文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:罪の終わり

2019-01-09 21:28:27 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
罪の終わり (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

・東山彰良

 舞台は22世紀後半のアメリカ。ナイチンゲールという小惑星の破片が地上に降り注ぎ、世界は、変わり果てた。キャンディ線という線が引かれ、人々の保護はその内側のみで行われ、外側に生きる人々は極端に食料が不足していたのだ。人の肉を食べざるを得ないほど。

 これは、そんな世界で神のごとくあがめられるようになったナサニエル・ヘイレンの物語。著者の別作品に「ブラック・ライダー」という作品があるが、これはその続編にして前日譚ともいえるもののようだ。「ブラック・ライダー」(黒騎士)というのは伝説となったナサニエルのことである。

 彼は母親がレイプされたことによって生まれた。双子の兄を殺し、母親を殺した罪でシンシン刑務所に入れられる。しかしナイチンゲールの破片が地上に降り注いだ時(作中ではこれを六・一六と表している)に脱獄し、キャンディ線の外の世界をさまよう。

 この世界の人間は、VBというネットに繋がる義眼を埋め込む手術をしている人間が多い。VBとはヴァイア・ブレインウェーブの略のようである。ナイチンゲール星の接近に伴い、VBを入れたものは失明の危険があるということで手術は禁止されたのだが、主人公のナサニエルは、違法にVB手術を受けたという設定である。

 物語は、淡々と語られまるでナサニエルの苦難を描いた神話のようだ。彼を付け狙うのは、白聖書派の白騎士と呼ばれる殺し屋たち。しかし政府関係者なら分からないこともないが、なぜ宗教関係者が殺し屋を派遣しているのかよく分からない。これは、自分たちの思想と合わないものを排除する宗教というものの危険性を描いているのだろうか。 

☆☆☆

コメント
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