「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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医療関連の独禁法問題:安心安全な医療用材料、医薬品が流通されますように。

2014-10-29 23:00:00 | 経済法、独占禁止法
 医療用材料、医薬品は、安全なものが、確実に供給されることが必要です。

 卸売段階、小売段階で、以下の教室事例のような取引方法が用いられる場合があり、独禁法上の問題が生じます。

 設問に答えるようにして、自分なりの独禁法に関する考え方を書きます。

*******教室事例*******

1 甲製品は、医療用材料の一種であり、メーカーから直接又は卸売業者を通じて販売業者に供給され、販売業者は医療機関に納入している。甲製品については、品質管理上の理由から、品質保証期限が比較的短期間に設定されている。また、甲製品の販売については、安全性の理由から、法令により、取引内容の記帳義務が課せられている。
  X社は、40%のシェアを有する甲製品のトップメーカーであり、X社製の甲製品は医療従事者間でブランド力もあり、流通業者にとってX社製の甲製品を取り扱わないことは営業上不利である。
  一般に、甲製品を含め、医療用材料の流通に携わる業者の数は多く、流通経路も複雑になっている。医療機関は、一般に価格交渉力が強く、甲製品についても購入価格を販売業者と個別に交渉しており、その価格は医療機関ごとにかなり異なっている。医療用材料の流通業者は、その共通の利益の増進を図るため、任意団体としてY協会を設立しており、Y協会は、医療用材料に関連する医療・技術情報の伝達等において重要な機能を果たしている。
  X社は、平成26年7月から、甲製品の販売政策を次のとおりとすることとし、これを実施している。
  ア 従来取引していた販売業者のうち一定規模以上の取引がある者を「特約店」とし、「特約店契約」により取引する。
  イ 従来取引していた卸売業者を「代理店」とし、「代理店契約」により取引する。
  ウ 従来取引していた販売業者であって、特約店にはなれなかった者を「協力店」とし、「協力店契約」により取引する。

  ○特約店契約においては、次の内容が定められている。
   1 特約店は、X社製の甲製品のみを扱い、X社からのみ購入する。
   2 特約店は、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わない。
   3 特約店は、医療機関向けに医療・技術情報の伝達等のサービスを行わなければならない。

  ○代理店契約においては、次の内容が定められている。
   1 代理店の販売価格は、X社が定める卸売価格を基準として、X社と代理店との間で協議して決定する。
   2 代理店は、Y協会の会員(特約店および代理店を除く)に対してのみ販売する。

  ○協力店契約においては、次の内容が定められている。
   1 協力店は、代理店からのみ購入する。
   2 協力店は、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わない。
   3 特約店は、医療機関向けに医療・技術情報の伝達等のサービスを行わなければならない。


2 X社は、特約店および協力店に対し、「医療機関向けに医療・技術情報の伝達等のサービスを行わなければならない」旨の条項を根拠に、通信販売・ネット販売を行わないよう求めている。また、X社は、品質保証期限の遵守および法令上の記帳義務の履行を確認する必要があるとして、特約店および協力店に対し、販売先医療機関、販売価格、販売数量等を毎月報告させている。さらに、X社は、代理店に対し、同社が定めた卸売価格を通知するとともに、品質保証期限の遵守および法令上の記帳義務の履行を確認する必要があるとして、販売先協力店、販売価格、販売数量等を毎月報告させている。
   なお、X社製の甲製品のうち、約7割が特約店経由で、約3割が代理店経由で、販売されている。

設問1 X社の販売政策が卸売段階の競争に及ぼす影響について具体的に論じなさい。

設問2 X社の販売政策が医療機関向けの競争に及ぼす影響について具体的に論じなさい。

設問3 X社の販売政策に対する独占禁止法の適用について具体的に論じなささい。


************************************

(2014/10/29第3稿)

第1、設問1 卸売段階の競争に及ぼす影響について

1、販売政策後の卸段階の流通経路について

 販売政策実施前は、甲製品の流通経路が複雑な状態にあったが、販売政策を実施後、X社が、卸売業者と代理店契約を締結し、販売業者と特約店契約または協力店契約を締結することで、1)卸売業者は、Y協会の会員の協力店にのみ甲製品を販売することとなり、2)特約店は、X社からのみ購入することとなり、3)協力店は、代理店からのみ購入することとなって、甲製品の流通経路が二系統に統一化されることとなった。
 すなわち、一つの系統は、卸業者を経由しない経路(特約店経由)であって、一定以上の販売業者が特約店として、X社から直接購入することとなり、もう一つの系統(代理店経由)は、卸売業者を経由する経路として、X社から、代理店に甲製品が販売され、協力店は、代理店から甲製品を購入することとなる。
 また、販売政策後に、仲間卸が禁止される。

