![]() | 「一見さんお断り」の勝ち残り経営 ~京都花街お茶屋を350年繁栄させてきた手法に学ぶ~ |
クリエーター情報なし | |
ぱる出版 |
・高橋秀彰
京都のいやなところを挙げろと言われれば、おそらくワーストスリーには入るだろうと思われる「一見さんお断り」という商法。「一見さんお断り」というのは、なじみの客かその人の紹介がない人は入店を断るという、今でも京都のお茶屋などで行われている風習だ。
私も、大学、大学院修士と6年間京都で過ごしたのだが、貧乏学生だったので、そんな場所とは無縁だった。しかし、実際にそんな目に遭ったら、たぶん怒り狂って二度とそんなところには足を運ばなかっただろう。
ところが、著者は、この「一見さんお断り」のシステムこそ理想であるかのように褒めちぎっている。「一見さんお断り」とは、一種の受注生産で、その顧客に最適のサービスを提供し、貸し倒れリスクを減らし、価格競争を回避するというのだ。しかし本当にそうだろうか。
貸し倒れリスクを減らすのなら、「いつもニコニコ現金払い」にすれば済むことだし、何でもこのシステムから外れそうなものは「無粋」で片づけてしまうような論調も気になる。そもそも「無粋」か「粋」かなど、個々の人間が判断すればいい話であり、店に決めてもらう必要はない。
著者は価格設定はリーズナブルであるというが、実際の数字が示されていないので、本当にそうかは判断できない。実際の数字を示すことは、著者の感覚では「無粋」というのだろうか。
良くも悪くも、このシステムは京都ならではといったところだろう。京のお茶屋のシステムという、自分の知らない世界(自分とはおそらく縁のない世界)を覗けたことは興味深かったが、このシステムが汎用的かと問われれば、おそらく他の土地で同じようにやっても、よほど名の売れたようなところでないと通用しないことが多いように思う。
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※初出は「風竜胆の書評」です。