虚構推理(8) (講談社コミックス月刊マガジン) | |
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虚構推理(9) (講談社コミックス月刊マガジン) | |
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・(絵)片瀬茶柴、(原作)城平京
妖怪たちから、「ひとつ目いっぽん足のおひいさま」と呼ばれて慕われている岩永琴子という少女と、妖怪くだんと人魚を食べたために、不死身で未来を見ることができる桜川九郎のコンビが活躍するシリーズの新刊を含めた、2冊まとめてのレビュー。
琴子が、妖怪たちから「ひとつ目いっぽん足のおひいさま」と呼ばれているのは、子供のころ、妖怪たちの知恵の神になる際に、右目と左足を無くしたからである。だから彼女の右目と左足は、それぞれ義眼と義足である。だから物語のヒロインとしては異色の存在だろう。しかしとっても可憐で可愛らしい。
8巻は、ほとんど「電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを」という話だが、おまけのようにショートストーリーの「ダミアン君を知っているか」が収録されている。前者は、孫を大学生たちの無謀運転で殺された老人のつくった人形による怪異の話。後者は、豆腐小僧の話である。
9巻は「岩永琴子は高校生だった」と「ギロチン三四郎」の2作品。そしておまけで「湯煙よりの使者」。最初の作品では、琴子の高校時代のエピソードが描かれている。内容は、琴子がミステリー研に入ったいきさつ。「ギロチン三四郎」は、日本製のギロチンの付喪神から依頼されたこと。おまけ漫画は、ふたりが温泉旅館に来た時のエピソード。
琴子はとっても可愛らしいのだが、品という言葉をどこかに落としてきたようなところもある。
何しろ、
<そりゃあ先輩のおかげで未通女(おとめ)ではありませんが>(8巻p102)
<その頃には甲次郎氏はたたなかったそうです>(9巻p196)
そして、九郎は、ちょっと、琴子ちゃんの扱いがひどい。九郎のことを恋人という琴子に対して
<恋人とは人聞きが悪いな>(8巻p102)
またこんな場面もある。今年こそ誕生日を忘れてないでしょうねという琴子に、
<忘れるわけがないだろう。そもそも覚えてないのに>(8巻p170)
そのほかにも、寝ている琴子の鼻にフライドポテトを突っ込んだりしているのだ。(9巻p106)
とても「鋼人七瀬編」のエピローグで琴子ちゃんに「お前は花より綺麗」だと歯の浮きそうなことを言った人間と同一人物とは思えない(笑)。
この二人の漫才のようなかけあいがこの作品の魅力の一つだろう。作画を担当している片瀬茶柴さんは、本作にてデビューしたとのことだ。しかしこれがデビュー作とは思えないくらい絵が気に入っている。継続して買いたいと思う漫画はそう多くはないが、このシリーズはそのうちの一つだ。
なお、4月に、特典付きで次巻が発売されるらしい。特典は、琴子の、Yes-No(実質はYes-Yes一択)枕だ(笑)。
☆☆☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。