 販売政策後の流通経路の変化を念頭に、卸売段階でなされた4つの政策の影響を、以下、検討する。


2、特約店が、X社製製品以外を取り扱えないこと(専売店化)の影響

 特約店は、X社製甲製品以外は扱えなくなる(特約店契約1項)。この政策は、特約店を専売店化するものである
 
 X社製甲製品は、甲製品の40%のシェアを占めており、また、医療従事者間でブランド力があり、流通業者にとって、X社製の甲製品を取り扱わないことは営業上不利であることから、一定規模以上の有力な販売業者のほとんどは、X社の特約店になることを望んでいることが思料され、結果、X社製の製品を扱うために他社製品を取り扱わないようになることが考えられる。

 従って、X社の競争メーカーは、有力な販売ルートであるX社の特約店との取引ができなくなり、かつ、これに代わる流通ルートを容易に確保することができなくなるため、競争上極めて不利を被るおそれがあり、他社製甲製品が、甲製品市場から排除されて行く影響が考えられる。


3、卸売価格の拘束による影響
 特約店は、自由に価格を決めることが出来るが、代理店の販売価格は、卸売価格が基準とされることとなる(代理店契約1項)。この政策は、代理店の販売価格の自由な決定を拘束するものである。

 この政策により、代理店経由の価格では、代理店は、自主的に卸売価格を決定することができなくなり、約3割を占めるX社製甲製品の卸売段階における価格競争が減少するおそれがある。すなわち、X社製製品価格のブランド内競争が制限される影響がでることが考えられる。


4、仲間卸の禁止による影響
 卸売段階で、仲間卸が禁止されることになり、特約店から協力店に販売されることがなくなり、代理店から購入せざるをえなくなる。協力店等が特約店等の仲間卸を通じてX社製甲製品を購入しようとするのは、現在購入している価格よりも安く買えるからに他ならない。
 
 従って、代理店の販売価格は、X社の販売価格が基準となったものとなり、他のルートから購入することによる価格競争ができず、価格の維持がなされる影響がでることが考えられる。


5、代理店、特約店への販売先、販売価格、販売数量などを毎月報告させる流通政策について

 この政策は、上記234の販売政策の実行確保手段として用いられるものである。
 
 X社の競争メーカーが有力な販売業者と取引できなくなることにより、甲製品の販売分野において40%を占めるX社の市場支配力がさらに強まり、価格競争をはじめ各種の競争が減少するおそれがある。



第2、設問2 医療機関向けの競争に及ぼす影響について

1、販売政策後の医療機関向けの小売段階の流通経路について

 販売政策後、小売段階の流通経路は、特約店契約と協力店契約には、医療機関向け販売のみを行い、通信販売・ネット販売業者から医療機関へ流通しなくなる。

 販売政策後の小売段階の流通経路を念頭に、小売段階でなされた3つの販売政策の影響を以下、検討する。

2、特約店の専売化について

 当該政策により、甲製品の流通経路は複雑で、医療機関は一般に価格交渉力が強く、甲製品についても購入価格を販売業者と個別に交渉している現状を変革し、特約店のX社製甲製品の価格交渉力を高めることができ、価格維持がしやすくなる


3、医療機関向けの伝達サービスの義務づけの影響について

 甲製品が医療機関へ販売が行われるのは、特約店とY協会の協力店ということとなる。特約店や協力店では、医療機関向けの伝達サービスが義務づけられるから(特約店契約3項、協力店契約3項)、通信販売・ネット販売で、甲製品を医療機関へ提供されないこととなる。
 
 医療機関が通信販売・ネット販売を通じてX社製甲製品を購入しようとするのは、現在購入している価格よりも安く買えるからに他ならない。

 従って、当該政策により、同製品の価格が維持されるおそれがある。


4、販売業者に報告義務が課せられることの影響について
 特約店および協力店には、販売先医療機関、販売価格、販売数量などを毎月X社に報告させ、代理店には、販売先協力店、販売価格、販売数量などを毎月報告させている。

