ぼくが死んだ日 (創元推理文庫) | |
クリエーター情報なし | |
東京創元社 |
・キャンデス・フレミング、(訳)三辺 律子
16歳のマイクは、真夜中に自宅に向かって車を走らせていた。何しろ12時までに帰らないと、ママゴンのこわーいお仕置きが待っているのだ。その途中ずぶぬれで歩いていたキャロルアンという少女を拾い、家に送り届けることになったのだが、彼女は56年前に湖でおぼれ死んでいるというのだ。
マイクは、キャロルアンが置いていったサドルシューズを、彼女が眠っている若者専用の墓地に持っていくが、そこで少年少女の幽霊たちから彼ら、彼女らの死に関する奇妙な話を聞くことになる。
その死に方はどれも普通のものではなかった。女教師から呪文により、彼女の死を移し替えられたり、廃墟となった病院でガーゴイルの石像に襲われたり、コミック誌の広告に載っていた即席ペットに殺されたりと、そんな不思議な話ばかりが続くのである。
幽霊たちは、毎年キャロルアンが連れてきた人間に順番に自分たちの死の物語を語ってきたという。別にその人間に祟ろうという訳ではない。幽霊たちはただ自分たちの話を誰かに聞いて欲しかったのだ。
いったい幽霊たちは、自分たちの死を語ることにより、何を訴えかけたかったのだろうか。彼ら、彼女たちの死の原因は、どれも想像もつかないようなものばかりだ。
<おれたちはみんな、ある意味でモンスターに出くわしたんだ。邪悪でおそろしくて説明のつかない怪物に>(p276 幽霊の一人スコットの言葉)
そんな不思議な話は、生きている人間の口から聞かされても誰も信じないだろう。それが幽霊というあちら側の存在から聞かされるとなると、話の信ぴょう性が上がるのではないだろうか。幽霊たちは、世の中にはこんな危険もあると、誰かに警告しなくてはいられなかったのだろう。また、自分たちの死を語ることにより、忘れられていく自分たちのことを誰かの記憶に留めたいということもあるのかもしれない。
実はマイクは、幽霊たちに祟られるどころか、逆に命を救われていたのだ。幽霊たちと別れるとき、マイクの心には何らかの余韻が残ったようだ。
☆☆☆☆
※初出は「本が好き!」です。