文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:・ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月

2016-04-05 13:13:24 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月 (角川ホラー文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店

・櫛木理宇


 黒沼麟太郎部長が率いる雪越大学オカルト研究部の面々が怪奇な事件に挑むシリーズの第9弾。もっとも主人公は、麟太郎ではなく、部員の八神森司といういわゆる「見える人」。彼と高校の後輩で今は同級生の美少女灘こよみ、そして部長の従弟の黒沼泉水が現在のオカ研の正式メンバーである。前巻までは、もう一人長身のスレンダー美女・三田村藍が副部長として在籍していたのだが卒業してしまった。ただし近くに住んでいるので、いっしょに活動することも多い。

 この巻もいつものように連作短篇集になっており、収録されているのは次の4話。

・意気地なしの死神
 女性と一緒にホテルに入り自殺したはずの男が消え失せた。その男日下部剛史は去年自殺していた。

・金の帯 銀の帯
 深沢小夜が物置で見つけた母の形見と思われる市松人形。確かに、母と一緒に燃やされたはずだったのに。

・月のもとにて
 出る家に好んで住みたがる、鈴木瑠衣という雪越大の新入生。いったいなぜ。

・籠の中の鳥は
 北詰英太の夢の中に出てくる謎の女。彼の叔父が冤罪を着せられたという事件の被害者なのか。

 オカ研のメンバーは、別に除霊ができるわけではない。そのうえ、「見える人」は森司と泉水の二人だけだ。彼らにできるのは事件の背景を解き明かして、原因を突き止め、霊を納得させるだけ。だから、事件の背景を解き明かすという、かなりミステリー的な要素も入っている。

 そしてもうひとつ、この物語は、森司とこよみのラブコメという側面も大きい。端からみれば両思いなのは明らかなのだが、2人とも頑なに片思いだと思い込んでいるため、なかなか進展が見られない。このもどかしさに、読者のほうはやきもきしてしまうだろうが、それがとても微笑ましいのだ。しかし今回は、お話しの最後で、ついに森司がこよみをデートに誘った。果して二人の関係は、次巻ではどれだけ進むのか。これが結構読者には気掛かりなのである。

 森司は、こよみの母親にはだいぶ気に入られているようだが、父親はちょっと微妙な感じだ。でも可愛い娘を持つ父親の気持ちはこんなものだろう。

 ところで、この巻から登場した瑠衣は、オカ研の新入部員になって、レギュラーポジションを獲得した。これで部には「見える人」が3人になったので、今後どのように物語が展開していくのか期待が膨らむ。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
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