 報告によって、X社は、廉売している業者を把握することが可能なしくみができ、小売価格維持の実行確保手段として用いることも可能になり、医療機関への販売価格の維持に影響を及ぼすことが考えられる。



第3,設問3

1、再販売価格の拘束(2条9項4号)について

 本事案では、X社の代理店に対する行為が、再販売価格の拘束(2条9項4号)に当たるかどうかが問題である。

 再販売価格の拘束とは、1)価格維持を合意することや、2)人為的手段を用いて価格を維持することをいう。事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定することは、事業者間の事業活動において最も基本的なことであり、かつ、これによって事業者間の競争と消費者の選択が確保される。事業者が再販売価格を拘束することは、流通業者間の価格競争を減少・消滅させることとなるから、競争回避によって自由競争を減殺するものとして、原則違法である。

 本件では、X社が、代理店と協議し卸売価格を決定すると代理店契約1項で約束事項として契約(代理店契約1項)がなされ、実際は、X社が、卸売価格を代理店に通知することになっていた。販売価格は、X社と代理店の協議で決定とあるが、販売価格をX社に報告する義務が課せられており、人為的手段を用いて価格の維持を図っており、再販売価格の拘束である。

 従って、再販売価格の拘束(2条9項4号イ)に該当し、19条に違反する。



2、排他条件付取引(一般指定11項)について

 本事案では、X社の特約店に対する専売店化の行為が、排他条件付取引(一般指定11項)に当たるかどうかが問題である。

 事業者が相手方との取引に伴い条件を付けることは事業者の自由であるから、原則違法とはならないが、もっとも、排他条件付取引として、1)有力な事業者が、2)競争品の取扱制限を行い、3)競争者が代替的な流通経路を容易に見つけられない場合には、競争者排除により、自由競争の減殺が認められ、公正競争阻害性が認められ、違法である。

 本件では、1)シェア4割のメーカーであるX社が、2)一定規模の取引がある販売業者に対し、他社の甲製品の取扱をせず、X社とのみ取引をする特約店となる合意を特約店契約1項でし、3)甲製品を製造する他社が、甲製品を売る代替的な流通経路を容易に見つけられないおそれを生じさせることとなっている。従って、競争者排除による自由競争減殺が認められるから、X社の行為は、排他条件付取引である。

 よって、排他条件付取引(一般指定11項)に該当し、19条に違反する。



3、拘束条件付取引(一般指定12項)について

 本事案では、X社の特約店と協力店に対する行為が、拘束条件付取引(一般指定12項)に当たるかどうかが問題である。

 事業者が相手方との間でいかなる条件を付して取引を行うかは、当該事業者が自由に決定できるものである。もっとも、拘束条件付取引として、1)有力な事業者が、2)横流しの販売を制限するなど拘束条件を付し、3)当該商品の価格が維持されるおそれがある場合には、流通業者間の価格競争を減殺するものとして、公正競争阻害性が認められる。

 本件では、1)シェア4割のメーカーであるX社が、2)契約により、特約店は、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わないとする合意(特約店契約2項)をし、また、協力店も同様に、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わないとする合意(協力店契約2項)をしている。3)第1、4で述べたように、流通業者間の価格競争を減殺するおそれがあって、拘束条件付取引として、公正競争を阻害性している。

 従って、拘束条件付取引(一般指定12項)に該当し、19条に違反する。


4、単独の取引拒絶について

 本事案では、X社の特約店に対する行為と、協力店に対する行為が、単独の取引拒絶(一般指定2項)に当たるか問題である。

 単独の取引拒絶とは、取引を拒絶することである。基本的には、事情者の取引先選択の自由があり、原則として違法ではないが、取引拒絶を独占禁止法上違法な行為の実行確保手段としてなされる場合は、違法となる。

 本件では、他メーカーから特約店に、甲製品以外の購入を拒絶させており、2で述べたように、違法な行為(排他条件付取引)の実行を確保する手段でなされており違法である。

 また、本件では、特約店と協力店が、仲間卸に、甲製品の供給を拒絶させており、3で述べたように、違法な行為(拘束条件付取引)の実行を確保する手段でなされており違法である。

 従って、単独の取引拒絶(一般指定2項)に該当し、19条に違反する。


5、優越的地位の濫用について

 X社が、特約店、協力店に対し、販売先医療機関、販売価格、販売数量等を毎月報告させるとこと、代理店に、販売先協力店、販売価格、販売数量等を毎月報告させることが、役務の提供(2条9項5号ロ)に当たらないか問題となる。

