文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない

2016-04-21 07:48:56 | 書評:小説(その他)
僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない (ガガガ文庫)
クリエーター情報なし
小学館

・豊田巧 (著), 松山せいじ (イラスト)

 主人公は、栗原駿という高2の男子。旅をしてその地方の美味いものを食べ歩くのが趣味で、鉄道にはさほど興味がない。これはそんな少年が、鉄分100%の美少女鉄子と出会うボーイミーツガールの青春鉄道小説だ。

 出会いは(旧)軽井沢駅舎記念館。アプト式のラックレールをこれはなんだろうと眺めていた駿に、美少女がいきなり話しかけてきて解説を始める。それがガチガチの筋金入りの鉄子、北見美憂だった。そして駿の美憂に振り回される旅が始まる。

 このとき美憂の連れだったスリムで大人びた美人が宮田くれあ。一見そうは見えないのだが、こちらも鉄分100%の鉄子。特技は時刻表の該当ページを一発で開くこと。食事は、普通のものが食べられず、山のようなサプリメントをポリポリ齧る。普段はほとんどしゃべらないのだが、たまに話すととても説得力があるという、やっぱりちょっとヘンな人。

 マイペースで、鉄道の蘊蓄を披露し始めたら止まらない美憂だが、自分が得意でない分野はオタク扱い。そんな彼女に、すっかり旅行の予定を狂わされた俊は、心の中で突っ込みを入れたり、「うがぁ~」と叫びたくなるような目にあったりの連続だったのだが、次第に美憂のことが気になってきたようだ。

 鉄道に関するトリビア的知識がそこかしこで披露され、読んでいるうちにどんどん鉄分が補給されてくる。そればかりではない。三人が、碓氷第三橋梁(通称めがね橋)で知り合った爆乳美術部娘の白糠由佳の話。彼女が思いを寄せる先輩に、思いを伝えさせようとする後半はまさにトラベルミステリーの観があり、色々な意味で、徹底的に鉄道を楽しむことができる作品だろう。

 イラストは、「鉄娘な三姉妹」や「ゆりてつ」を描いた松山せいじ。可愛い美優とくれあの二人が、あなたに鉄分を注入しまくる、とっても楽しい作品である。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。


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