京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

夢を誘う、お菓子

2008年08月25日 | 日々の暮らしの中で
こんな涼しい水辺で新しい命が生まれていた...、昨日池のほとりで見つけたものです。
この「抜け殻」を題材にした詩があったなあと思って探していました。

            
       「空蝉」(金井直 『Ego』より)
   なにげなく
   木の葉をかえして
   蝉のぬけがらをみつけるように
   人は
   心のうらがわに見出すだろう
   激しく飛び去っていったもののかたみを
   うつろな内部がのぞける
   ひとつのするどい裂け目を

作者の心の痛みを自身に照らし合わすことはお任せするとしましょう。

また、空蝉と言えばやはり『源氏物語』でしょうか。「空蝉」の巻。

源氏の君は、空蝉が脱ぎすべらせて残していった薄衣を手に退出する。そして、
私は、あなたの抜け殻のようなこの衣を手放さずいつも眺め、残り香を懐かしみ、あなたの人柄を慕わしく思っています、と歌を詠んでいる。

空蝉という女性にふさわしいお菓子として、“夢を誘う”連想の見立ての一例としてということですが、
鶴屋吉信の上生菓子、「夏衣」が挙げられています。(『源氏物語の京都案内』 文芸春秋編)私たちが手にできる代表として。


薄い衣が透けて中が見える、美しさと涼しさをそなえたお菓子。
闇の中を逃げる空蝉の姿を重ねて。(道明寺・粒あん)

思わぬ所に話が飛んでしまいました。

長い地中生活から這い出し、この世のひと夏の命を謳歌して消えてゆくものたち。
すべてが廻っている。

午後からの雨で、肌寒いほどです。
コメント (4)
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