 この報告は、品質保証期限の遵守及び法令上の記帳義務の履行を確保するためとの名目であるが、法令上の記帳義務は、各特約店、協力店、代理店にあるのであって、報告する義務まではない。

 従って、販売価格の報告は、優越的地位の濫用に該当し(2条9項5号ロ)、19条に違反する。


6、排除型私的独占について

 「排除」とは、他の事業者の事業活動を継続困難にし、または新規参入を困難にすることをいう。
本件では、甲製品の40%の地位にあるX社が、甲製品の再販売価格の拘束(上述2)を行い、X社製甲製品のブランド内の競争制限をする一方で、甲製品の他の製造メーカーとの取引を排他条件付取引(上述3)で排除させ、一定の取引分野である甲製品の市場において、甲製品のブランド間の競争を実質的に制限している。

 X社の行為に、公共性はない。

 従って、X社の行為は、排除型私的独占(2条5項前段)に該当し、3条前段に違反する。
 

 以上


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弁護士の民事責任6:依頼者の裁判を受ける権利を確保する義務がある(職務基本規定22条)

2014-10-29 23:00:00 | 倫理(医療倫理、弁護士倫理、企業倫理…)

 弁護士は、依頼者の裁判を受ける権利を確保して、依頼者の権利を時効で消滅させたり上訴審での判断の機会を喪失させたりしない義務がある(弁護士職務基本規定22条)

 

<参考裁判例>

○刑事裁判

 東京地判昭和38年11月28日

 

○民事裁判

 東京地判昭和46年6月29日 

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車のナンバーは、プライバシーか。「世田谷ナンバー」損賠訴訟提訴。

2014-10-29 10:52:39 | 行政法学
 問題提起型の訴訟が提訴されたようです。金銭が目的でないから、賠償額は各自1円。

 車のナンバーが、プライバシーにあたるか。

 区内の自動車が品川ナンバーから、世田谷ナンバーを義務付けられることの不利益はなにか。

 区長は、損害賠償責任を負うのか。


 車のナンバーは、選択できるのではなかったかな。義務なのかな。要確認。


*******朝日新聞********************
http://www.asahi.com/articles/ASGBX4WW6GBXUTIL02H.html

「世田谷ナンバーは不利益」 住民が区長ら提訴

2014年10月29日05時46分


 11月に導入される自動車の世田谷ナンバーについて反対する区民132人が28日、「プライバシーが侵害される」などとして、保坂展人区長と区に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。「金銭が目的ではない」として、賠償額は原告1人につき1円。

 代表して記者会見した田中優子区議は「ブランド力のある品川ナンバーを使えなくなる不利益や、住居地を特定されることでプライバシーや平穏な生活が侵害される」と主張。さらに区が導入を申請する際に実施したアンケートは「設問や配布先が偏っている」と批判した。

 世田谷ナンバーは国土交通省が募集した「ご当地ナンバー」で、11月17日から導入することが決まっている。同日以降に新規登録される区内の自動車は世田谷ナンバーが義務づけられる。保坂区長は「訴状が届いていないため、内容を確認でき次第コメントしたい」としている。




*******朝日新聞********************
http://www.asahi.com/articles/ASG5J5VLFG5JUTIL036.html


新たなご当地ナンバー11月に 世田谷・平泉・奄美など

2014年5月17日16時38分

 地域ゆかりの地名を記した自動車の「ご当地ナンバー」について、国土交通省は16日、平泉(岩手県)や世田谷(東京都)、春日井(愛知県)、奄美(鹿児島県)など新たに全国10地域で、11月17日から導入すると発表した。対象市区町村の住民が、同日以降に車を買うか、運輸支局などで手続きすると付けられる

 同省によると、ほかは盛岡(岩手県)、郡山(福島県)、前橋(群馬県)、川口(埼玉県)、越谷(同)、杉並(東京都)。ご当地ナンバーは2006年に始まり、すでに会津(福島県)、富士山(山梨、静岡県)、豊田(愛知県)、倉敷(岡山県)、下関(山口県)など19種類ある。各地の要望を受け、同省が対象地域の自動車台数などに基づき、決めている。

 今回の10地域を加え、全国のナンバーに書かれた地名の総数は116となる。
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