さて、杖立温泉での宿泊は「米屋別荘」。
バスを降りて道をさらに進むと、集落の尽きるちょっと手前に看板が見えた。
が道路に面しては入り口らしきものはなく、本当にここでいいのかとおそるおそる黒壁の建物の脇の道を入って行くと田ノ神が見えて
横を見るとやっと赤いのれんの入り口があった。
入った所には囲炉裏があるが、出て来たご主人がすぐに脇の談話室に案内してくれて
記帳をしながらやさしい味の花豆でお茶を一服。
部屋への案内はかわいらしい若女将。
この宿は本館に3部屋、離れに3部屋だけの小さな宿で、本日は離れの「日溜り」と言う部屋。
入ると吹き抜けの大きな窓の側にソファがあって外の緑がまぶしく、奥にはかわいらしいちゃぶ台の和室。
階段を上がった先の和室には布団がすでに敷かれ、トイレは上下に1つづつある。
洗面所はダブルシンクでその先が露天のお風呂。
用意された小物類もいちいちセンスが良くて、部屋に入ったとたんにテンションが上がった。
部屋に風呂はあるがまずは大きなお風呂へ。
この宿には家族風呂が5つあり、その先にあるのが女風呂。
それほど大きくない脱衣場の扉を開けると屋根の下に洗い場と内湯、その先の露天には打たせ湯が落ちている。
洗い場にカランやシャワーはなく、上がり湯を汲んで使う方式。
手前の浴槽のお湯は40℃ほどに調整されているが、杖立温泉の源泉温度は100℃近い熱湯なので打たせ湯の奥に行くと45℃近い。ナトリウム-塩化物泉のお湯はほぼ無色無味無臭、だが食塩泉なので入浴後はずっと汗がひかない。若女将に言わせると「夏には向かない温泉です」。
そしてこのお風呂で面白いのは打たせ湯の隣にある小さな小屋。
これは床下に熱湯の源泉を流している蒸し風呂で、中に人工芝を敷いてある上にさらにマットを敷いて横になるとミストサウナのように汗が出る。ただでさえ食塩泉で汗が出るので、この後どれだけ水を飲んだことか。
家族風呂の方はフロントに鍵があれば入れる方式で、まずは夜に1番に入ってみた。
この中も2つ浴槽があって、奥は一番深い所が130㎝ほどある立ち湯になっている。
さらに翌朝に3番のお風呂に行ってみると
こちらは奥に打たせ湯。これが実に具合が良くて、ここが一番良かったかもしれない。
ついでにこの日は我々の他はもう一組しか宿泊客がいないようだったので、夜遅くに殿方のお風呂も覗かせていただいた。
こちらは脱衣場のすぐ脇に浅い浴槽が一つあって、これを通らないと奥の露天には行けない造り。
浅い浴槽の手前にはみょうと風呂と言う小さな石風呂も並んでいる。
こちら女風呂よりかなり広く、以前は混浴だったようだが、今では男性専用になった様子。
食事は本館に個室があって、時間になると若女将がわざわざ部屋まで迎えに来て案内してくれた。
照明や装飾もおしゃれな掘りごたつ式の食事処。
前菜の最中の中はニジマスのムース、5月らしく柏の葉で巻かれたのは鰻ずし。扇形のお皿の右端には大きな食用ほうずきがあって、これがフルーツトマトのように甘くておいしかった。
お椀に続くお造りは熊本らしく馬刺し。薬味がたっぷり載って薄造りが溶けるよう。
これも溶けるほど柔らかい豚肉の乗った飯蒸しの後にはカボスのシャーベットがお口直しに出されて
次の鶏の焼き揚げが絶品。皮がパリパリで中はジューシー、これはもっと何本も食べたいほどおいしかった。
阿蘇赤牛のローストビーフの上に乗っているのは日本では珍しいワイルドアスパラガス。近くの農家さんが栽培しているのだとか。味はニンニクの芽に近い。
山菜のひろうすに続いてご飯が来ると、なんとカレーが付いてきた。これがスパイシーでうまーい。
お腹いっぱいなのに御飯もミルクプリンのデザートもすべて完食してしまった。
食後はすぐ近くにあるライブラリーへ。
バーカウンターにはソムリエ証書も見えて、ここでお酒を出すこともあるよう。
その裏にはコーヒーメーカーとカップがたくさん並んでいるので、好きなカップで食後のコーヒー。
これを飲みながら書棚にあったミシュランの熊本・大分編をめくっていると、なんとこの宿には星が2つ付いている。しかしあの食事なら、とミシュランの評価を見直してしまった。
朝食はオーソドックスな内容ながら、鯖の塩焼きの焼き加減がまた絶妙で感動。
元々この宿を選んだのはこちらが「九州八十八湯」に選ばれていたからなのだが、部屋のセンスの良さ、お湯の豊富さとお風呂の造りの面白さ、食事の良さのすべてに大満足。
チェックアウトもバスの時間が遅いからと11時過ぎまで部屋を使わせてもらえて、感じの良いご主人ご夫婦のサービスにも感心した。
のんびりした温泉街も楽しかったし、1泊目を杖立にして大正解。
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