右(イ)及び(ロ)により青果物用シートの入手が困難となったため、昭和62年6月ごろ、段ボールシートの製造設備を導入して自社で青果物用シートを製造し、青果物用段ボール箱の製造販売を行うこととした。
そこで、全農は、トキワパッケージに青果物用段ボール箱の製造販売を取りやめさせるための方策して、同社の実質的な親会社である常盤産業株式会社(以下「常盤産業」という。)に対し経済上の不利益を与えることとし、昭和62年夏から秋にかけて、常盤産業から段ボール中芯原紙を購入しており、かつ、指定メーカーであるレンゴー株式会社(以下「レンゴー」という。)、本州製紙株式会社(以下「本州製紙」という。)、トーモク及び森紙業株式会社(以下「森紙業」という。)の4社に対し、これらとの会合等において、常盤産業から段ボール中芯原紙を購入しないよう繰り返し要請した。
これを受けて、右4社のうち森紙業を除く3社は、全農からの要請が再三であったことにかんがみ、全農との青果物用段ボール箱の取引に悪影響が出ることを懸念して、同年11月以降、順次、常盤産業からの段ボール中芯原紙の購入数量を削減していった。
(ニ) しかして、トキワパッケージは、昭和63年10月1日、段ボール箱の製造販売を中止するに至った。

(三) 全農は、かねてから、東日本において、需要者が青果物用段ボール箱の購入を系統ルートから系統外ルートに変更することを防止するため、同一の規格の青果物用段ボール箱について系統外ルートによる低価格での売り込みがあったときは、その売り込みを受けた地区の単協の申出に応じ、当該単協に対し、系統ルートによる需要者向け価格と当該低価格との差に同一の収穫期用として系統ルートにより購入した当該規格の青果物用段ボール箱の全数量を乗じて得た額の金員を補てんすることとしている。
全農は、右の補てんに要する費用について、必要に応じ、その全部又は一部を「市況対策費」と称して当該単協が系統ルートにより購入した青果物用段ボール箱を製造した指定メーカーに提供させることとし、当該指定メーカーにその提供を要請している。この要請は、他の段ボール箱製造業者等が行った売り込みに係るものについてまで行われている。
しかして、右要請を受けた指定メーカーは、全農との青果物用段ボール箱の取引の継続を必要とする立場上、「市況対策費」の負担を余儀なくされており、また、指定メーカーは、この負担を回避するため、自ら青果物用段ボール箱を系統外ルートで需要者に低価格で販売しないようにしているほか、他の段ボール箱製造業者に対しても同様の行為をしないよう要請している。


(四) 全農は、かねてから、段ボール箱製造業者等による青果物用段ボール箱の低価格での売り込みが頻繁に行われ、同段ボール箱の系統ルートによる供給割合が東日本の中で相対的に低かった茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県及び千葉県(以下これらを「関東5県」という。)において、この供給割合を引き上げるため、その方策について関東5県の各経済連と協議、検討してきた。
その結果、全農は、昭和56年9月ごろ、関東5県における有力な段ボール箱製造業者であり、これら5県のすべてを指定県としていたレンゴー並びに一部の県を指定県としていた本州ダンボール工業株式会社、福岡製紙株式会社、トーモク及び森紙業の5社(以下「5社」という。)が指定メーカーであるにもかかわらず青果物用段ボール箱を系統外ルートにより低価格で販売していたので、これらの系統外ルートによる販売を系統ルートによる供給に切り替えさせること、指定メーカー以外のものが行う系統外ルートによる低価格での販売を防止させること、本州ダンボール工業株式会社、トーモク及び森紙業の3社についてはレンゴーと同様に同地区のすべての県を順次指定県として追加していくこと等を内容とする「関東5県対策」と称する措置を講じることとした。次いで、全農は、昭和56年10月下旬、「関東5県対策」を実施するため、5社の青果物用段ボール箱の営業担当責任者を東京支所に招致し、5社に対し、
イ 直接需要者に又は農業用資材販売業者等に青果物用段ボール箱を販売しないようにする旨及び系統外ルートにより販売する他の段ボール箱製造業者に青果物用シートを販売しないようにする旨
ロ 系統外ルートにより販売しいる青果物段ボール箱については、全農及び関係経済連と協議の上、段階的に系統ルートによる供給に切り替える旨
ハ やむを得ず系統外ルートにより青果物用段ボール箱を販売せざるを得ない場合には、事前に全農及び関係経済連と協議する旨及び原則として系統ルートによる需要者向け価格以上の価格で販売するようにする旨
ニ 5社が右イ、ロ又はハに反した場合は、ペナルティとして、指定県の一部除外、取引の停止又は「市況対策費」等を負担させる措置を採る旨
を確認させた。

なお、5社のうち福岡製紙株式会社は昭和58年6月28日に、本州ダンボール工業株式会社は昭和61年6月30日に、それぞれ本州製紙に吸収合併された。
右確認に基づき、5社及び本州製紙は、多数の取引先に対し、青果物用段ボール箱又は青果物用シートの販売を中止し又はその販売数量を削減するとともに、青果物用段ボール箱を系統外ルートにより販売するときは全農と協議している。


法令の適用

右の事実に法令を適用した結果は、次のとおりである。

一 前記事実の一、二(一)及び(四)によれば、全農は、指定メーカーと青果物用段ボール箱を取引するに当たり、指定メーカーの事業活動を不当に拘束する条件をつけて当該指定メーカーと取引しているものであり、また、前記事実の一及び二(二)イによれば、全農は、段ボール原紙製造業者から段ボール原紙を購入するに当たり、段ボール原紙製造業者の事業製造業者の事業活動を不当に拘束する条件をつけて当該段ボール原紙製造業者と取引しているものであり、これらは、いずれも不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項(現行、一般指定12項)に該当し、

二 前記事実の一及び二(二)ロによれば、全農は、不当に、指定メーカーに、段ボール箱製造業者に対する青果物用シートの供給を拒絶させ、又は段ボール原紙製造業者からの段ボール中芯原紙の購入数量を制限させているものであり、これらは、前記不公正な取引方法の第2項(現行、法2条9項1号ロ)に該当し、

三 前記事実一及び二(三)によれば、全農は、自己の取引上の地位が優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、指定メーカーに対し、自己のために金銭を提供させているものであり、これは、前記不公正な取引方法の第14項第2号(現行、法2条9項5号ロ)に該当し、

それぞれ、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。


よって、主文のとおり審決する。

平成02年02月20日

委員長 梅澤 節男
委員 宮代 力
委員 伊従 寛
委員 佐藤 徳太郎
委員 宇賀 道郎

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地方公共団体がしごとを進める上での7つの原則

2014-10-15 12:32:57 | 地方自治法

地方公共団体がしごとを進める上での7つの原則原則


1 法令適合の原則:法令に違反して事務を処理してはならない(地方自治法2条16項・17項)

2 住民福祉増進の原則:住民の福祉の増進に努める(同条14項)

3 能率化の原則:最小の経費で最大の効果をあげるようにする(同条14項)

4 合理性の原則:常にその組織及び運営の合理化に努める(同条15項)

5 規模適正化の原則:地方公共団体の規模の適正化を図る(同条15項)

6 総合性・計画性の原則:市町村は、議会の議決を経てその地域に於ける総合的かつ計画的な行政の運営を図る(同条4項)

7 誠実性の原則:執行機関は、その地方公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理・執行する(同法138条の2)


*************************************

第二条  地方公共団体は、法人とする。

○2  普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。

○3  市町村は、基礎的な地方公共団体として、第五項において都道府県が処理するものとされているものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。

○4  市町村は、前項の規定にかかわらず、次項に規定する事務のうち、その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものについては、当該市町村の規模及び能力に応じて、これを処理することができる。

○5  都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。

○6  都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当つては、相互に競合しないようにしなければならない。

○7  特別地方公共団体は、この法律の定めるところにより、その事務を処理する。

○8  この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

○9  この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。
一  法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)

二  法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)

○10  この法律又はこれに基づく政令に規定するもののほか、法律に定める法定受託事務は第一号法定受託事務にあつては別表第一の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に、第二号法定受託事務にあつては別表第二の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に掲げるとおりであり、政令に定める法定受託事務はこの法律に基づく政令に示すとおりである。

○11  地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づき、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえたものでなければならない。

○12  地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない。この場合において、特別地方公共団体に関する法令の規定は、この法律に定める特別地方公共団体の特性にも照応するように、これを解釈し、及び運用しなければならない。

○13  法律又はこれに基づく政令により地方公共団体が処理することとされる事務が自治事務である場合においては、国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない。

○14  地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

○15  地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。

○16  地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。

○17  前項の規定に違反して行つた地方公共団体の行為は、これを無効とする。


第百三十八条の二  普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。
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中央区議会の決算特別委員会委員の議会ホームページでの掲載について

2014-10-15 10:31:47 | 議会改革

 中央区議会では、先日まで、決算特別委員会が開催されていました。

 区議会に問い合わせを致しましたが、区民が決算特別委員会の構成は、現段階では、事後的に「区議会のお知らせ」の広報紙で知る形しかないようです。
 (当然に公開されていると思っていて、いろいろ区議会のホームページをあちこち見ましたが、公開されていなかったことに気づきました。やむなく区議会事務局にお問い合わせをした次第。)

 区議会のホームページでは、委員会構成を掲載部分があります。
 http://www.kugikai.city.chuo.lg.jp/kugikai/iinkaikousei.html

 決算特別委員会が構成されたら、すぐに、当該ページを更新し、決算特別委員会、予算特別委員会の委員のほうも掲載いただけるとありがたいと思います。

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